すきありすぎ! 竜胆課長!
長岡更紗様主催『第二回ワケアリ不惑女の新恋企画』参加作品です。
以前に書いた『すきあり! 竜胆課長!』
https://ncode.syosetu.com/n2398gx/
に、四月咲 香月様から追加でキャラ絵を頂きました!
デートの約束
四月咲 香月は言っている。
まだここで終わる定めではないと……。
こんなのもらっちゃったら、書くしかないでしょう!
という訳で続編です。お楽しみください。
日曜日、竜胆課長がうちに来た。
最初はドライブのお誘いだったけど、ガスの点検がその日しか頼めなかったので、自宅にいないといけない、と血を吐く思いで断った。
それでも諦めたくなくて、自宅での映画鑑賞に誘ったら、何とオッケー!
しかも手作りのおつまみを三つも!
特に鶏ハム、胸肉だって言うのにしっとりしてて美味しかったなぁ。
映画もレンタルショップに行ったらお互いアクション物が好きと分かり、借りる段階から盛り上がり、結局二本借りてお酒を飲みながら両方観た。
そして九時を回ったところで駅まで送って、満足して眠った。
そして今日は月曜だが祝日。
最高の気分で目覚めるはずが。
また身体が動かない。
また竜胆課長の部屋だ。
と言う事は、また課長の家のぬいぐるみ、ねこさくの中に憑依したのか?
あんな不思議な体験、一回だけだと思っていたのに……。
「……おはよ〜、みんな〜……」
どよんとした雰囲気の竜胆課長が、ボサボサの髪とスウェット姿で現れた。
二日酔いかな? そんなに飲んでなかったと思うけど……。
「んも〜! 爽太君ったら〜!」
いきなり僕が、いやねこさくが持ち上げられる!
え、何!? 入ってるの分かってるの!?
「気合い入れて行ったのに手も握ってくれないなんて〜!」
え、どういう事!?
手も握ってくれないなんてって……、握って良かったの!?
「流石にお泊まりまで期待してた訳じゃないけどさ。キス……、もまだ早いかなって思うし、でも手ぐらい……」
あ、いや、違うんですよデート二回目で、しかも自宅で会うってなって、あんまりがっつくと嫌われるかなって思っただけで……。
駄目だ。声が出ない。
「あ! 爽太君、今ねこさくの中にいる!?」
入ってます!
でも返事ができません!
「お〜い。爽太君〜?」
課長は僕の、いやねこさくの頭に数回チョップを入れる。
痛くはないけど頭が柔らかくへこむ感覚がちょっと気持ち悪い。
「入ってるのに黙ってたら怒るよ〜?」
全身全霊で入ってますの気持ちを送る……!
……駄目だ。安心した顔になっちゃった。
「まぁあんな不思議な事そうそう起きないわよね〜」
言いながら僕の、いやねこさくの顔を抱きしめる課長。
それフラグですよ。もう起きてるからフラグも何もないですけど。
「……私、女としての魅力、ないのかな……」
誤解です課長! 我慢してただけです!
この顔に当たるその、感触とか、特に!
「もう四十だから、あんまり余裕ないからな〜」
余裕? 何の事だろう。
課長は僕の、いやねこさくの頭を肘の内側に乗せる。
「……欲しいな、爽太君の赤ちゃん……」
えええぇぇぇ!?
それって僕と、恋人と、結婚と、その先まで!?
「よーし、そうと決まれば次の計画立てないと! 料理は反応良かったから、次はうちに呼んでご飯ご馳走しよう!」
課長が、僕のために、手料理……。
エプロンつけてお出迎えとか、してくれるのかな……?
「ふっふっふ、メニューは教えずサプライズで胃袋を鷲掴みよ! メインはやっぱり一番得意な……」
あー! あー! 言わないで!
サプライズを楽しみたい!
「お節介はこれくらいかねぇ」
ん? 優しそうなおばあさんの声?
と思ったら、視界が何かに引っ張られるように遠ざかる!
「柳子の事、お願いね」
紫の竜胆の柄の着物を着た、品の良いおばあさんが現れ、頭を下げる。
その映像を最後に、僕の意識は途切れた……。
「はっ!」
目を覚ますと自宅だった。時間は、昼前!
慌てて携帯を取り出し、課長の電話にかける。
『も、もしもし、鹿住君?』
「おはようございます課長!」
『き、昨日はありがとね。楽しかった』
「ごめんなさい!」
電話口じゃ見えないだろうけど、頭を下げる!
『な、何急に!?』
「あの、課長は十分魅力的です! 僕ががっついちゃいけないかなって遠慮しただけなんです!」
『な、何で知って……! もしかしてさっき!』
「いました! ねこさくの中に!」
『な、何で言わないのよ! 怒るって言ったでしょ!?』
「ごめんなさい! ぬいぐるみなんで、声も出ないし身体も動かないんです!」
『……』
黙っちゃった! 何とかしないと!
「課長! お詫びに僕にできる事なら何でもします!」
『……できる事なら、何でも……?』
「はい!」
『……じゃあ』
何を言われるんだろう……。
『その、課長、って呼ぶの、やめて……』
「え、あ、は、はい!」
あぁ、それくらいなら……。
……何て呼ぼう。
「そ、そうしたら、えっと、竜胆さん、で良いですか……?」
『……柳子』
「えっ?」
『柳子! 下の名前で呼んでって言ってるの!』
え、いきなり下の名前!?
でも、そう呼んでほしいなら……。
「……りゅ、柳子……」
『い、いきなり呼び捨ては、ちょっと、びっくり……』
「あ! すみません! 柳子さ」
『柳子でいい』
「あの、でも……」
『……ううん、柳子がいい……』
その消え入りそうな声に、顔が赤くなるのが分かる!
うわー! めっちゃ抱きしめたい!
『あの、私も爽太って呼んで、いい?』
「は、はい!」
『……爽太』
「……はい」
何だこれ何だこれ何だこれ!
ヘビー級のボクサーのパンチ食らったらこんな感じかな!? 頭がクラクラする!
『……もう一回、呼んで?』
「……柳子」
『……はい……』
何か貞淑な妻って感じの答え! 着物とか似合いそう!
あ、着物と言えば……。
「あの、柳子の親戚とかに、紫の竜胆の着物着てる人っている?」
『え? 紫の竜胆の着物……。去年亡くなった祖母がよく着てたけど……』
きっとその人だ。僕と柳子のキューピッド。
お礼、言わないとな。
「今度の休み、柳子の実家に行こう」
『じ、実家!? そ、それってけ、結婚の……!?』
あ。
……でも丁度良いや。もう気持ちは固まってるから。
「うん、そうだよ。柳子を僕にくださいって言いに行きたい」
『う、うん! わ、分かった! 実家の都合を聞いて、ま、また連絡する!』
「うん、じゃあまた」
電話を切って窓を開ける。青空と白い雲が眩しい。
空の上から、柳子のおばあさんが微笑んでいるような気がした……。
読了ありがとうございます。
感想欄で石河 翠様から頂いた、
「それにしても彼をぬいぐるみに憑依させたのは誰なんだ。
竜胆課長の守護霊かな?」
のコメントで、この怪奇現象は解決を見ました。
そして、ご挨拶のきっかけにもなりました。
やりますねぇお祖母様!
その他にも、課長可愛いコールを沢山頂けましたので、続編の運びと相成りました。
FAと感想って凄い。私は改めてそう思った。
本当に感謝感謝でございます!
皆様の楽しめる作品を書く事で、少しでもご恩返しができれば幸いです。
今後ともよろしくお願いいたします!