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第78話:参謀会議にて


 次の日、駐屯地で俺は昼食をとっていた。

 

 1人で食べるのも何なので、今日はテントの前で5人ほどで集まっていたフランツの一団に入れてもらった。

 若者とはいえ、全員俺よりは少し上の世代である。

 話しかけるのには多少勇気が必要だったが、皆快く受け入れてくれた。


「―――では、隊長はあの『北虎』のグズリーと戦ったことがあるんですか!?」


 食い入るように驚きの声を上げるのは、隊員の1人、バクスター。

 色黒に黄土色の短髪をした青年だ。


「まさか。見たことがあるだけで、実際にグズリーと戦ったのは師匠のシルヴァディさ。俺が相手にしたのは『浮雲』のセンリだよ」


 おどけるように答えると、横から声を上げたのは、くすんだ黒髪の青年、ジャンだ。


「『浮雲』といえば・・・水燕流至高の奥義を3つも使うと言われるあの剣士ですか!」


 センリのことを知っているらしい。


「ああ、多分そうだけど、3つってすごいのか?」


「何を言っているんですか、水燕流の奥義は1つでも使えたら師範代を名乗れるレベルですよ!」


「・・・へえ」


 感嘆しながら俺は今日の配給、芋スープをすする。

 豆スープと同じで美味しいとはいいがたい味だが、毎日料理が出るだけマシである。


 バクスターやらジャンは、フランツのテントのメンバーだ。

 彼ら2人に、俺がどのようにしてシルヴァディと出会ったかを聞かれたので、首都(ヤヌス)からカルティアまでの出来事を話して聞かせたら、皆の食いつきが思いのほか良かった。


 特にみんな男子というだけあって、二つ名のつくような戦士との戦いの話は興味津々だ。


 少しずつでもこうして隊員たちと打ち解けれるのはいいことだ。

 

 しかし、水燕流の奥義の敷居がそれほど高いとは思わなかった。

 俺は今その奥義を練習中なんだが、なんだかすごく無謀なことをしているような気がしてきた。


 シルヴァディは簡単に6つ全部使えるとかいうけど、やっぱりあの人は次元が違うのだろう。

 しかも1年で覚えたとか言っていた。


「それで、『浮雲』のセンリには勝ったんですか?」


 フランツがゴクリと唾を呑んで尋ねてきた。


 もちろんセンリには勝つどころか、散々対策した挙句ギリギリだった。

 俺は苦笑しながら答える。


「はは、時間稼ぎが精いっぱいさ。でもその間にシルヴァディ師匠が『北虎』を倒してくれたから、最終的にはこちら側の勝利に終わったよ」


「なるほど・・・やはり『八傑』は格が違うということですね」


 フランツは得心がいったとばかりに頷いた。


「そうだな。シルヴァディの凄さは正直、言葉にするのは難しいよ。毎日のように襲ってくる盗賊たちを笑いながら一刀両断したり、この間の森での戦いでも、カルティアの二つ名を一瞬で撃退したらしいじゃないか」


「あ、それ聞きました。完全敗北にならなかったのは、寸でのところでシルヴァディ閣下と隊長が来たからだって」


 そう言ったのは、比較的若い少年のウィルコックスだ。

 もちろん俺よりは年上である。


「俺は何もしていないよ。シルヴァディの指示通り動いただけだ」


「シルヴァディ閣下は戦場での慧眼もお持ちなのですか」


「あの人は何でもできるよ。剣だけじゃなく、魔法も一流だ。ほら、俺が駐屯地に建てた小屋があるだろ? あれも元々は師匠のを参考にしているんだ」


「ほえーー」


 誰もが感服するような表情をしている。

 同じ軍に属しているとはいえ、彼らにとって天剣シルヴァディとは雲の上の存在みたいなものであるらしい。

 まあ俺も数か月前まではそう思っていたし、気持ちはわからなくもない。


 と、ひとしきり話したところで、皆の視線が俺の後ろに集まっていることに気づいた。

 どことなく顔色が優れないような気もする。


「?」


 振り返ると、そこには折角の可愛さがもったいないほどの仏頂面の天使―――もといシンシアがいた。


「―――シンシア?」


 もしかしたら今の今までシルヴァディを褒めちぎっていたことを聞かれたかもしれない。

 いや、別に俺がシルヴァディを尊敬していることは事実だからいいんだけどさ。


 シンシアが口を開いた。

 やけに冷淡な声だ。


「・・・指示されたことが終わったので、報告に来たのですが、出直した方がよろしいですか?」


 特にシルヴァディの事には触れず、用件を伝えられた。

 

