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33話 出発の前日の話

 ちょっと待って、

 ニコラが秘密だと言って何も吐かないんだけど?


 昨日、リリィへのお土産を選ぶのに付き合ってもらおうと思って連絡したのに、ニコラが全然捕まらなかったんだよ。僕は執務をしながら待ちぼうけだ。


 だから、昨日は何してたんだって聞いたらあいつ、言えませんって自分の口を手の甲で隠しやがるんだぜ?今までなんだって話してきた仲じゃないか、怪しすぎる!

 まだ時間はたーっぷりとある。じっくりと攻めてやる。




 今のところ再試験の科目はないし、かなり勉強したので結果に自信がある!なのでまだ今週分の試験の結果は出ていないが出発してしまって大丈夫だと踏んでいる。


 今は我がベルニエの領地に殿下と護衛その他の連中と向かい始めたところだ。試験前に旅程を組んで、殿下の希望を聞いて修正をした。

 普段帰る時と違って1区間ごとに用意してある馬と馬車を交互に乗り替えてという豪華で贅沢な方法で、王太子の移動としてはかなりハイペースで現地入りする予定だ。


 殿下曰く、早くリリィに逢いたいし少しでも長く居たいんだと。はいはい。



 実際のところ、アングラード領なんかは絶対に馬に乗って超えた方がラクだし王都内も馬の方が小回りがきいて良い。

 でも馬だけの工程だと疲れるから間で馬車も使えるって助かる。しかも荷物はサポート隊が運んでくれるから最低限で身軽だ。王太子様と一緒だと色々と苦労がなくていいね。


 その上、先行隊も大量に行かせて事前に危険がないかチェックもしてもらい諸々段取りをして貰っているので問題なく殿下を安全に連れて行けると思っている。


 しかも殿下はベルニエ領内では愛馬レゼルブランシュを使いたいというから、それは国王陛下が先発隊で行かれるということでそっちの更に先先発隊に俺の愛馬エクレールと共に預けさせて貰った。国王陛下に荷物運びと露払いさせるなんて前代未聞だろ?


 ソフィーに言ったら驚き過ぎて言葉を失っていたよ。


 しかし、国王陛下の旅程チェックを頼まれた時、内緒で行くから両親にバラすなとおっしゃっておられたから黙っておいたけど、どうなっただろう?相当驚いただろうな。その時の話を聞くのが今から楽しみだ。




 さて、さっきから殿下がこちらをジト目で見てるんだけど、困ったな。そんな顔は麗しい殿下に似合わないから止めて下さいよホントに話しませんから。


 だって、昨日のことはちょっと人に言えないよ。彼女は宰相の娘でマルタンの妹だし色々と手順をすっ飛ばしたどころじゃないからな、マズイでしょ。




 俺とソフィーの初デートはお茶をしながら話をした後、観劇だった。


 朝、彼女の家に迎えに行ったら侍女と共に門のところで待っていてくれた。ソフィーが馬車より歩きたいって言うから手を繋ぎ、歩いてセントラル広場に向かったんだ。


 手を繋ぐって言っても彼女が恥ずかしがっているし、緊張でガチガチだから最初は手をそっと触れている程度だ。初々しいだろ?広場に面したカフェに入り話をした。まだお互いのことを何も知らないからな。


 随分前にA棟に来て生徒会室が分からなくて、誰かに尋ねただろう。それは私だったんだよと言うと、ソフィーも覚えていますと言った。


 あの時の君が印象的でずっと忘れられなかったんだ。あの階段の一件がなくても、君を探そうと思っていたところだったと告白したよ。

 ソフィーも恥ずかしそうに私はあの時、ニコラ様に一目惚れをしてしまい、ずっと心を寄せておりましたと言ってくれた。


 彼女の瞳を見ればそれが嘘偽りない本当のことだと分かったよ。


 なんと俺たちは2人とも、あの瞬間にお互いを好きになっていたんだ。随分長くそのままにしていたことは本当に残念だったけれど、今までは殿下の心配があったから仕方がなかったもんな。


 それから将来結婚しようって約束した。

決めるのが早すぎるって?そんな事はないよ。


 だって運命の人と巡り合うってそういうものだろ?運命の2人ってやつは一瞬で恋に落ちてそれが一生続くものだ。


 子供の頃、母上達が恋愛結婚だと言うので聞いたことがある。どうしてあの凶悪な顔をした父上と結婚しようと思ったのかと。

 母上は言った。クレマンに声をかけられた時、この人だって思ったのよ、と。それは直感で、間違ってなかったことは今毎日証明され続けていると。


 頭で考えるものじゃない。俺も感じるんだ、この人だって。

これからだってもっと好きになるし、この先だって俺はソフィーだけでいい。


 婚約については親に許可を得なければならないから今回の帰領の時、直接親に話すつもりだ。まずは親から先方に手紙で打診することになるだろう。そして俺は宰相家には戻って来てから挨拶に行くことにしたんだ。


 観劇の時間が近くなったから、カフェを出て劇場に入ったら今年1000組目のカップルだって頭の上でくす玉割れたね。

 チケットをアップグレードしてくれて、王族用のボックスの次に豪華なボックスシートを利用することになった。


 これが、良かったと言っていいのかどうか。俺にとっては良かったけど。


 お目付役の侍女はそこには入れないということで外の控えの間で待つことに決まっているらしい。


 それってお目付け役の意味ある?


 ステージがよく見えるように薄暗くなった部屋に淡い灯り、カップルシートというよりもっと広くて心地の良いソファ、隣には可憐なソフィー。他所からの視界が遮られたそんな所で観劇なんて出来るわけないだろ。緞帳が上がる前から彼女に口付けをしたらもう、舞台で何をやってるかも喜劇か悲劇かも分からなかったよ。


 だけど、流石に俺はあそこで最後の一線を超えたりしない。

 ソフィーが立てなくなると困るし、その時は彼女にはもっと素敵な思い出にしてあげたいからね。


 あと、ソフィーに自制の効かない脳筋と思われたくなかったっていうのが理性を繋ぎ止めることが出来た1番の理由だ。そこはほんと自分を褒めたい。


 だって、ほんとにね、ヤバイよ。彼女のあの・・・。


 いやね、どれほど強く彼女を求めてたかって、それはもう、普通はやめられない止まらないってところだ。劇場の明かりが点いた時ソフィーが言った。俺の目が赤く染まっていると。これって俺の気持ち、愛と情熱の色じゃないの?なんてまあ、光の加減だと思うけど・・・。俺の強靭な理性を証明できたってものだ。


 そこでもう一度俺はソフィーに・・・。


 いや、あの時の事は今思い出すな。



 とにかく昨日の初デートはお互いに気持ちを確認しあい、実りある、楽しい1日で良かったってことだ。



 ちなみに『貴族は結婚まで清い交際をすること』なんて子供の頃から繰り返し教えられるけど、それを本気で守ってるやつなんているの?いないだろ。


 あれは貴族ならではの建て前中の建て前だよ。



 殿下にもなかなか言いにくい事だが、とりあえずソフィーと恋人になったってことだけは伝えておくか。無言が逆に怖い。

ニコラの手が早すぎる

でも一途なんです

許してやって


_φ( ̄▽ ̄; )




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