表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生変奏曲~転生したので剣と魔法を極めます~  作者: Moscow mule
第三章 学校へ行こう・出会い編
20/250

第20話:エトナの心

 とりあえず20話まで来ました!

 思ったよりも時間かかりました。

 要らない設定追加したり、変なこだわり見せたりで・・・。


 今回はエトナ回。


● ● エトナ視点 ● ●


 今日も授業が終わり、先輩との待ち合わせに向かう。


 ―――つまんないな。


 エトナは正直、告白を承諾した事を後悔していた。


 別に先輩が悪いわけではないと思う。


 かっこいいし、優しいし、こちらを気遣ってくれる。


 それでもエトナは物足りなかった。


 ―――好きでもない相手だから?


 心の中で自問自答する。


 先輩に呼び出され、自分のことが好きだと言われた。

 素直に嬉しかったし、ドキドキもした。

 その気持ちがなんなのかわからなかったので、考えさせて欲しいと言った。


 彼は笑顔で了承してくれた。


 とても良い人だと思う。


 しかし、アルトリウスに相談しようと彼の元に向かうと、彼は違う女の子を連れていた。

 可愛らしくて、頭の良さそうな子だった。


 その子を家に招待するから、自分の相手はできないという。


 ―――ひどいよ、私には手を出さないくせに!


