第43話:父親の言葉と新たな門出
なんとか形にしましたが、あまり納得できていません。
父親ってなんですかね。
珍しくアピウスが俺の部屋を訪れた。
気づかないうちにもう彼の帰宅時間になっていたらしい。
「父上―――どうしましたか?」
俺はベッドに座り、アピウスに手で椅子に座るよう催促する。
「ふむ、少し話をしようと思ってね」
アピウスは、椅子に座る。
少し彼も老けただろうか。わざと伸ばしているらしい顎髭はあまり似合っていない。
「話―――ですか?」
「ああ。アルトリウスの進路の話だ」
内心、ギクっとしてしまう。
先ほどのオスカーとの話を知っているのだろうか。
「いや、なに。もうそろそろ法務官補佐の推薦の期限が切れようというのに、まだ迷っているようだからな」
「あぁ・・・」
法務官補佐の推薦は、俺が受けている官職の推薦の中では最も待遇のいいものだ。
普通の学生なら飛び上がって喜び、間髪入れずに承諾するのが普通のようだが、俺はずっと返事をせずに放っておいた。
アピウスはその返事の催促に来たらしい。
「―――そうですね。そろそろ返事をしないといけませんね」
気だるげに返事をすると、アピウスは少し目を細める。
俺と同じ、ブラウンの瞳だ。
「ふむ、どう返答するつもりだい?」
「え―――」
そうだな。
どうすればいいんだろう。
オスカーについていかない場合は、きっとこれを受けるのが一番だ。
官職のエリートコース間違いなしで、順当にいけば最終的には元老院議員だ。
―――しかし、元老院議員か。
もしも内戦が起こるならば、元老院議員なんてものの存在はどうにも難しい立場になる。
―――いや、というかそもそも、内戦が起こった場合、勝つのはいったいどっちなんだ?
分かりはしない。
どちらも勝てると思っているから戦争なんてものが起こるのだ。
後からなら勝った原因なんていくらでもわかるが、当時の人間にそれが分かるなら、最初から戦争なんて起こらない。
―――こういう時に正しい判断ができるのが、先見の明があるっていうんだろうなあ。
俺にはないものだ。
俺は自分でそんなこと起こらないと思い込んで、内戦についてなんて情報を集めることもしなかった。
きっとヒナとかならいい判断をしてくれたかもしれないが、あいにくと彼女はここにいない。
―――そうだ、ヒナはカレン・ミロティックじゃないか。
カレン・ミロティックは誰からみても門閥派の家門だ。しかも筆頭レベル。
もしも俺が民衆派についたら、彼女と戦うことになるかもしれない。
それは嫌だな。
「アルトリウス?」
怪訝な顔をしているアピウスの声で、俺は考え事から戻ってくる。
「―――あの――――父上は、この国がこれからどうなっていくと思いますか?」
不意に、俺はそんなことを聞いていた。
「この国?」
「はい、今―――国政は真っ二つに割れていると聞きます。民衆か、元老院か―――。誰かが決起すれば――争いが起こるレベルになっているのではないでしょうか?」
「ふむ」
そういえば、俺はアピウスとこういった話をするのは初めてだ。
単に一日の内で接する時間がないという事もあるが、お互い家で政治の話などしない。
でもよく考えたらこのアピウスという男は、一部国政に携わる仕事をしている。
現在の情勢には詳しいかもしれない。
俺は続ける。
「例えば、民衆に人気があり、なおかつ軍団を率いるような人間が事を起こせば、容易に内戦が起こるような―――それほどに切迫した状況なのでしょうか?」
俺の言葉にアピウスは目を見開いた。
「―――そうか、そこまでわかるのか」
「はい?」
「いや。私も―――そういった話をするのは避けていた節があるからな」
ああ。
家族での時間にそんな政治の話を持ち込むつもりはなかったという事か。
アピウスは少し考え、話し出した。
「確かに、ラーゼン殿の民衆の支持とカリスマ性を、元老院―――門閥派は警戒している。今回のライラ殿の死は、私たち下級貴族の間でも、まことしやかに何かの契機だと囁かれているくらいだ」
「――――!?」
急に具体的な名前が出てきて俺は息を呑む。
アピウスは顎髭を触りながら続ける。
「しかし、ラーゼン殿自身は―――私も話したことがあるが、いつも共和国の事を想い、尊ぶ方だ。とてもではないが、蜂起などするとは思えないな」
確かに俺はラーゼンに会ったことはない。だが、
「しかし、彼にその気がなくとも、ラーゼン殿の周り――過激派の民衆派や、そもそも民衆自身が望んだ場合、結局事は起こってしまうのではないでしょうか」
俺のセリフを聞いて、アピウスの顔が真顔になる。
おそらく仕事をしているときはこういった表情なのだろう。
「まあ可能性はあるが―――そうなった場合、この国は滅んでしまうだろうな」
「―――!?」
滅ぶ――?
