表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/250

第4話:幼少期の交友関係

 キャラが増えます。

 友人二人はレギュラー枠です。



 5歳になった。 


 さて、家にこもって歴史書や地学書ばかりを読んでいて引きこもりがちな俺だったが、友達がいなかったわけではない。

 まず、バリアシオン家の奴隷であるチータの次女・リュデだ。

 最近ではリュデも成長し、元気に家中を歩き回っている。


 また、リュデは読み書きにも興味があるようで、よく俺に単語の意味や読み方を聞いて来る。


「アル様、これはなんて読むの?」


 今日も俺がユピテル共和国の政治体系についての本を読んでいると、どこからかやってきたリュデが覗き込んできて、色々と質問して来た。


「これは『元老院』って読むんだよ」


 基本的に俺は面倒臭がらずに答えることにしている。

 確かに自分の読書はまったく進まないが、それを理由に無垢な少女の知識欲を妨げるのは大人気ないし、人にものを教えることはそれほど嫌いではない。


「アル坊っちゃま、いつもリュデがごめんなさいねぇ」


 たまにリュデにものを教えているところをチータがみると、申し訳なさそうにしている。 

 一応、リュデもチータも身分は奴隷なので、雇い主の長男である俺には気を使うことも多いのだろう。

 もっとも自分の娘が文学に興味を持ったことは嬉しいようで、特にリュデを止めはしない。その代わりチータはよくケーキやクッキーを俺に作ってくれる。


「げんろーいんって?」


 親の気心を知ってか知らずかリュデは首を傾げながらさらなる疑問を俺にぶつけてくる。


 ポニーテールに縛っている亜麻色の髪が垂れていて、俺を見つめる眼差しは真剣なのだろうが、どうしても可愛らしく見えてしまう。


 リュデは将来、美人になるに違いない。


「元老院っていうのは、この国の色々なルールを決める偉い人達のことだよ」


「ふーん」


 リュデはキョトンとしているが、まあどれだけわかりやすく説明しても、一つの国の政治体系を並の幼児が理解するなど不可能に近いだろう。そもそも国の概念からして根本的な理解は難しい。

 俺はある程度割愛して説明している。


 ちなみに現在のユピテル共和国は、選挙権を持つ国民から選挙によって選ばれた人間が、元老院を形成し、立法や行政を担当している。

 まあ場合によっては司法も扱うみたいなので、前世でよくある民主主義国家というよりは、少数寡頭制に近い気もする。


 文化レベルが中世ヨーロッパで止まっている割には細かな政治制度や法律まで整備されているのは驚きだ。


「じゃあこれはなんて読むの?」


「それは執政官って読むんだ」


「しっせーかんって?」


「執政官は、元老院によって選ばれる1番偉い人のことだよ」


 執政官は国家の最高責任者で、任期は1年、再選は禁止されている。

 独裁を防ぐという目的で毎年2人の選出だ。


「ふーん。なるほど。アル様はなんでも知ってるね!」


 教えたことを理解してるのかは不明だが、リュデは納得したように頷いている。

   

 さて、リュデの質問も落ち着いたところで俺の交友関係についてだが、一応俺にはリュデ以外にも友人は存在する。

 むしろリュデは我が家の使用人の娘なので、将来的にみると対等な友人というわけにはいかない。


 なので、俺には同じくらいの身分―――つまりは貴族の子弟の友人がいる。


 もちろん進んで作ったわけではないのだが、両親からしたら友人を作ることはとても重要なことのようで、俺が読書室にこもっているときでも、近所の同い年の子供が来ると、俺を読書室から叩き出してしまう。


「アルくん、エトナちゃんたちが来てるわよ」


 言ってるそばからアティアが読書室に入って来た。

 本当は読書をしたいのだが、バリアシオン家の教育方針上、友達はないがしろにできない。


「わかりました、今行きます」


 と母に相槌をうち、


「じゃあそういうことだから、行ってくるよ。続きはまた今度ね」


 本を片付けながら、リュデに言った。


「うん、ありがと、いってらっしゃい」


 リュデは多少残念そうな顔をしてそう言ったが、仕方ない。一緒に遊ぶことは出来ないのだ。

 他の貴族の子供と一緒に奴隷の子供も遊ばせるのは他の家に対して失礼な事に当たるそうだ。


 ―――あいつらよりはリュデのほうがよっぽど高尚な貴族の子供っぽいけどな・・・。


 そう思いながら俺は読書室を後にした。


 俺の友人たちは家の玄関で待っていたようだが、なにやら言い争いが聞こえる。


「――――だからなんでアルも誘うんだよ!」


「なに言ってるのよ! 私はアルくんと遊びに来ただけだもん!」


「あんなやつ誘わなくていいだろ! 2人だけで遊ぼうぜ!」


「えー、だってカインくんと遊んでてもつまんないもんー。バカだし!」


「バカって・・・エトナお前・・・・」


「あ! アルくん!!」


 ドアを開けると、少年と少女が俺を待ち受けていた。


 先にこちらに気づいた黒髪ロングの少女は『エトナ・ウイン・ドミトリウス』といい、父親同士が同じ一門ということもあり仲が良く、家も近いためよく交流があった。


 バツが悪そうに、俺と目線を合わせないこの青髪の少年は『カイン・クロイツ・ローエングリン』と言う。

 クロイツ・ローエングリン家は母の実家であり、クロイツ一門の中でも多数の勢力をもつ有力貴族だ。


 ちなみにこの世界の名前の構成についてだが、ミドルネームがあるのは貴族だけになる。


 ユピテル貴族には12の氏族一門があり、貴族に属する者は必ずどれかの一門名をミドルネームにもつ。


 例えば俺の名前は『アルトリウス・ウイン・バリアシオン』というが、この場合、アルトリウスは名前で、ウインが一門名で、バリアシオンが家名になる。


 つまり、『私はアルトリウス・ウイン・バリアシオンです』と名乗るということは、『私はウイン一門に属するバリアシオン家のアルトリウスです。』と名乗る事になる。


 長々と説明してしまったが、一応、エトナもカインも遠からず俺の親戚に当たる。


「ねー、アルくん今日は私の家でおままごとしよ!」

 

