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3話 童話の王子様

 フィリップは気になっていたことを本人に聞くことにした。


「リリィはいつまでこっちに居る予定なのかな?領地に帰ってしまったらなかなか会えないね、できれば少なくとも月に一度は妹の顔を見て話しがしたいが」



(私は5ヶ月会っていませんでした。その前は1年です)


 実の兄のニコラはとてもじゃないが月に1度のペースでは会っていないのだが、ここは黙っておく。



「いつか分かりませんが、お母様が花祭を見てから帰りたいと申しておりました」


「花祭は今月後半か、それはいい。妹の為に特別な席を用意しよう。

 もちろんリリィの家族も一緒に招待するよ。それから花祭で着るドレスやアクセサリーにも謂れがあるんだ、リリィには僕が贈るからね」


「いわれ?」


「うん、大抵は王女の身につけていた物に由来するよ。

 赤いリボンを身につけていると恋人が出来るとか、交換した相手と結婚するとかね。他にも赤い花を贈った相手と幸せになれるとか。

 特に女の子はドレスや持ち物にリボンを付けて願いを込めるようだね」


「まあ、素敵だわ!まるで私の好きなお話しみたい。

 あのね、赤いリボンの可愛い女の子が素敵な王子様と出会うのよ。別れ別れになったけど、それを目印に素敵な王子様は女の子を見つけるの!」


 王子様に『 素 敵 な 』が2度付いた。

 どうやらリリィにとって『 王 子 様 』は他の男性より特別な存在っぽい・・・・。



 そう、子供向けに作られた童話はこんなお話だ。



 ◇ 王子様と赤いリボンの女の子 ◇


 ある日、王子様が国境の近くまで視察に行った帰りに道が悪く人通りの少ない場所で豪華な馬車が深い轍にはまってしまい立ち往生していたのに出くわした。


 王子様は己の身分を隠し騎士たちと助けた。

 礼を言う親子に聞くと王都に向かっているというので安全なところまでと同行することにした。


 道中、顔を合わせ挨拶をかわす内に馬車にのっていた明るく美しい女の子に心惹かれるようになるが自分は王子だ。

 身分違いの恋は出来ないと心にそっと蓋をする。


 女の子も心のうちを言わずただお別れの時に自分が身につけていた赤いリボンをこの出会いの思い出に持っていて欲しいと渡す。


 お祭りの日、人混みの中で王子様は忘れられないあの赤いリボンを目にし追いかけたが見失ってしまった。


 気落ちして戻った翌日、王太子になったお祝いに各国の要人が並ぶ中に美しく着飾った隣国の王女の姿があった。髪にはあの赤いリボン。


 実はあの時の女の子は安全の為に本当の名前と身分を名乗れなかった従者と隣国の王女様だったのだ。

 ここで顔を合わせ初めてお互いが王子、王女であることを知り、王子様は彼女の元に行き求婚する。


 2人は結婚し、末長く幸せに暮らしました。

 めでたし、めでたし。


 ◇ 王子様と赤いリボンの女の子 おしまい ◇



「ああ、それは本当にあった事を物語にしたものだと言われているよ。

 お祭りは花祭のことで、絵本にも花がたくさん描かれていただろう?

 その2人は今はこの国の王様と王妃様になっているんだ」



 赤いリボンのエピソードを元に、ものすごく膨らませて脚色を加えているらしいが、一応両親をモデルにした出会いと結婚のお話だ。



「まあ、そうなの?

 なんて素敵なの、本当に女の子は王子様と結婚したなんて」


 リリィにとって『素敵な王子様』はその物語の中にいるものなのか、目の前にいるとは思っていそうにない。もしかしてライバルは父上だったりするのだろうか。



「その物語の王子はこのプリュヴォ国の王子で女の子は隣国リナシスの王女だったんだ。えっと、リリィは王子様が好きなの?」


「え?うーん、王子様はとっても素敵な人だから、それはみんな誰だって憧がれて好きになるでしょう?でもね、王子様って好きでも手の届かない人なのよ。

 赤いリボンの女の子はとっても、とーっても可愛いから特別なの。

 だから、私は2人が幸せでずっと一緒にいるのがいいわ」


 リリィはそう言い切って、自分でウンと頷いて満足げだ。



 ちょっと待って。

 他の令嬢達は小さい頃から我こそはと王子にアピールしてくるものなのに、リリィは自己完結してしまった。


 もうちょっと頑張ろ?

 リリィこそとっても、とーっても可愛いのだから。



「その王子様はもう王様になっているから。2人の子供が今の王子様だよ」


 ちょっと自分の存在をアピールしてみる。



「そうなの?きっと今の王子様もキラキラしてて素敵なんでしょうね。

 この国で1番素敵な方だと思うわ。

 王子様にはお目にかかった事が無いけれど、フィル兄様がキリッとした感じかしらね?」と言ってうふふと笑った。


「僕はキリッとしてなかった?」


 あれ?理想の王子にはほど遠かっただろうか、困ったように問うてみた。


「うーん、キリッとはしてないわね。

 でも、フィル兄様は優しいもの。だから大丈夫よ」


「あはは、そうか。大丈夫なら良かった」

 及第点はもらえたみたいだ。


「ええ、フィル兄様は優しい素敵さ。ニコ兄様は強くて優しいカッコ良さがあるもの」


「ニコラに負けたか」

 と2人はそこにニコラがいた事を思い出して顔を向ける。



「まあ、お兄様。そんなにお腹が空いていたの?」

「お前、お腹を空かせすぎだろう。そっちも食べたかったのに」とほぼ同時に言った。



 現実逃避したニコラはシェフのアレンジ力に感謝しつつテーブルに積まれたプチシューを自分で摘み、自分の口に持っていくという作業に没頭していて全部独りで食べてしまったところだった。



 寮で一緒に食べて帰って来たではないか。お腹など、空いてはいなかった。


 そんな事は殿下には言えないので申し訳ございませんと頭を下げた。

ニコラが不憫になってきた

 _φ( ̄ー ̄ )



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