 そう思うと怒りがこみ上げてきて、対抗心からかそのまま先輩の元に行って告白の返事をしてしまった。


 ―――別に先輩が嫌いというわけじゃない。


 むしろ好感を持っている。

 何度も言うが、良い人だし、話してて楽しい。


 でもアルトリウスが好きかと言われると、


 ―――好き。


 エトナは未だにそう断言できてしまうのだった。


 対抗心。

 嫉妬。

 そんなもので喧嘩して、好きでもない人と付き合って、アルトリウスと気まずくなった。


 そんな状況を作り出してしまった自分自身を、なにより恨めしく思う。


 もうすぐ期末テストだというのに、アルトリウスと先輩に対する申し訳なさで頭がいっぱいだった。


 思えばいつから自分はこんなにアルトリウスのことが好きなのだろうか。


 エトナは昔の記憶を思い出す。



● ● ● ●


 3歳くらいの頃。


 男の子はみんなバカだった。


 カインくんなどは特にそうだったと思う。


 毎日パパやママの言いつけを破っては、行っては行けない場所に行き、やってはいけないことをして、きつく怒られる。

 それを毎日のように繰り返すのだ。


「カインくんすごーい!!」


 しかし、周りの女友達は、そんなカインくんたちに憧れていた。

 無鉄砲で、ガキ大将で、よく他の子をいじめるが、どうにも憎めないキャラクター。


 みんな彼のような人に憧れていた。


 私も最初はそんな1人だった。


 でも彼に出会ってしまった。


 どこかの大貴族の誕生パーティー。

 多くの貴族の子供達が集まった。


「よし! みんな行くぞ!!」


 カインくんはそう言ってみんなを庭に連れ出した。


 私もみんなについていった。


 みんなは庭の池の魚や、近くを飛んでるトンボを追いかけて遊んでいた。


 でも隅っこにある小さなベンチで、1人でポツンと本を読んでいる男の子がいた。


 ブラウンの髪は綺麗に切りそろえられていて、お坊ちゃんみたいな感じがしたが、その目はとても凛々しかったと思う。


 ―――やけにかっこいい人だな。


 背丈は自分たちとそう変わらないが、ところどころの仕草が、とても大人びて見える。


 すると、彼に気付いたカインくんが彼に近づいていた。


「おい! 何読んでんだよ!」


 遊びに参加しない事が気にくわなかったのだろう。

 カインくんは大きな声で責める様に言った。


 少年は、カインくんを一瞥し、少し面倒そうに答えた。


「・・・・・・『ブライアンの大砂丘探検記』だよ」


「うそつけ! そんな分厚い本、こどもが読めるもんか!」


 そういうとカインくんは彼から本を取り上げると、池の方に放り投げてしまった。


 カインくんは、どうだみたか! という顔で彼にふんぞり返っている。


「俺は君に何かしたつもりはないんだが、なぜこのようなことをするんだい?」


 しかし、彼は特に怒るでもなく、カインくんに語りかけていた。


「そんなの、お前が本を読めるって嘘をついたからじゃないか!」


 カインくんが、どうだ! という顔でまた踏ん反り返る。


「俺が本を読める読めないのと、君が他人の本を勝手に捨てたことに、なんの関係があるのかな?」


 彼はあくまで悠然に座ったままカインくんに相対する。


「う、うるさい! 嘘つきは悪いやつだから何されてもいいんだ!」


「嘘などついていないんだがな・・・・。まあいいか」


 少年は一息つくと、


「とにかく、あれは俺のもので、ないと困る。君は人を困らせたんだ。せめて謝罪くらいはするべきではないか?」


 どこか、自信と余裕の感じられる言葉を放った。


 そんな彼に、カインくんは舌を出す。


「へっへーんだ! 俺は絶対悪くないから謝らないもんねー! 言うこと聞かせたいなら俺に勝ってからにしな!」


「はぁー・・・・いいだろう。何で勝負すればいい?」


 ため息をつきながら、座っていた少年はこれまた悠然に立ち上がった。


「いい度胸だ! じゃあ――――あの木まで走って先にたどり着いた方の勝ちだ!!」


 そう言いながらカインくんは一目散に走り出した。


 思えば、この日からカインくんの無謀な挑戦は始まった気がする。


 彼は走り出すと、ものすごい速さでカインくんを抜き去り、勝利した。


「ご、ごめんなさい・・・・」


 勝負に勝ち、カインくんを謝らせた彼は、


「うん、遊ぶのはいいが、あんまり人に迷惑はかけないように」


 そういうと1人、部屋の中へ戻っていった。


 私は、その後ろ姿を凝視していた。目線が離せない。胸がドキドキする。


 多分、一目惚れだった。

 そして二目惚れでもあった。


 運良く彼のパパは私のパパと仲が良く、それ以降、頻繁に会うことができるようになった。

 カインくんは邪魔だったけど。


 アルトリウスという彼のことを、接すれば接するほど、知れば知るほど好きになった。


 アルくんは本当に本も読めたし、誰よりも運動ができたし、博識で、知的でかっこよかった。


 私はこの人と結婚する!

