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プロローグ

『日用品でモンスターと戦う世界になりました』の数話分を1話にまとめたものなので内容は全く同じです。

・通常版だと文字数少ない!

・まとめて読みたい!

→『日用品でモンスターと戦う世界になりました【合話版】』(こちら)


・スマホでサクサクと読みたい!

・最新話をすぐ読みたい!

→『日用品でモンスターと戦う世界になりました』(https://ncode.syosetu.com/n7017fn/)


と読み分けていただければと思います!

 前略お母様

 早いもので、関東全域で電波障害が起きてから半年が経過しました。

 テレビ中継で観たかもしれませんが、スカイツリーには『サンダーバード』とありきたりな名前を付けられた大きな鳥が未だ巣を作ったままで、撤去及び討伐の目処は立っていないそうです。


 それでも限定的とはいえ、一般人による手紙の配達が許可されたのは嬉しいものです。欲を言えばこの手紙があなたの元へと届き、僕の安否だけでもお知らせできるとなお嬉しいです。


 返事はおそらくこちらへ届くことはないと思うので不要です。

 ただあなたの息子は元気に過ごしているということだけ知っていてくれればそれでいいのです。


 鈴木 陽介


 

 すでに10通以上は書き上げた手紙と同じ内容、いや次第に簡素になってきた内容を支給された便箋へと認め、封をする。


 

 今度は届いてくれるだろうか――と微かな祈りを込めながら。


 

 1年前、突如池袋駅・所沢駅・横浜駅・浦安駅の計四か所、ほぼ同時にダンジョンが出現した。


 正確には駅がダンジョン化したというべきか。

 その場にいた人達の情報によると、視界が歪み、気を失ったのだという。

 そして気づけばダンジョンが発生していた、と。


 言葉だけでは到底信じられないことではある。


 だがその日生徒達が見せてくれたツブヤイッターには、秒単位でその出来事が大量に流れていた。

 中には人がモンスターに襲われている動画まで載せてあった。


 あまりにグロテスクな映像にそれからすぐにアカウントは凍結されてしまった。そのため今は閲覧することが出来ないが、多くの人の目に映ったことだろう。


 それでもやはり信じ難いものではあった。


 ダンジョンなんてそんなの、ファンタジーの中のものだ。

 動画に写り込んでいたゴブリンによく似たモンスターっぽいものもきっと美術系の大学の学生の卒業制作か何かだろう。


 そう、笑って過ごしていた人も多かったことだろう。


 実際、僕もその一人である。

 笑ってはいなかったが、最近の美術学生はレベル高すぎやしないかとマジマジと見入ってしまっていた。


 そして「これってどうやって作っているんだろうね」なんて美術部の生徒に思わず尋ねてしまったほどだ。


 ちなみにその回答は「多分この皮膚とかは薬品使って溶かしたりしてるとは思うんすけど……。何使ってるか全くわかんないの、悔しいんで調べときます!」だった。


 なんとも真面目な生徒である。


 だがそれが作り物なんかではなく、現実であったことを思い知らせされたのは、ダンジョン発生から4時間が経過した時のことだった。


 だけどあの時の僕は、まさかこんなに大事になるとは思っていなかったんだ。




 池袋駅、東京駅に続いて東京で3番目、日本で15番目に出来たスカイツリーダンジョンが占拠されたのはもう半年も前のこと。

 世界で一番高い送電塔からの電波供給が不能になり、再び大活躍しているのは真っ赤なボディーが特徴的な東京タワーだ。

 まさかスカイツリーが出来てから何十年も経過して再びこんなにも注目されることがあろうとは誰も予想していなかったことだろう。


 僕だって幼少期に祖父母に連れられて登ったきりで記憶にはあまり残っていなかったほどだ。

 子ども達の中には東京タワーと言ってもピンと来ない子も多かったのではないかと思う。だが今は東京の電波塔と言えば東京タワーである。


 スカイツリーは電波塔というよりもダンジョンもしくはモンスターの巣だ。

 だがその東京タワーですら一般人用の回線を担ってはくれない。街や役所に設置されたテレビや国の機関が使用するための電波を送るので精いっぱいなのだ。


 そんなバカなことがあるかと一時は暴動も起きたものだが、スカイツリーから妨害電波が出ている以上、制限されるのは仕方のない話だろう。


 それでも暴動を起こす彼らの気持ちも分からなくはない。

 家族が関東内にいれば会いに行くことも出来るが、それ以外の地方に居れば顔を合わせることはおろか、連絡を取ることすらできないのだから。


 だが2週間ほど前、やっと一般人による手紙の配達が限定的に可能になった。

 それを機に僕のような実家が別の地方にある人や、単身赴任中の人達はこぞって手紙を書いて、各役所に設置されたポストへと投函した。


 だが今のところ無事届いたのは茨城エリアから3便、群馬エリアから4便、栃木エリアから3便、埼玉エリアから2便、神奈川エリアから5便、千葉エリアから1便のみらしい。


 運送に失敗した主な原因は、ポストに擬態したミミックに手紙を食われたか、配達員が途中で襲撃されたかの二択である。


 それを乗り越えて、見事成功した便でさえもエリアの高ランク冒険者が張り付いてやっと関東を抜けることに成功したらしい。


 とはいえ紛れ込んだ小型のモンスターや、植物系モンスターを討伐したりと、エリアを越える直前に色々と面倒ごとがあったらしく、一部の手紙は熱処分対象となってしまったらしい。


 処分対象になってしまった手紙を書いた人は少し可哀想だとは思うが、これ以上エリア認定される場所を増やす訳にはいかないのだ。


 それに届くかもしれないと希望があるだけマシな方だ。


 だって東京エリアは手紙の配達に成功していないのだから。


 やはり関東圏以外の県と隣接している県の配達率は高い。

 東京エリアからは官僚を筆頭とした重役達の文書を優先して届けているのも理由の一つなのだろう。


 他県が羨ましいとは思うが、物資の輸送は人口が特に多い東京を中心に送ってもらっているため文句も言うまい。


 安否の報告よりも生存が重要なのだ。

 

 ちなみにそんな東京エリアだが、実は高ランク冒険者が一番多い地区だったりする。

 そして高ランク冒険者の中には僕の教え子達が多く在籍している。



 実は一番初めに出現が観測された池袋ダンジョンのダンジョンボスを討伐し、ダンジョンコアを破壊――ダンジョンの無力化に成功したのは教え子の一人、柏木 圭吾君である。


 柏木君が初めてのダンジョン発生に遭遇してから一年が経ち、あれから色々とあったが僕はあの日のことは鮮明に覚えている。


 多分これからもずっと忘れることはないのだろう。


 あの日、彼が学校にやってきてくれなかったら……僕はきっと今頃死んでしまっていただろうから。


お読みいただきありがとうございます!


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