 どうやら、言いつけていた『班』の編成が終わったらしい。

 彼女の手には紙束がある。

 班の振り分け表だろう。


「いや、聞くよ。すぐに食べ終わるから、先に俺の小屋で待っていてくれ」


「・・・了解しました」


 形式的に敬礼をして、シンシアは去って行った。


「・・・・」

  

 再び向き直ると、どうも皆の顔が暗い。

 陽気なバクスターも、おしゃべりなジャンも俯いて黙りこくっている。

 先ほどまでの明るい雰囲気が嘘みたいなお通夜状態だ。


「・・・どうした皆黙りこくって」


「いや・・・その・・・自分はシンシア副隊長は苦手なもので」


 バクスターが言った。


 俺がシンシアに嫌われていることに関係しているのかと思ったが、単に彼らがシンシアに苦手意識を持っているだけらしい。


「悪い人ではないんでしょうが、その・・・真面目過ぎるところがありまして」 


 シンシアは仮隊長時代、事細かに真面目な規則を強いていたらしい。

 訓練のときも、不真面目にやったりすればすぐに飯を抜きにされたりしたのだとか。

 

 刺々しい言動や、規則に忠実なところから、真面目だとは思っていたが、お堅いイメージがあるのかもしれない。

 話した感じ、バクスターやジャンは規律などとは無縁な感じの性格をしている。

 

 チャラい生徒が、校則に厳しい教育指導の先生を苦手とする・・・みたいな感じか。


 しかし・・・もしもそんなお堅いイメージのシンシアが深夜にお風呂に忍び込んでいたなんて聞いたら彼らはどう思うだろう。


 若干微妙な空気になりつつ、俺は芋スープを急いで口に流し込んだ。



● ● ● ●



 相変わらず仏頂面で待っていたシンシアから話を聞き、班の振り分けられた名簿を受け取った。


 俺は紙束を手に取り、ペラペラと中身をめくる。

 1班の班長は俺だし、2班の班長はシンシアだが、他の班の班長は20歳を越えた―――隊では年長の者だ。


 シンシアの作ってきた班名簿で驚いたのは、名前や年齢だけでなく、ある程度の戦闘スタイルも記入されていたことだ。

 魔法士か魔剣士かの程度だが、俺としては非常にありがたいことだ。


 前衛と後衛のバランスも上手くできており、かつ、なるべく班に女性が1人ということもないように気遣われている。

 この分だと性格的に合わない人間などもきちんと分けられているのだろう。

 真面目な仕事ぶりである。


 特に直すべき場所も見当たらなかったので、そのまま採用し、すぐさま隊員全員の招集をかけた。


 シンシアは即決した俺に意外そうな顔をしていたが、少なくとも俺が作るよりはいい物だろう。



 招集した隊員は、綺麗に隊列を作って並んでいた。

 まだ班分けする前のこの隊列はいったいなんの規則に沿って並んでいるのか気になったが、どうやら適当であるらしい。


 実は全員招集させたのは初めてであったりするが、時間が惜しいので自己紹介もそこそこに、『班』の名簿通りに列を並び替える。


 まず班長を呼び出し、先頭に置く。

 班長は俺とシンシアを含めて全部で16名だ。


 そして他の班員も1人1人名前を読み上げ、該当の班長のもとに並ばせる。

 