 そう決めていた。


 でもアルくんはどう思っているんだろうか。


 7歳のときクッキーのお礼にキスを頼んでみた。


 アルくんは特定の誰かを作らない、みたいな事をよく言っていたが、その日はほっぺにチューをしてくれた。


 ものすごく恥ずかしくて、心臓が張り裂けそうなほどドキドキして、思わず逃げてしまった。


 昨日先輩に手を握られた。

 あったかくて心地のいい手だったけど、ドキドキはしなかった。


 廊下でアルくんとすれ違うとき、アルくんの傍に他の子がいると、胸が苦しかった。


 私はアルくんのことが大好きなんだ。


● ● ● ●


 先輩がやってきた。


「やあ、遅くなっちゃったかな?」


「いえ、私の授業が早く終わっただけです」


「そっか」


「先輩、あの・・・・・私―――」


 言おう。先輩に。自分の気持ちに嘘はつきたくない。


「ごめんなさい。私・・・・他に好きな人がいます」


「・・・・・・」


少々の沈黙の後、先輩は優しく「そうだと思ってたよ」と軽くお辞儀をして、


「短い間だったけどありがとう」


 と残して立ち去っていった。

 本当にいい人だと思う。

 悪い事をしてしまった。


 そして今、エトナは校門にいる。


 カインがアルトリウスからの手紙を持ってきた。

 会って話したい、とのこと。


 この時間になると下級生は下校し、上級生はゼミが始まる時間なので、校門にしてはやけに人通りが少ない。


 ――――それにしても、字、綺麗だなぁ。


 エトナは手紙を眺める。

 エトナはまだまだ字は練習中なので誰かに手紙を書くなど恥ずかしくてできない。


 やっぱり、アルくんはすごい。


「やあ」


 そう思っていると、アルトリウスが到着した。


「すまない、掃除当番が長引いてしまってね」


 アルトリウスは急いで教室から来たようで多少鼻息荒く言葉を発する。


「うん、大丈夫だよ」


「そうか、じゃあ少し歩かないか?」


 2人は学校の校庭を歩きだした。


 校庭にも人影はなく、遠くの方で野外系のゼミが活動をしている。


 校庭のほとりに、小さなベンチがあったので、2人は並んで座った。


 しばらくは無言だったが、アルトリウスが意を決したように話し始める。


「――――俺にとってエトナは・・・・とても大切な存在だ」


 真面目な顔だ。


「・・・うん」


 エトナは静かに相槌を打つ。


「エトナが俺に好意を向けてくれている、と言うのは分かっているつもりだ。だから、最近俺がミロティック―――ああ、この間の女子だが。他の子と仲良くする事に思うところがあるのもわかる」


「・・・うん」


「でも、普段から言っているように、俺にはまだ特定の相手をつくる気はない」


 アルくんは空を見上げている。


「かと言って、このままエトナと気まずく過ごしていくのも嫌だ」


「・・・うん」


 それはエトナにとっても嫌なことだ。

 前みたいに毎日会って、いっぱい話したい。


「俺はわがままだろうか。自分の立場を棚に上げて、エトナの気持ちを蔑ろにしているんじゃないか。このところそればかり考えていてね」


「⁉︎」


 エトナは驚いた。


 アルトリウスはそこまで考えていたのだ。


 言い方を変えればただ単なる自分の一方的な片思いなのに。


 その気はないからと拒絶すればいいのに。


 ――――いや、拒絶してしまったのは私だ。


 ささいな嫉妬で、大好きな人を困らせてしまった。


 彼は歩み寄ろうとしていたはずなのに。


 そう思うと、エトナの瞳からは涙がポロポロこぼれていた。


「わ、どうした、なにかいけない事言ったか? 俺?」


 珍しくアルトリウスが動揺している。

 彼も酷い顔だった。


 返事をしなければならない。


「えぐっ・・・アルくん。ぐすっ・・・・私・・・・アルくんの事ね・・・えぐっ・・・大好きだよ」


「―――ああ」


「だからね・・・・ぐすん・・・・アルくん困らせるようなことして・・・・ごめんなさい・・・・えぐっ」


 涙が止まらない。


 悔しくて?


 ちがう。


 悲しくて?


 ちがう。


 嬉しくて?


 全然ちがう。


 ただ情けなかった。


 自分はアルトリウスに甘えていただけなのだ。


「いいんだ、エトナ。俺こそ・・・・すまなかったよ」


 そう言ってアルトリウスはエトナの手を握った。


 その手はあたたかくて。


 エトナは心臓が張り裂けそうなほどドキドキした。


● ● ● ●


 こうしてエトナとアルトリウスは元の関係に戻った。


 今後のため、エトナは3つ、自分に誓いを立てた。


 アルくんに他の女の子が寄ってきても、アルくんを責めない。


 例え冗談でもアルくん以外の男の子になんて見向きもしない。


 そして――――絶対にアルくんを口説き落とす!


 この誓いが果たされるかわかるのは、まだまだ先の事である。




 アルトリウスが、女の子として一番意識しているのはエトナです。

 やっぱりストレートに気持ちを伝えることは重要ですね。


 読んでくださり、ありがとうございました。合掌。


 

 


 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 他の方も書いてるけど間違いなく8歳の恋愛ではない。マセて恋愛してきた14.5歳の恋愛でようやくってレベルだと思います。
[一言] 8歳児がこんな恋愛をやってるのはすごい。 ませてるとかいうレベルじゃなく大人だし、先輩も地球でいうところの小学校高学年だから、この世界の子供成長早すぎ。 アルもうかうかしてられないと思った。…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