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天衣無縫なお嬢様  作者: 眠熊猫
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穏やかな生活に少し甘味を

小さな変化はありますが、穏やかで幸せな日々がここ数年続いています。

絵本や物語の執筆も順調ですし作曲のペースは落ちましたが(年に数曲くらいになりました)、作曲家が増えたので私の需要が減ったというのが真相なので問題ありません。

マイエルトの音楽学校も開校して丸二年。入学希望者が他領からも相当来て、募集人員の三倍から五倍だそうです。近く学生寮を増築して教師を増やす計画を立てているとか。

演劇科も三年後には発足するとのこと。楽しみです。


今日はアキテーヌン領に逗留中の私は近くの村へ視察…という名目で遊びに来ています。

村の畑を見れば小麦がそろそろ色づく頃。リンゴや梨の収穫が始まり出しています。カボチャやサツマイモの取入れはとうに終わっていました。

余剰分のカボチャやサツマイモは茹で干しにして保存するのでその準備も。


顔見知りの人たちとほんの少し立ち話。

今年のカボチャもサツマイモも出来が良くて甘いものが出来たとか。そのまま蒸しただけでも子どもの(大人も)オヤツになる、そう嬉しそうに笑っていました。

寒いといってもアキテーヌン領は雪が降らないので農作業や冬の内職や薪取りなどの仕事が結構あります。

それで冬は疲れやすくて甘いものが食べたくなるけれどお菓子は高価だから、焼いた干しイモや戻して茹でた干しカボチャのマッシュとかが代わりになるから助かるとも。

干し柿は商品なので農家が食べる分はいわば不良品。保ちが悪いから早く食べてしまうのです。


甘いお菓子が未だに高価なのはハチミツが依然高価なせいです。あと貴族がほぼ独占してしまうせい。まだまだ需要を供給が満たせないのです。

それで庶民にはサツマイモやカボチャを使った食べ物が人気です。マッシュとかパイとか。

…テンサイがあれば砂糖が作れるんですけど。

ハチミツは蜂が上手く巣を作れなかったり、熊に巣箱を壊されたりといったハプニングが起きると生産量に影響してしまいます。それでなかなか思い通りに増産が出来ないのです。

まあテンサイだって作物ですから上手くいくとは限りませんが。


ある日、いつものようにエイを館の庭で遊ばせる為に魔法の蝶を作って飛ばしました。

楽しそうに戯れるエイを見守っている時、ふいに思いつきました。

魔法の蝶にテンサイを探してもらえないかしら?

それで人目につかないように(鳥とかにも狙われないように)透明な蝶を二十ばかり作って飛ばしてみました。

ごく僅かな魔力で作った蝶ではありますが、三日や四日間程度なら飛び続けても大丈夫。私が眠ると活動を休止しますが消えませんし。

エキスの代わりに砂糖を作れる植物の種を取って来るよう命じてあります。一匹の身体に十粒くらいは貯められるようにしておきました。

これで戻って来なければ仕方ない、諦めることにします。


そして二日後の午後遅くに七匹が、その翌日に残りの十三匹が戻って来ました。

そして二十匹全てが種を八個から十個、持って帰りました。本当にテンサイなのかは収穫してみないとわかりませんけれど、試しに栽培するには充分です。

一応鑑定してみると確かにテンサイに似た植物の種でした。根に糖分を貯めるのだそうです。寒いと糖分をより多く貯めるので、いつ種を蒔いても砂糖は作れますが秋に蒔いて春に収穫するのが一番出来上がる砂糖の量が多いそうです。


上手く栽培出来ますように。祈りながら庭師と一緒に種を蒔きました。

エイが不思議そうにポシェットから顔を出して

「新しい遊び?」

と訊いてきたので

「そうじゃないのよ。後でまた庭で遊びましょうね?」

と応えました。

今日は蝶ではなく、トンボにしてみようかしら?

…エイはトンボより蝶の方が好きでした。だからすぐに蝶に切り替えて遊びました。

今日は十分くらい遊ぶとポシェットに自分から入って寝てしまいましたけれど。起きたらご飯とお水を用意しますからね。




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