 本当はシンシアの作ってくれたこの名簿をコピーして全員分配布すればよかったのだが、残念ながらそんな便利な印刷機器はこの場にない。

 そういえば、首都(ヤヌス)にいた頃は本がありふれていたが・・・この世界でも都市部なら活版印刷技術自体は珍しくないのだろうか。

 なにかしらの魔道具かもしれないな。


 そんなことを考えていると、全員分の名前を読み上げ終わった。

 俺の目の前には、ビシッと直立不動の16列だ。


 俺はなるべく大きな声で、この『班』が、隊での最小行動人数であり、戦場での運命共同体であることと、今後の訓練は基本的に『班』ごとに行い、食事も『班』ごとに行動することを告げる。


「というわけで、今日は各自班ごとに自己紹介及び、互いの戦術の理解を指示する。解散!」


 俺がそう言って締めくくると、隊員たちは誰もが緊張した面持ちで敬礼をして、散っていった。

 こんな年下の指示でも従ってくれるようで何よりである。


 残ったのは、未だ直立不動で並ぶ7人の隊員―――つまりは俺の1班の班員たちだ。


 シンシアが俺の班員をどういう基準で選んだのかは知らないが、どこかで見たような顔もちらほら見かけた。


「なんだ、フランツ。俺の班だったのか」


 明るい茶髪の真面目青年、フランツはその最たる例だろう。


「はっ! ・・・班は隊長が決めたのではないですか?」


 フランツは敬礼をしながら少し意外そうな声を上げた。


「班を組んだのはシンシアだよ。俺はまだ来て日が浅いからね」


 そう言うと、答えたのはフランツではなく、他の高い声だ。


「ああ、それでシンシアちゃん、ここのところ寝るのが遅かったんだ~・・・ですね!」


「・・・なんだ、君も1班なのか」


「はい! よろしくお願いします、隊長!」


 横から口を出してきたのは、以前会ったシンシアの友人3人娘のうちの1人、紺色三つ編み失言少女だ。

 確か名前はアニーとか言ったか。

 

 どうやら彼女も1班であるらしい。


 アニーは剣を持っているが、それほど腕前はなく、実際は治癒魔法が得意な魔法士よりの魔導士だとか。


 女性はアニーの他にもう1人、ふわふわした雰囲気の栗毛のお姉さんがいた。

 栗毛のお姉さんは魔法士で、風魔法が得意であるようだ。


 彼女の他は、19歳のサムというイケメン青年が属性魔法を使う。

 一応剣も使うが、期待はしないでほしいと言われた。


 他は概ね魔剣士だったが、フランツは属性魔法も嗜むらしい。

 剣もそれなりに使うので、つまりは魔導士だ。


「いまだ若輩の身でありますが・・・」


 眉間にしわを寄せながら、『氷槍(アイスランス)』を披露してくれた。

 無詠唱で中級魔法が使えるならば、十分だろう。


 つまりは俺を除けば、


 魔剣士4人に、魔法士2人に、魔導士2人。


 これが1班の編成になる。

 まぁ人数比率を考えれば妥当なところだろう。

 概ね他の班もこのような感じであるはずだ。


 丁度良かったので、俺はフランツを副官に任命しておいた。


 副隊長ではなく、副官だ。

 隊のNo2であり、別動隊の指揮なども任せる可能性のあるシンシアとはちがい、フランツは俺の伝令や、報告係を色々とする小間使いということだ。

  