勝ち負けではなく、国が滅んでしまうというのは話が飛び過ぎではないっだろうか。
「民衆が自ら民主主義を捨てたいと思っているんだ。どちらが勝とうが、待っているのは独裁国家の誕生か、形骸化した国の残骸だ」
アピウスはそう言って吐き捨てた。
「父上は―――バリアシオン家は内戦が起こった場合―――どちらにつくつもりでしょうか?」
「まさか起こるとは思えんが―――バリアシオン家はクロイツ・ローエングリン家と懇意にしているからな。彼らと共に行くことになるだろう」
俺の母、アティアはクロイツ一門の出身だ。当然の事だろう。
クロイツ一門は穏健派だ。
「だが、どうしたんだ? 内戦がどうとか、お前が進路を悩んでいることと関係があるのか?」
アピウスが怪しむような顔で尋ねた。
俺は意を決して話し出す。
「―――オスカーが、カルティアへの使節に選ばれたことを知っていますか?」
「・・・ああ。若いのに不憫なことだ」
少し目を伏せるアピウスに、俺は言った。
「彼に、共に来てくれと頼まれました」
「――――――」
アピウスは絶句する。
「民衆派がどうとか、そういうわけではありません。1人の友として―――助けてくれと、そう言われました」
「・・・・行きたいのか?」
振り絞るような声でアピウスが言った。
俺は唇を噛み締めながら答える。
「行きたくはありません。戦場は―――怖いです。それに、行けば、家族に迷惑をかけることになります」
俺が行けば、バリアシオン家は民衆派――オスカーと同じ陣営だと言われることになるだろう。
そうすれば、オスカーの母のように、俺の家族も危険に晒されるかもしれない。
でも。
「でも、オスカーとの友情も裏切りたくありません」
「・・・・・・」
アピウスは黙っている。
しかし、瞳だけはこちらを見据えて離さない。
「僕は―――どうすればいいのか、わかりません。いったい何をするべきなのか―――何を信じればいいのか――—どこへ向かって行けばいいのか―――」
この世界に来て、初めて他人の前で、弱音を吐いた。
だって、本当にわからないのだ。
正直、どれだけ内戦が起こると言われても、ピンとこない。
戦争なんて見たことがないのだ。
戦争になった時、家族がどうなるかなんて想像も出来ない。
どちらが勝つかなんて余計にわからない。
戦争に行くのは怖い。軍人なんて絶対にならないつもりだった。
オスカーを1人で行かせるのも嫌だが、家族にも迷惑をかけたくはない。
ルシウスの言っていたことだって、本当かどうかなんてわからない。
「―――アルトリウス」
アピウスが口を開いた。
なにか決意の滲むような、闘志のこもった瞳だ。
「家の事を言い訳にするんじゃない」
「―――え?」
予想に反して、アピウスの口調は、俺を叱咤するようなものだ。
「家を守るのは、息子の仕事ではなく、父の仕事だ」
ぴしゃりと、俺の横っ面を殴るような言葉だった。
「別にカルティアへ行けと言っているわけじゃない。ただ、行けない理由に家を―――家族を理由にすることは許さない」
「でも―――」
アピウスは俺の言葉を遮る。
「私や、アティアが、お前に助けを求めたか? 違うだろう。逆だ。親というのは子供を助けるものだ」
「――――」
俺はなにも言い返せない。
「お前は聡い子だ。昔から家の事を考え、他人を思いやれる子だった。色々なことを敏感に感じ取り、深くまで考えて、行動できる子だ。だからこそ、色々なことを天秤にかけ、悩んでしまうのだろう」
アピウスは少し、寂しげな顔をする。
「私は親として、お前に何かをしてやれたことは少ない。言葉も剣も教えることはできなかった。だが、お前の親として、ずっとお前をみてきたからわかることもある。もしもこのまま友を1人で行かせてしまったら、お前は思い悩み、後悔するだろう」
