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異世界転生変奏曲~転生したので剣と魔法を極めます~  作者: Moscow mule
第四章 学校へ行こう・三角関係編
30/250

第30話:宣戦布告

 ヒナ視点です。

 

 少し短いです。というか、前回が長かった気がします。

 区切りの関係で、どうしても長い回と短い回のばらつきがあることをお許しください。

 ● ● ヒナ視点 ● ●


「アル君、お昼一緒に食べよ!」


 最近、エトナ・ウイン・ドミトリウスはよくヒナ達の教室で昼を一緒に取る。


 別に悪いことではないのだが、このことは最近のヒナを悩ますタネの一つではあった。


 まずこのエトナという少女が好意を抱く少年、アルトリウスは、ヒナの隣の席である。


 ヒナはアルトリウスの右隣の席であり、大抵自分の席で昼食を取るため、アルトリウスの右側は埋まっていることになる。


 しかし、アルトリウスの左側の女子は何故か毎回他の教室に食べに行っているようで、必ずアルトリウスの左側は空く。


 なにか根回しがされてそうな偶然だが、とにかく、このエトナという少女はアルトリウスの左側で昼食を取るのだ。


「それでね、この間行った雑貨屋さんでね・・・・」


 エトナはアルトリウスに日頃の生活の話をよくする。

 アルトリウスは相槌を打ちつつ、時折質問や意見を言ったりしている。


 別にそれだけならいい。

 隣でバカップルが2人で話しているだけだ。


 しかし、アルトリウスは時々こちらにも話を振ってくるのだ。


「そうか・・・・ヒナはどう思う?」


 いや、巻き込まないで欲しい。


 確かに最近自分は彼にヒナと呼ばれ、彼のことをアルトリウスと呼ぶ仲ではある。


 でも、それを聞いてあからさまに、左側にいる少女の顔が怒気に包まれるのがわからないのだろうか。


「さあー? 私はちょっとそういう流行には疎いから、わからないわね」


 ヒナは大抵こういう返事をして短く切る事にしている。


 触らぬ神に祟りなし。

 とはまさにこの事だろう。


 しかし怒りの少女は引き下がらないことが多い。


「ちょっとミロティックさん、いつの間にアル君と仲良くなったんですかー?」


 このようにいつも突っかかってくる有様だ。


 流石にここまで言われると、ヒナも反論せずにはいられない。


「あら、一応それなりの付き合いの長さのつもりだけど、それとも、なに? アルトリウスと会話するにはいちいちドミトリウスさんの許可がなければならないのかしら?」


「――――言うじゃない・・・・・ちょっと成績がいいからって…」


「成績は関係ないでしょう?」


「まあまあ2人とも落ち着いて・・・・」


 こんな感じで、昼休憩をまるごと嫌味の言い合いに費やしてしまう時もある。


 ● ● ● ●


「ていうか、バリアシオン君って、エトナちゃんと付き合ってるわけじゃなかったんだね」


 この間、クラスの友人にこんなことを言われた。


「そうみたいね、でもよく見ると結構一方的なものよ?」


「そうなんだ。でもバリアシオン君って入学当初すごい人気だったの知ってる?」


「いや、知らないけど・・・・・」


「そっか、ヒナはあんまりそういうこと興味なかったもんね・・・・」


「わ、悪かったわね」


「ううん、いいのいいの」


 友人は笑うと続ける。


「顔もすごいイケメンだし、運動も勉強も魔法も完璧で、でもそれを鼻にかけなくて、社交性もあって、優しい。まさにみんなの憧れってね」


「まあ、そうね」


 社交性なんてあったかしら? と思いつつ、相手の話を遮らないように相槌を打つ。


「でも、その人気の割にバリアシオン君に告白しようって子は少ないの。なんでだと思う?」


「それこそドミトリウスさんでしょ?」


 それくらいらわかるわよ、と言った感じでヒナは答える。


「ふふ、そう、正解。エトナちゃんってすごく可愛いじゃない? 学年でも3本の指に入るくらい。そんな子が、いつも周りにいるような男子にはみんな手が出ないのよ」


「そんな裏話が・・・・」


「まあ、裏でファンクラブとかはいっぱいあるんだけどね」


「ファンクラブ⁉︎」


 ファンクラブがあるなんて初知りだ。


「でも、みんなでよく話してるのよ? そんなバリアシオン君に平気で話しかけて、仲良くできるヒナは凄いって! 最近では昼食の時間に、エトナちゃんとバリアシオン君を巡ってデットヒートを繰り広げているじゃない?」