 本格的な訓練は参謀会議でやることが決まってからと決めていたので、今日のところは簡単に自己紹介と、談笑に勤しんだ。



● ● ● ●



 参謀会議。


 ユピテル共和国カルティア方面軍の、実質的指導者が集まり、今後の方針を決める会議だ。


 参謀府の会議室、縦長の大きな長机はいかにも作戦会議のためにあるような真鍮製の机だ。

 わざわざユピテルから持ってきているとは思えないので、もともと、この都市にあったのだろう。


 そんな長机に椅子を並べるのは、20名程度の軍の最高指揮官―――もしくは参謀たち。


 最も上座に位置するのが、最高司令官にして、カルティア総督も任される銀髪の男、ラーゼン。

 その両脇には、ゼノンとシルヴァディがそれぞれ座っている。


 他の面々は、1個軍団を預かれるような「将軍」の地位を預かる武官たちと、作戦立案や、補給や経理の最高責任者――つまりは文官たちだ。


 俺は武官の末席に座っている。

 正直年齢的にはどう考えても浮いているので、場違い感がヤバい。

 若者ばかり集めた自分の部隊の中でさえ浮いているのに、この会議の平均年齢は中年から壮年であり、目立たないわけがないのだ。


 他の誰もが俺のことをジロジロと見ている。

 見ていなかったのは、既に面識のある上座の3人と、マティアスくらいだろうか。

 マティアスもこの団体の中だと若い方である。


「・・・では、会議を始める前に、新顔の紹介をしよう」


 場に全員がそろったことを確認したラーゼンが口を開いた。


 視線の先は俺なので、どうやら俺のことを紹介するようだ。


「アルトリウス」


「はっ!」


 自分で名乗れということだろう。

 俺は立ち上がって敬礼をしつつ、名乗りを上げる。


「アルトリウス・ウイン・バリアシオンと申します。この度第1独立特務部隊の隊長に任じられました。会議の末席に加えていただき、至極恐悦です」


 無論緊張していたが、噛まずに言えた。

 紹介としてはこんなところでいいだろう。 


 無論予想していたことだが、「隊長に任じられた」という点で、少し会議室が騒がしくなる。


「――例の部隊の?」


「――あんな子供が?」


「――バリアシオンということは・・・アピウスの倅か」


「――ほう、ではヤヌスの神童とかいうのが」


 小声でそんなことを言われている気がする。

 当然俺みたいな子供がこんな場所にいるのは俺自身おかしいことだと思っているので、文句はラーゼンに言って欲しい。

 あと、神童は禁止だ。


「静まれ」


「―――!」


 平坦なラーゼンの台詞で、各参謀は口を噤む。

 流石のカリスマだ。


「年齢的な部分で皆が戸惑うのもわかるが、彼の実力は本物だ。先の戦闘ではギリギリの所でシルヴァディと共に駆け付け、何百人ものカルティア兵を切り伏せて我が軍の窮地を救ったのだ」


 その言葉に、全員が俺の方を向く。

 

 言葉にはしないが、「まさか?」「こんな子供が?」

 とでも言いたそうな表情だ。


 ちなみに何百人も切り伏せたというのは盛り過ぎだろう。

 正確には数えていないが、百は超えていない自信がある。


「・・・では、この少年がシルヴァディ副司令閣下の弟子というのは本当なのですか?」


 武官のうちの1人、白髪の口髭老人が発言した。

 この中だと最年長にも思える。


 ラーゼンは少し目を細めて答えた。


「その通りだ。そしてバロン、彼は地位としては君と同じ将軍だ。失礼な物言いは避けるんだな」


 どうやら、「少年」という物言いが規律に反したらしい。

 確かに地位としては将軍待遇って聞いていたが・・・この老人のほうがどう考えても偉いと思うけど。


「・・・失礼しました。バリアシオン殿も、すまない」


「いえ、お気になさらず。若輩者の自覚はありますので」


 恐らく60は超えた老人が頭を下げてきたので、俺は内心戦慄しながら、表面上は済まし顔で礼を返しておいた。

 

「――しかし、戦闘力はともかく、いきなり『例の部隊』の指揮官というのは聊か急すぎませんかね。ある程度前線に慣れさせてからのほうがいいのでは?」


 次に言葉を発したのは文官側の重鎮っぽい人だ。

 武官と違って鎧や剣を装備していないからすぐわかる。


 この人の言っていることについては全くもって同意見だ。


「それも問題ない。なにせ・・・『例の論文』は彼が書いたんだ」


 少しニヤリと笑いながらラーゼンが言った。


「なんと!?」


 質問した重鎮っぽい人だけではなく、他の面々までが驚きの声を上げた。

 