 俺が外に出るなり、黒髪の少女、エトナがニパっと微笑みながら提案をした。


「え、ああ、まあいいけど・・・・・」


 まさかこの歳になっておままごととは。

 まあ見た目は年相応なのかもしれないが・・・。


「いや、まだ話はおわってねえ!!」


 俺が返事をした瞬間に間髪入れずカインが文句を言って来た。


 どうやら彼は俺が2人と遊ぶ事に反対のようだ。

 いや、どうやらというか、いつもの事なんだが――。


「よし! アルは俺と勝負しろ! 俺に勝ったら遊びに入れてやるよ!!」


「はあ・・・」


 この世界の子供たちは本当に自由奔放で困る。

 というか俺が勝ってもカインは一緒に遊べるというのは不公平じゃないか?


「じゃあここからエトナの家まで競争な!! よーーい、どん!!」


 俺の返事を待たず、勝手にルールを決めるとカインはフライングをものともせず駆け出してしまった。


「はー、もう、いつも勝てないからってズルして・・・」


 エトナがため息をついたが、実際その通りだった。


 カインには以前からこのような勝負を何度も挑まれていたが、驚くべき事に俺の今の体はとてつもなく運動神経がいいらしく、未だに一度も負けたことがない。


 流石に今回は明確にフライングをされたのであまり余裕を持ってはいられなさそうだが。


「じゃあ俺も行ってくる。エトナはゆっくり歩いて来なよ」


「はい、あなた、いってらっしゃい!」


 もうおままごとを始めているのか、エトナは妙にかしこまって俺を見送った。


 ちなみに、子供が1人で町中を歩いていたら危ないのではないかと思う人がいるかもしれないが、このユピテル共和国の首都ヤヌスはとても治安がいい。

 道も整備されてるし、違法な奴隷商や、ヤクザなどもそのほとんどが根絶されていた。


 また、おそらく俺たちが外に出るときは家から1人、従者が見張っている。一応俺たち皆貴族だからね。


 バリアシオン家からは多分チータの夫のヌマあたりだろうか。

 エトナのドミトリウス家やカインのローエングリン家からもおそらく従者が尾行しているはずだ。

 俺たちはよく走り回っているので大変な仕事であると思う。


 さて、一応本気を出してエトナの家まで走って来たが、まだカインは着いていないようだった。


「あれ、抜かした事に気付かなかったかな?」


 そう思っていると、程なくして、ローエングリン家の従者と思しき人に連れられたカインが到着した。


 エトナの家の門の前で座っている俺を見つけるなり、長身の従者は話しかけてきた。


「いやーどうやら坊っちゃん、今回は絶対に負けまいと、近道をしようとしたみたいで、結局迷ってしまったみたいですな」


 従者はそう言うと、カインを俺に引き渡してどこかへ行ってしまった。

 いやあ、本当、大変な仕事ご苦労様です。 


 しかし、なるほどな。俺に勝とうとするあまり自ら危険を冒し、結果恥ずかしい結果になったわけだ。 

 カインはというと、目の辺りが赤く腫れている。


「ぐす・・・なんでいつも勝てないんだ・・・俺だって運動得意なはずなのに・・・」


 半泣きになりながらも負けは認めるあたり、俺は案外カインを嫌いになれない。


 カインはアホだが、いい奴なのだ。ガキ大将気質で、他の子供たちからの人気も高い。


 おそらく、もし俺が勝負に負けたとしても『しょうがないな!今日は特別に一緒に遊んでやるよ!』とか言って、結局一緒に遊んでくれるだろう。


 まあ当分負ける気はしないが。


「やっぱカインくん負けちゃったんだ! アルくんに勝つなんどうせ無理なのに・・・」


 程なくしてエトナも着いたが、開口1番、カインに対して辛辣な言葉を浴びせていた。


 カインはまたショックで泣いてしまうかと思ったが


「うう、、、次は絶対負けないからな!!」


 と言って次の戦いへの闘志を燃やしていた。


 俺もしばらくはこの面倒な友人の相手に忙しくなりそうだ。


 ちなみに、この後のおままごとで、カインはペット役を見事に務め上げた。


● ● ● ●


 そういえばこの時期に喜ばしい出来事があった。

 俺に妹と弟ができたのだ。


 4つ下の彼らは双子で、妹が『アイファ』、弟が『アラン』と名付けられた。


 俺を育てるのに苦労しなかったアティアは、この双子の子育てで苦労する事になるだろう。

 できる限り俺も母をサポートしていきたいと思う。


 なんにせよ、俺の第二の人生は騒がしくなりそうだ。



 エトナ→主人公と同じ一門の女の子。黒髪で主人公ラブ。

 カイン→主人公の母方の実家の跡取り息子。青髪でやんちゃなガキ大将。


 読んでくださり、ありがとうございました。合掌。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