私から全てを奪う妹。ついに、第一王子の婚約者の地位も奪われたので家出することにしました。
ジャンル別日間ランキング 異世界「恋愛」で21位(3/12)になりました!!初ランクインです。
これも、読んでくださる皆様のお陰です。ありがとうございます。
私は妹であるアデルが憎い。
アデルは、何でも私が持っているものを欲しがる。
お父様とお母様に報告すると、私の持っている物以上のものを与えられる。
それなのに……
「お姉さまのドレスが欲しい!!」
と私にねだる。それをお父様とお母様に言うと、
「仕方ない。今回はそのドレスをアデルにあげなさい」
と言われる。
今回は……
ふざけないでよ!!何が『今回は』なのよ!
私にとっては『毎回』なのよ!!
毎回、私のものをねだり、両親から私のもの以上の物を与えられるのよ!!それでも毎回私の大切なものを妹にあげないといけないの!?
お気に入りの人形、ドレス、アクセサリー、本、宝石、侍女、部屋、友だち。すべてをアデルに奪われた。
それでも、アデルが私から奪うことのできない者がいる。
それは、この国の第一王子アンドレン様である。私とアンドレン王子の婚約は、私が生まれてすぐに正式な手順を踏んで行われた。さすがのアデルも、侯爵家・王室・教会すべてが容認している婚約者は奪えない……奪えないと思った。
「お姉さま。私、アンドレン王子と結婚したいです」
アデルはアンドレン王子の婚約者の地位も欲しいと言ってきた。
「何でも私のものを欲しがらないで!!」
さすがに、頭にきてアデルを怒鳴りつけた。
「欲しい、欲しい。アンドレン王子が欲しい……」
妹は、屋敷中に響くような大きな声で泣きだした。アデルの声に使用人たちが集まってきて、皆私を非難するような視線を向けてくる。
「アデル、メリッサ……」
「お父様……」
使用人たちをかき分け、険しい表情をしたお父様が私たちの前に来た。
「お父様聞いて。アデルがアンドレン王子を欲しいって言うの。それで叱ったら」「メリッサ、アデルが欲しがっているならあげなさい」「お父様?」
私が現状を訴えていると、耳を疑うような言葉がお父様の口から出てきた。
「お父様、アンドレン王子を……第一王子の婚約者の地位をアデルに渡せって言うの?」
「ああ、そうだ。アデルが欲しいと言ったら、手に入るまでどんな手を使おうと諦めないことは知っているだろう?そのせいで、王室に迷惑がかかり、我が侯爵家に泥を塗るようなことが起こるよりも、メリッサがおとなしくアデルにアンドレン王子の婚約者の地位を渡したほうが、何事も起こらず穏便に済ますことができる」
私はお父様の言葉を聞いて屋敷を飛び出した。
お父様とお母様に言われて何でもアデルにあげてきた。でも、第一王子の婚約者としての矜持までも、何でアデルに奪われないといけないのよ!!
私は必死に走った。少しでも屋敷から、両親から、妹から離れるために。
「ここは……」
必死に、がむしゃらに走ったため、いつの間にか立ち入りが禁止されている『魔物の森』に足を踏み入れてしまった。
目の前のやぶがガサガサと揺れると、こん棒を持ったゴブリンが現れた。
私は武器どころが、戦闘用の下級魔法さえ使えない。第一王子の婚約者として、人々を癒すための魔法しか勉強してこなかったツケが回ってきてしまった。
もう疲れた…
ゴブリンが一歩、また一歩と私に近づいてくる。
私は死ぬ覚悟をした。襲ってくる痛みに叫ばないように奥歯を噛みしめ、目をつぶった。
しかし、一向に痛みは訪れなかった。
「お嬢さん、こんなところで何をしているのですか?」
その代わり、若い男の声が頭の上から降ってきた。
恐る恐る目を置けると、そこには甲冑を着た黒髪の男性が馬にまたがっていた。
「うっう……うわぁ~~~~~ん」
男性の姿に安堵して、大声で泣いてしまった。屋敷で流せなかった分の涙が流れた。
男性はそんな私の姿に慌てふためき、そして、馬から降りて、あやすように私の頭を撫でてくれた。
これが、後世に名を残すことになる隣国の次期国王であり、私の新たな婚約者となる男性との出会いだった
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ごめんなさい、ごめんなさい。メリッサお姉さま。
何でも欲しがってごめんなさい。
何でも奪ってごめんなさい。
大切な物を
大切な人を
大切な場所を
奪い続けてごめんなさい。
だけどね、お姉さまに謝るけど、お姉さまから奪い続けたことは後悔していないの。
だって、こうしないと2年後にはお姉さま死んでしまいます。
私は何回もお姉さまの死を見届けたの。何回も助けようとしたけど助けられなかったの。
お姉さまにわかる?大切なお姉さまが何回も私の目の前で死ぬのよ!!
そこで私は学んだの、お姉さまが第一王子の婚約者になった時点でお姉さまの死が確定されるの。
今回も助けられないと絶望していたら、お姉さま専属の侍女がつぶやいたの
「メリッサって、ゲーム本編と今とでは、全然性格が違う」
とつぶやいたの。
だからすぐに、彼女…セラを私の侍女にしたの。
最初はごまかしていたけど、強く問い詰めると白状して色々話してくれたの
①セラは転生者であること
②私たちが生きているこの世界は、セラの転生前で流行ったゲームの世界であること
③お姉さまが死なない唯一の『ルート』があること。
お姉さまが死なないルート
それは、『メリッサの代わりにアデルがアンドレン王子の婚約者となり、メリッサの代わりにアデルがゲームの悪役になる』ルート。
このルートでは、私が国を揺るがす悪女となり、隣国の国王と王妃となったお姉さまに討たれるルート。
お姉さまが王妃となり幸せになり、私が代わりに死ぬルート。
私はそのルートになるように、セラに協力を仰いだ。最初嫌がっていたセラだけど、セラの世界で俗にいう土下座なるものをして、セラの協力を取り付けた。
それから、私は何でもお姉さまのものを欲しがった。
お姉さまのお気に入りの人形、ドレス、アクセサリー、本、宝石、侍女、部屋、友だち。
あらゆるものを欲しがり奪った。
これも、お姉さまを隣国の王妃にするため。
そしてついにアンドレン王子の婚約者の地位をお姉さまから奪うことに成功し、お姉さまを侯爵家から追い出すことに成功した。
私は安堵のため息をついた。
お姉さま、どうか、どうか私を憎んでください。恨んでください。私がお姉さまに憎まれた分だけ、お姉さまは幸せになれるのです。
今までの分だけ幸せになってください。お姉さま
クソ妹に見せかけて。良い妹です。実は妹の話を書きたかっただけなのはここだけの話です。すまないメリッサ。今度書くときは君が主人公だ