そうかもしれない。
だけど、それは行っても―――。
俺の思考を読んだかのように、アピウスは静かに言った。
「――だから、私は親として言おう。家のことは任せなさい、と。息子に心配されるような父ではない、と」
ああ、そうだ。
彼は父親だ。
俺の父親なのだ。
たとえ中身の年齢が下でも、この世界の―――アルトリウスの父親だ。
そうか、俺なんかより―――よっぽど頼りになるじゃないか――――。
逆に、オスカーは、俺に助けを求めている。
追い詰められて、どうしようもなくなって、俺を頼っている。
応えられるのは、俺だけだ。
「やりたいように、やりなさい。内戦も、カルティアも、関係ない。なにが起こるかなんて、どうせ誰にもわからないのだから。正しい選択ではなく、後悔しない選択をしなさい」
アピウスは最後にそう締めくくった。
そうか―――。
そうかもしれない。
きっと、俺は後悔するのだ。
戦場にビビって、オスカーを助けなければ、後悔する。
もしも家族に被害が出れば、後悔するかもしれない。
でも、俺よりもよっぽど頼りになる男が、任せろと言ったんだ。
俺の父親が、大手を振って任せろと言った。だったら任せるほかない。
未来なんて誰にも分からない。でも、オスカーを助けなければ、後悔することは分かる。
だったら―――。
「―――カルティアに、行きます」
そういうと、アピウスは満足そうに小さく頷いた。
● ● ● ●
「うえええええん!!アル君んんんん!!」
エトナは泣いていた。
これ以上ないくらい泣いていた。
確かに、俺がヤヌスを離れるのは初めてだ。
しかも行き先がカルティアという戦闘区域。
おそらく1年か、それ以上は帰ってこれないだろう。そもそもカルティアまでが長い。
帰ってきたときも、もしかしたら平和とはいいがたい状況かもしれない。
とんだ修学旅行になったもんだが、エトナからしたら不安しかないだろう。
まあ俺も似たようなものだが。
しかし、結局ルシウスの忠告通りになった。
まさかこんな大きな事態の渦中に身を投じることになるとは思っていなかったけどね。
ルシウスを完全に信じるわけではないが、カルティアには『天剣』や『迅王』がいるらしいし、もしかしたら剣を学べるかもしれない。
『強くならなければならない』という彼の忠告を無下に扱わない方がいいだろう。
少し心配していた金銭面だが、前金としてオスカーが提示―――まあ半分くらいは国庫から出たらしいが、金額は150万D程度だ。俺はこのうち7割を家に入れた。
本当は全額入れたかったのだが、アピウスが「父親の威厳にかけて断固として拒否する!」といったので仕方なく減額した。
イリティアの家庭教師料にはおそらくぜんぜん足りていないが、少なくともアランとアイファの学費を加味しても我が家に余裕はできるだろう。
このように金銭面に関しては、下手に官職を選ぶよりもまとまった額が手に入った。
使節団はれっきとした公務の正規な仕事なので金がかなり降りたようだ。
俺が未成年であることは、オスカーに近しい民衆派が色々とゴリ押しして何とかなったらしい。
まあ普通は使節代表の副官なんて未成年には無理だもんね。
今回は代表自身も未成年という事で、色々と特例だそうだ。
「うううう、せっかくアル君の奥さんに恥じない仕事につけたのにい・・・ぐすん」
ここはバリアシオン邸の玄関。
出発する俺を見送るために、家族だけでなく、エトナやカインも来ていた。
アピウスにカルティア行きの意思を表明してから、色々な手続きやら準備やらに1か月程度かかり、今日が出発の日だ。
この間に、お世話になった人に挨拶をしたり、一応ヒナとイリティアに手紙を書いておいた。
