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5話 信用出来ない

「はぁぁぁっ!」


 光弥は鉄の矢を火竜の口に撃ち込み、喉の奥に命中させる。


「ギェェエエ!」


 火竜は痛みで暴れ狂っている。尻尾を振り回し、苦しみながら、いまだその勢いは止まらない。火竜は、出口へ走って行った少女を追うように飛び立とうとする。


「やはり、あの少女を狙っているのか。そうはさせない」


 後ろの腰にたずさえていたダガーを抜いて、竜に飛びかかった。羽根の根元を切り裂き、そしてもう片方も同様にして飛べなくする。そして動きを封じて光弥は頭部へ移動し、火竜の脳天をダガーでとどめを刺す。

 火竜は脳天を突き刺された瞬間動きを止めて、緩やかに地面へと突っ伏した。


「死んだか・・・・・・」


 火竜が白目をむいて絶命しているのを確認して、急いで外に走った。やることはまだ終わっていない。外には他の竜に怯える()()が待っているはずだ。

 外にも荷物を置いて来たので、ダガーや鉄矢はその場に置いていく。来た道を戻って、あの少女を探した。するとその小さな背中を見つけて、光弥は手を伸ばす。


「近寄らないで!」


 彼女は振り返ると同時に剣を構えていた。それは光弥が外に置いていた荷物と一緒に置いていたものだ。剣を構えている彼女は構えが完璧で、少なからず剣に慣れている様子だった。


「憎き竜殺しめ、よくも私を殺そうとしたわね!」

「待て、誤解だ。俺はお前を探していたんだ」

「竜を誘き出す為のおとりの道具にする為でしょう」

「違う!」


 光弥がそう否定した時だ、上空から何か大きなものが降ってきた。咄嗟に彼女をかかえてその場を飛び退いた。現れたのはまたしても竜だった。しかしその竜はさっきの火竜ではなく、サイズも少し小さい。少女は目敏めざとく竜の目の傷に気が付いた。


「街であなたに目を潰された竜だわ」


 光弥は驚いた。いつの間にか竜は傷だらけでズタボロになっており、さっきの竜だとは思いもしなかった。


 竜は潰れていないもう片方の目で光弥と少女を認識した途端、目の色を変えて襲ってくる。そしてやはり狙っていたのは少女の方であった。竜が現れて身を固くして動けなくなってしまった少女、光弥は彼女から剣を素早く奪って竜の首をはねた。

 転がった竜の頭からに、光弥は近寄った。片目が潰れてから随分苦み暴れたようだった。


「悪かったな、あの時とどめを刺してやれなくて」


 迎え撃つ時すでに竜はもう弱りきっていて、まるで死ぬ為に向かって来たようにも見えた。光弥は目蓋を伏せ、剣の血を薙ぎ払う。

 光弥は少女の方へ身体を向き直した。


「ヒッ・・・・・・近寄らないでっ!」


 少女が尻もちをつき、後ずさるので、光弥は歩み寄る足を止めた。


「話を聞いてくれ。俺はただ、お前を助けたいんだ」

「助ける?」

「俺の祖先はお前の一族に酷いことをした。だからその呪いを解きたいんだ」


 光弥の言葉に少女は一層嫌悪感をにじませる。少女はゆらゆらと腰を上げた。そして光弥の胸ぐらを掴む。


「笑わせないで、そんなこと出来るはずがないわ。今までどんな呪術師に頼んでも無駄だった」

「呪った根源である俺の血を使えば出来る。その背中には呪縛痕があるだろう」


 少女は少し目を泳がせてから、小さく頷いた。


「・・・・・・あるわ」

「その呪縛痕を見せてくれ」

「は?ここで『はいそうですか』って見せるわけないでしょ。敵に背中を見せるなんてありえない。そもそもこの呪いのせいで、私が今までどれだけ苦しんで来たと思ってるの。この呪いのせいでお兄ちゃんまで死んだんだからっ!」


 ボロボロと涙をこぼす少女は、悲しみではなく、怒りに満ちていた。当たり前だ、呪いに巻き込まれて肉親の命が亡くなったというのなら、きっと彼女は自分を簡単には信用しない。だから呪いを解くことも出来ない。ただ今光弥に出来るのは謝ることだけだった。


「すまない」

「・・・・・・竜殺しが何謝ってんのよ」






 桔花はもう頭がぐちゃぐちゃになっていた。


「馬鹿にするのも大概にしなさいよ!!!私達一族が受けてきた屈辱がその程度でどうにかなると思ってるなら大間違いよ!だいたい私なんかどうでもいいから、お兄ちゃんを返してよ!!!」


 桔花が掴みかかっても、彼は何も抵抗しなかった。せめて彼が少しでも言い返してくれたら、もっと罵詈雑言を吐き捨てたのに、どうして何もしないのか。それにこの青年はとても虚ろな目をしている。


(本当にムカつく、しかも呪いを解くだなんて。竜殺しなんて絶対信用出来ない)

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