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8話 命の共有




 桔花は背中のボタンを外して背中をはだけさせた。光弥はその身体にあるおびただしい傷の数に微かにおののく。桔花がいかに辛苦の人生を歩んで来たか、まさに背中が語っていた。まだ新しい傷もあって、薬が適切に塗れていないようだった。


(・・・・・・傷のことは後だ。先に呪いを解かなくては)


 桔花の背中の調度脊椎の辺りに竜の鱗が真っ直ぐな形に散りばめられていた。色はまるで青痣あおあざのように紫色だった。


 光弥はナイフで軽く指先を切り、血を滴らせる。


「少し触れるぞ」


 血のついた指で桔花の背に触れると、彼女はビクリと震える。出会って間もない触られるのなんて嫌だろう、しかしこればかりは少し我慢して貰うしかない。


 竜の鱗の痣を光弥の血で覆い、光弥は静かに念じた。すると痣は徐々に薄まっていった。しかし薄まっただけで、痣は残っていた。


(どういうことだ、呪縛が完全に消滅しない!?)


 どれだけ時間が経っても同じで、もうそれ以上変化は見られなかった。


(それだけ古くて深い呪いなのか。しかし桔花の呪いは受け継いだもので、いわば先祖返りのはず。何故ここまで執拗な・・・・・・)


 光弥が考え込んでいると、桔花がポツリと呟いた。


「やっぱり嘘だったんだ」


 ハッとして、光弥は首を横に振る。


「違う、半分は消えた。だがどうしても消しきれない」

「黙れっ!よくも私に希望を植え付け、その上それを踏みにじったな。さっき死を恐れた自分が愚かで反吐が出る。今度こそ、覚悟を決めてやるわ!」


 桔花は首に掛けていたペンダントから小瓶のようなものを取り出し、栓を抜いて口に含んだ。


「待て何をする気だ!」


 まさか毒か何かで自殺するのかと思ったが、そんなのは杞憂だった。むしろ彼女はその液体を口に含んだまま、光弥の両頬を掴んでに口付け、その液体を流し込んできた。


 光弥は咄嗟のことで驚き、その液体を飲み込んでしまう。まるで苦い薬を無理矢理甘くしたような嫌な味がした。そして桔花の目は焚き火の炎で赤く染っていた。


 桔花は唇を離し、指三本分のくらいで話し始める。


「今飲んだ薬には私の唾液も混ざった。それを飲んだお前には一()同体の呪いがかかる。・・・・・・私は今までただ呪術師に呪いを解いて貰おうしてただけじゃないわ、宿敵を()()()にする呪いを教えて貰いもしたの。お前が本当に償う気があるなら、()()()()私をわざわいから守り続けろ。私が死ぬ時お前も死ぬ。そしてその逆もまたしかり、お前が死ねば私もまた死ぬだろう」


「戦う俺の方が死ぬ確率は高いんだぞ」


「常に狙われる私の方が死にやすいに決まってるでしょ!いいか、私はお前を一生不幸にしてやる。片時も私と竜を忘れることが出来ず、寝る時も心が休まらず、息を吸うことさえ緊張に包まれるこの人生、思い知るがいい!!!」


 光弥は頭が痛くなった。一命同体の呪い。それは二人の命を繋ぎ、片方が死ねばもう一人も死ぬというもの。リスクは半々。大昔、ある国の王が自分の死後、妻を誰にも取られたくないという執着心から生み出された。今では使い所の少ない呪いだ。


 しかし常に竜から狙われる彼女が使えば話は違う。彼女は自らの命を賭けて光弥じぶんに復讐するつもりなのだ。


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