ヒナは門閥派の子女なので、思う所もあるだろうが―――俺の気持ちに変わりはない。成人してすぐには会えないかも知れないが、君が想ってくれている限り、添い遂げるつもりだと書いた。めっちゃ恥ずかしかったが、後悔はない。
イリティアには、できれば『天剣』か『迅王』にあって剣を学ぶ、ということと、ヒナをよろしく、と書いた。
「エトナ、前にもちゃんと説明しただろう? 別に今生の別れになるわけじゃない。しばらくは会えないかもしれないが、また会える。だから、泣くな。笑顔で見送ってくれよ」
「ぐすん・・・うん・・・」
頭を撫でてやると、エトナは歯を食いしばって泣くのを我慢する。
話をして打ち明けたとき、彼女は案の定反対した。
どうしても行くというなら自分もついて行く! と言ったときにはどうしようかと思ったが、誠心誠意説明したら、納得してくれた。「絶対に生きて帰ってね」と100回くらいは言われた。
「いやあ、トントン拍子に話が決まっちまったなあ。・・・まあアルはヤヌスなんかに収まる男じゃないと思っていたけどよ」
カインは特に反対もせず、頑張れよ、とだけ言ってくれた。
さっぱりした対応だが、実力を信用されているのだろう。
「ほら、これは選別だ。向こうで支給されるものよりは上等なシロモノだぜ。大事に使えよ」
そう言いながらカインが手渡したのは一本の片手直剣だ。
見た感じ、結構上等な業物な気がする。
「・・・・いいのか? ちゃんとした剣はまだカインも持ってないんだろう?」
「気にすんなよ。俺はまだ使う機会もないしな・・・お前と違って単位が足りないもんだから、行きたくてもヤヌスを離れられないよ」
「ははっ」
思わず笑みがこぼれる。
確かに、カインは単位ギリギリだったな。
ちなみに、俺はもう単位が足りているから4年の後半期など全く出なくても卒業が認められる。というか校長と話して認めてもらった。オスカーも同じくだ。多分元老院から色々と圧力がかかったんだろうな。よほどオスカーをヤヌスから出したいらしい。
「じゃあ、ありがたく受け取らせてもらうよ」
「ああ」
剣をさせるようなベルトをしていなかったので、とりあえず貰った直剣は手に持つことにする。
「アルトリウス、家のことを気にする必要はない。お前の好きなように生きなさい。戦場は厳しいところだろうが・・・絶対に戻ってこい。ここがお前の家なのだから」
「父上・・・・ありがとうございます。頑張ります」
アピウスとはもう十分に語り合った。
どうやら、いざというときにクロイツ一門の助力を貰えるように、掛け合ったらしいし、家族のことは父親に任せるのが一番だ。
「アル、あなたならどんなところでもやっていけるわ。自分の力を信じて、励むのよ。でも、自分の身は大切にしなさい。アルはちょっと無理するところがあるから・・・」
「母上も・・・今までありがとうございました。心配しなくても用事が終われば戻ってきますよ」
アティアは多少目に涙を浮かべている。
アティアにはアピウスの次に、カルティアへ行くことを報告・・・というか許可をもらうことにした。
黙って考えていたようだが、最後は快く俺を応援してくれた。
俺のせいで派閥の対立に巻き込まれるかもしれないというのに、気にもせず俺を送り出してくれた。
無論、心配もしていたが、同時に俺を信頼もしているようだ。
なんだかんだ俺のことをずっとそばで見てきたのは両親だからな。
「お兄ちゃん、行っちゃうの?」
「アル兄・・・ぐすん」
アイファもアランも目に涙を滲ませながら、リリスに連れられてこちらを見ている。
「ああ、行くよ。入学試験、最後まで面倒みてやれなくてすまない」
そんな二人の頭をわしわしと撫でながら答える。