「いや、デットヒートって・・・・完全にバカにしてるじゃないの!」


「大丈夫、ヒナも十分可愛いわ! 女子力だと負けてそうだけど、その天才的な頭脳でエトナちゃんなんて粉砕しちゃいなさい!」


「そういう問題じゃなくて!」


 ヒナは自分の気持ちは自覚していた。


 自分はアルトリウスに好意を抱いている。


 何度も考えたがこれはまぎれもない事実だと思う。


 だから、アルトリウスとエトナが、毎日隣で話すというのは、気にしないようにしてもやはり気になってしまうことではあった。


 友人の言うところのデットヒートを繰り広げてしまうのも、この気持ちが自分の根底にあるからだろう。


 正直、ヒナはエトナのことが羨ましかった。


 自分の気持ちを隠さず、真正面から好きな人に当たっていく様。


 アルトリウスに何度か聞いたことがある。

 エトナは何度かアルトリウスに告白しているのだ。

 アルトリウスは今は特定の相手を作る気がないと断ったそうだ。


 でもエトナは、

 じゃあアルトリウスが特定の相手を作りたいと思った時に、その相手が自分であるように頑張る。

 と言って、今でもアプローチを続けているらしい。


 凄いことだと思う。


 振られてもめげず、自分の気持ちに正直になる。

 その一途さはヒナにとっては眩しかった。


 ヒナには自信がない。


 自分は可愛くもなければ、女の子らしくもない。


 取り柄は勉強や魔法だと自負していたが、それもアルトリウスには遠く及ばない。


 女としてのあれこれも、姉を見て逆に自分から遠ざけてきた節がある。


 こんな自分がアルトリウスに似合うはずがない。


 ――――それに、自分はもうすぐこの学校を離れる事になっている。


 先日、属州都市アウローラの総督を務める祖父から呼び出しがあった。


 家族全員アウローラに来いとのこと。


 自分1人だけ断ることはできない。


 ● ● ● ●


 そう悩んでいた時分。


 ―――偶然。本当に偶然、カフェで彼女と出会った。


 テスト勉強をしようと思い、寄ったカフェだ。


 エトナ・ウイン・ドミトリウスはそのカフェで1人、勉強をしていた。


 自分でも何を考えていたかはわからないが、ヒナは声をかけてしまった。


「――――ご一緒していい?」


「―――⁉︎」


 エトナは一瞬ギョッとした顔をしたが、すぐに澄まし顔に戻ると、


「どうぞ」


 と言って机の前側を空けた。


「ありがとう」


 そう言ってヒナは椅子に座る。


「・・・・・」


 しばらくはお互い無言で勉強をしていた。


 すると、唐突にエトナがこちらに話しかけてきた。


「なにか用でもあるの?」


 あからさまではないが、少し警戒した声だ。

 まあ当然ではあるか。


「・・・・・聞きたいことがあったのよ」


 ヒナは続ける。


「なんでそんなに、アルトリウスのことを想っているのかなって」


 それを聞いてエトナは目を丸くして、少し考えると話し始めた。


「一目惚れ。3歳の時に初めて会って。それ以来ずーっと好き」


 一目惚れ。ヒナには経験のないものだ。


「でも、これからも一生好きでいるんだろうなって思ったのは割と最近」


 エトナは思い返すように、つらつらと話し始めた。


「ちょっと前、アル君がなかなか振り向いてくれないからって、別の男の子と付き合ったの」


 ―――あーあれか。

 

 とヒナは思い出す。


 エトナが他学年の男子と二人で歩いている場面と、何度か廊下ですれ違った。


 今思うと、その時期のアルトリウスは元気がなかったような気がする。


「でも、それでアル君を困らせちゃって。やっぱり自分の気持ちに嘘はつけないんだって。そう思ったの」


 エトナはヒナの顔を、正面から見て言う。

 まるで宣戦布告だと言うが如く。


「私はアル君が好き、これからもずっと。この気持ちに背くようなこと、私は二度としない」


 綺麗だった。

 エトナは真剣な眼差しだ。


 きっと彼女は真っ直ぐだ。


 どんなことがあろうと彼女はアルトリウスを想い続けるのだろう。


 そしてエトナはヒナに問う。


「あなたは? こんなことを聞いて、アル君のこと好きじゃないの?」


 ヒナは考える。

 なんて答えよう。


 今まで口に出したことはなかった。


 この気持ちが、本当になるのが怖かった。

 アルトリウスにバレるのが嫌だった。


 でも、嘘をつくのはもっと嫌だった。


 自分の目の前にいる少女は真っ直ぐだ。


 気持ちを偽ることなく、正直に自分の質問に答えてくれた。


 ならば自分も真っ直ぐに、正面から答えるべきじゃないだろうか?


「私は―――」


 言おう。好きだと。


 尊敬でもない。

 憧れでもない。

 好きだと。


 エトナはじっと待っている。

 真っ直ぐな瞳を向けながら、ヒナが答えるのを待っている。


「アルトリウスのことが――――」


 一呼吸。

 ヒナは覚悟を決めた。


「私はアルトリウスの事が好き」


 ――――言った。


 エトナは一瞬目を見開いたが。


「―――そう」


 と、一言。

 そして満足したと言う感じで勉強に戻った。


 ヒナは何か小言、というか文句を言われると思っていた。

 また、昼休憩の口喧嘩の始まりかな、などと思っていたが、拍子抜けであった。


 認めてくれたのだろうか。


 自分がアルトリウスを好きであることを。


 ● ● ● ●


 次の日、ヒナはある決意のもと、アルトリウスに声をかけた。


「アルトリウス!! 学年末テストの総合点で勝負よ!!!」


「・・・ああ、もちろん受けて立つが、なんか今回はやけに気合が入っていないか?」


 アルトリウスは、もう挑まれるのは慣れっこだと言う感じで受け答える。


「そう、今回はルールを付けたそうと思ったのよ」


「ルール?」


「負けた方は勝った方の言うことを、何でも一つ聞くってルールよ!」


「ほう、なんでもひとつ、ね・・・・。俺は構わないが、ヒナはいいのか?」


「愚問ね」


 ヒナの決意は固い。


「今回は絶対に私が勝つわ!」


 ヒナはアルトリウスに、最後の勝負を挑むことにした。




 宣言通り、暫くはヒナの独壇場です。


 読んでくださり、ありがとうございました。合掌。

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