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34話 フィリップvsニコラ

 相手はニコラだ。あいつは喋らないと言ったら喋らないだろう。宿場で馬から馬車に乗り換えて、今向かい合って座っている。


 フィリップは腕を組み、目を閉じて座っていた。


 ここまでしつこく探りを入れていたが、一向にニコラは口を割らない。自分もせっかくの道中、楽しく過ごしたい。諦めて他の話を振ろうと頭の中で話題を探した。



 んー、そうだな今ホット話題と言えばアレかな、学園を共学に戻すよう働きかけようっていう。


 試験前の昼にシリルが来た時に皆んなが言ってたっけ。


 男女共学が復活したら、早い者勝ちでいい女の子がいなくなるから急いで探して声をかけないとなって。

 そしたらルネがニコラが相手を決めずに残っている内は、俺らがいくら口説いても誰もウンって頷いてはくれないぜって言い出して。


 だから言ったんだ。あいつは自分で全然モテないって思ってるから先陣を切らすのは無理だぞってね。ニコラは自分が厳つくて恐い顔してるから、女性や子供が怖がって下手したら泣き出すから近寄れないって思ってるんだって。


 みんな有り得ない、嘘だろーって信じなかったけど。


 だけど、本当なんだ。


 犬に追いかけられてた女の子を助けて抱き上げたら泣かれたとか、呑んだくれに絡まれてた女性を助けたら逆に女性が自分の顔みて気絶したとか言って本気でそう思ってんだから。


 そう言ったらみんな「あー」納得って感じでまだ戻って来てない残念男ニコラの席を見てたよ。



 でもそれニコラが怖かったからじゃないと思うけどね。どうせ、助ける姿がカッコ良すぎたんじゃないの?


 だいたい犬の女の子はニコラに抱きついて泣いてたんだから。


 あと、女は鼻血吹きながら倒れたって聞いたぞ。


 だって、どっからどうみてもニコラはイケメンだろ!?僕とは対極の、男も憧れるちょい強面系イケメンだよあれは。だいたい可愛いリリィと血が繋がってるのに、あ、父親は強面が行き過ぎてるな、血が繋がってるのに・・・。



 まあいい、ニコラが恋人を作れば皆も安心できるってものだ。



 ちょうど一昨日、ニコラはフェルゼンに女性の好みはどうなんだと聞かれて『可憐で清楚、奥ゆかしくて優しくてさらに知的で笑顔が可愛い人で色白で肌はすべすべ、背は普通で腰は折れそうに細いのに胸はあるような人がいい」とかなんとか言ってたしな。


 僕は『知るか、そんなの分かるわけないだろ』とか答えると思っていたんだ。だけど普段のニコラらしくなく、具体的かつ誰かを想定したかのようなことを言ったんだよね・・・。ニコラは女嫌いってわけじゃないからそろそろ恋人を作りたいって気持ちがあるってことじゃないかな。


 しかし、あれが好みのタイプだったらさ、自分はモテないって言ってる割に相手にすごく注文が多すぎるだろ。



 この間の階段で助けた令嬢なんか、かなりニコラの好みのど真ん中っぽい。


 オジェってことは、モルガンの娘か。よし、背中を押してやるか。




 ニコラは馬車に乗り換えてからフィリップが目を閉じて腕を組み、何も言わないことを気にしていた。背は背もたれから離れ、真っ直ぐ伸ばしているから眠たいわけでも、寝ていないことも分かっている・・・。


 うーん、殿下に話しかけてもいいだろうか?と思っていた矢先、フィリップが目を開けてきりだした。



「なあニコラ、そろそろ学園も共学にもどるだろうからお前もいい人見つけろよ。この間の令嬢なんかどうなんだ。モルガンの娘は?」


「えっ?は?・・・えーっと、いいですね?」


 (えっ!?ちょっと何で?何でいきなり図星キタ!?)

 


「だろ?お前の好みっぽいなと思ったんだよ」


 (殿下、何か知って?まさか!でも勘が良過ぎない?)



「えー、はい。今話そうと思っていたんですが、殿下、私はそのソフィー・オジェと恋人になりました」


「は?


 何?


 いつから?


 どうやって!?


 あの時は知り合いって感じ無かっただろ」


「あー、あの後ですね」


「ホントかよ?

 お前、めちゃめちゃ手が早いな」



「っ・・・」



「あー!なぜ目を逸らした?その顔!お前、なにかあったな!怪しい!何したんだ?おい、隠すな」




 (ああ、領地が遠い)




「えっと、デート?」


「どんな?」


「お茶して観劇を」


「へー、今何やってたっけ?」


「!」


「ん?なんだ、観劇しに行ったんだろ?」


「劇場には行ったけど、観てないって言うか」


「どうして?」


「うっ」

(殿下まるで全て知ってるかのような質問を繰り出してくる!見てたのか?まさか読心術?実は王家の方々はそんなことまでマスターしているのか)


「ニコラ、どうした?」



 そんなこんなであの手この手の追及にあい、出発前日の話と朝の話を小出しに、小出しに・・・。



(俺が殿下に逆らえるわけないだろ、ソフィー、すまない)


 とうとう完全陥落しましたとさ。




 いやね、フィリップも鬼畜じゃありませんから、そこまで深掘りするつもりは無かったんですよ。最初はともかくね。

 ごく普通に告白ってどうしたら効果的なのかなとかデートってどんな事するのかなって成功例として今後の参考にしようと思っただけで。

 ニコラが追求を受けてると感じて簡単に誘導され、勝手に追い詰められて白状してしまったような気がしないでもない。



 フィリップは王太子、そもそも逆らうことなど出来ないのだし、ニコラは5歳からずっと誰よりも側にいて常に心を砕き彼を守ってきたのですから。自分の命より尊い存在に、はなから自分の意思を通すなんてこと無理だったのです。



 そう、最初からニコラに勝ち目はない。唯一の弱点はフィリップ王太子殿下なのだから。

フィリップ最強説


_φ( ̄▽ ̄ )




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