「アル様。二人の面倒はお任せください。絶対に、今までアル様が教えていたことを、無駄にはしません」
「・・・ああ、頼みます」
リリスがかしこまった顔で俺に礼をする。
彼女も礼儀正しい良いメイドになったものだ。
結局彼女には妹弟を任せっぱなしで、お礼も渡せなかった。
なにかカルティアで良いものがあったら持って帰ろう。
「坊っちゃま、行ってらっしゃい」
珍しく家にいるヌマも挨拶をしてくれた。
「うん、ヌマも、家のことをよろしく頼みます。もしかしたら危険なことに巻き込まれるかもしれないので」
「お任せください」
もしも、バリアシオン家が門閥派に狙われるようなことがあったら、体力のないアピウスでは色々と大変だ。
彼のサポートが不可欠になっていくだろう。
「坊っちゃまも大きくなられましたね・・・まさかこんなに早く家を出る日が来るとは思いませんでしたが、坊っちゃまならきっと大丈夫です。頑張ってくださいね」
チータは微笑みながらお辞儀をする。
彼女にもだいぶ世話になったな。
「チータも、お世話になりました。帰ってきたらまた頼みます」
「喜んで」
彼女の作ったりんごパイをしばらく食べれないと思うと口惜しく感じるな・・・。
「アル様、副官のお仕事、頑張ってください」
最後に挨拶をするのはリュデだ。
大きな瞳に、可愛らしさを残しつつ、ところどころ大人びてきた顔立ち。
亜麻色のポニーテールの美少女に成長している。
てっきり彼女も泣いて引き止めるのかと思っていたが、意外とけろっとした感じでむしろ、目に闘志を燃やして送り出してくれた。
「わたしも、目標ができたので、それに向けて頑張りたいと思います」
ほう、俺がヤヌスを出るというので、彼女も彼女なりに目標を考えついたのか。
「へえ、どんな目標か聞いてもいいかい?」
「はい! 将来アル様の秘書になるんです!」
「!?」
驚いたのはおそらく俺以外の大人たちだろう。
秘書というのは、通常平民の中から優秀な人材が選ばれることが多い。
貴族の士官に顎で扱われるため、同じ貴族では問題だし、奴隷だと格落ちしすぎる。
そのため平民がちょうどいいのだ。
まあ、秘書を雇う金がない下級貴族などは奴隷からも雇うことはある。
バリアシオン家も例に漏れず金がないので、アピウスはヌマを秘書のような形で使っているしね。
リュデの才覚があればなんの問題もないと思うのだが・・・。
俺の秘書というなら雇うのは俺だしね。
「わかった。もしも秘書が必要になったらリュデに頼むよ。しっかりと自身の研鑽をするように」
「はい!」
うん、いい返事だ。
大人たちも、驚きつつも温かい目で見守ってくれる。
隣でエトナが、その手があったか! なんて顔をしているが、いや、君は貴族だし、せっかくの元老院受付嬢の職はいいのか!?
「では、行ってきます」
俺は家を発った。
別に今生の別れというわけでもないのに、皆大げさだな。
――――いや、大げさにもなるか。
使節――とはいうものの、結局その後は従軍することになる。戦場で軍人になるのだ。
一応俺の身分としては、カルティア方面慰霊使節団副代表という形になったが、向こうに着き次第、オスカーの副官として軍隊に配属される。
正直、今から自分が戦場に行くという事実に、足がすくんでいるのが分かる、
軍人になどなるつもりはなかったのだ
戦場は怖いし、殺し合いをしている自分なんてものは想像できない。
だが、後悔はしていない。
それだけが唯一の希望だ。
さあ、なんにせよ、新たな門出だ。
駆け足になりましたが、学校編はこれで終わりになります。
大きな節目ですね。
ここから何話か間話を挟みます。
読んでくださり、ありがとうございました。合掌。