「・・・それは、バリアシオン将軍、失礼しました。流石は神童といったところですね」


 重鎮っぽい文官の人まで頭を下げてきた。

 『論文』というのは十中八九、俺が兵法研究ゼミで書いたものだろうが・・・参謀たちからは高評価だったようだ。


「え、あ、いえ・・・神童など、私には過分なものですよ」


 多少面食らいながら否定しておいた。


 本当に恥ずかしいのでやめてください。

 大人になってからも神童なんて言われるのだけは避けたい。


「さて、ではそろそろ会議を始めよう」


 そんな感じで、俺はお偉いさん方との面会を終わり、会議が始まった。


 俺の紹介の間、どこかシルヴァディが誇らしい顔をしていたのが印象に残っている。

 弟子が褒められて嬉しがっているのかも知れない。



● ● ● ●



「ハァァァア!」


 地面を蹴った。

 全力の加速で剣を振る。


 だが、途中でそれを止める。

 わかるのだ。

 この攻撃は・・・通じない。

 

 すぐさま防御魔法を展開し、バックステップを取るも、俺の動きよりも遥かに速い剣が、既に俺の眼前に迫る。

 来るとは読めていても、やはり体は反応しない・・・!


「―――フッ!」


 遅れてきた掛け声を聞いたときには、既に俺は仰向けに倒れていた。


「・・・今日はここまでだな」


 俺に一撃をお見舞いした相手―――黒髪長身の男、ゼノンが、額の汗を拭いながら言った。


「・・・はい、ありがとうございます」


 今の立ち合いで丁度俺の魔力が切れたことに気づいたのだろう。

 魔力量だけで言えば俺はゼノンよりも多いはずだが・・・シンシアと俺を交互に相手にしていたにも関わらず、ゼノンはまだ余裕がありそうだ。

 魔力の使い方が違うのだろう。


 シンシアは少し前に俺より先に魔力が切れて端でこちらの方を眺めている。

 彼女の魔力量もなかなかだが、その点については俺に軍配が上がるようだ。


 とはいえ立ち合いの内容については、俺が勝っている部分は一つもない。

 シンシアは毎回何度も打ち合い、30秒から1分は持つが、俺は初撃すら対処ができていない。

 今度コツでも聞いてみるか。


「それで、初めて参加した参謀会議はどうだった?」


 俺が仰向けでそんなことを思っていると、ゼノンが少しニヤリと笑いながら聞いてきた。


 参謀会議の様子を思い出しながら俺は答える。


「どうもこうも・・・不安しかないですよ」

 

 参謀会議は、つつがなく終わった。

 基本的にラーゼンの決定に逆らう人間はいないからだ。


 会議の最初に、文官たちから現在の兵糧の備蓄量と、徴収量の比率や、現在征服下においている地域での税収などの報告がなされ、次に武官たちから軍団の練兵状況や、士気の報告がなされる。


 そして、肝心の次回の攻勢作戦の立案についてだが、多少驚きの声は出たものの、殆ど即決で終わった。

 ラーゼンにより発表された作戦は、正直俺も驚いたうえ、できれば反対したかったが、総司令が言うなら大丈夫だ、というバロン老人の一声で全会一致で可決となった。


「まぁそういうな。それだけ総司令はお前のことを買っているということだ」


「いや・・・打開兵力とは聞いていましたけど・・・あの作戦だと、もはや主戦力といっても過言じゃないですよ」


「大丈夫だ。カルティア軍は多いが、質はユピテル軍の方が高い。お前の隊ならなおさらだ」


「そうかもしれませんけどね、まさか本当に1個軍団扱いされるとは思って――」


 そこで俺とゼノンの会話は途切れる。


「―――あの、私はもう失礼しますね」


 シンシアがいつも通り不機嫌そうな顔をしながらそう言ったのだ。

 俺とゼノンが仲良さげに話していたのが気に食わなかったのかもしれない。

 一応彼女にも関係のある話なんだけどな。


「・・・僕も行きます。ゼノン副司令、作戦の話はまた」


「ああ」


 俺はゼノンに敬礼をして、シンシアを追いかけた。

 



 攻勢作戦は、決行するときまで詳しくは書かないかもしれません。


 読んで下さりありがとうございました。

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