私の新しい家族
どこの領地、どこの村にも犬や猫がいます。
家畜の放牧に犬は欠かせませんし、ネズミ対策に猫は必要です。
ネズミは家にも入って来ますから猫を家の中で飼っている人も納屋で飼っている家もあります。
勿論出入りを自由にさせている家が殆どだったりします。
愛玩犬ではありませんから犬は中型犬。
前世のシェパードをひと回りかふた回り小さくした感じです。柴犬みたいに巻き尾の子もいます。
色は様々な茶色。お腹が白かったり背中が黒かったりします。
猫は日本猫みたい?純血種っぽい猫は見たことがありません。シッポの長い子が多くて、色はキジから三毛まで。理由はわかりませんが真っ白と真っ黒の猫が人気です。
それでこの前、仔猫(といっても生後半年くらい)を
「よかったらもらってくれませんか?」
とアキテーヌン領の庭師リックから言われました。
余剰穀物をしまっておく為の倉で猫が子どもを生んだのですが、この子は体が小さくて他の仔猫からいじめられているのだそうです。体も弱そうなので去勢済みのオスでした(弱い子孫が生まれないように体が小さいオスは去勢することが多いのです)。
白に茶のブチがある可愛い猫です。毛並みが他の猫より短めで寒さにも弱そうだから…と言われました。
私は猫を抱きとって話しかけてみました。
「私の仔になる?私はしょっ中旅行をするからついて来てもらうことになるけど。」
「え?なんではなせるの?ぼくのいうこともわかる?やさしくしてくれるなら…ほかのねこたちにいじめられないならいっしょにいてほしいなあ。」
「じゃあよろしくね。私はレティシア。親しい人はレティって呼ぶわ。あなたの名前は…エイ。どう?」
「ぼくのなまえ?エイ?」
「そう。嫌?」
「ううん。ありがとう!」
こうして新しい家族が出来ました。
私の部屋に猫トイレと水の容器とエサ皿を置いて。猫のベッドになるように浅い木箱に布を何枚か敷いて。
「エイ、あなたのトイレと水とご飯とベッドよ。それからあなたを運べるようなバッグやカゴを用意するから、旅行中はそこに入ってね。」
「うん。でも、ぼくがこわいよっていったらだっこしてね。」
「約束するわ。大丈夫よ。」
エイは長距離を移動する間はトイレつきのケージの中でおとなしくしてくれました。馬車の中に置くので時々はケージから出して猫じゃらし(私が魔法で出した蝶です。こんな使い方も出来ました)で遊んだりしますけれど。
そうして行く先々の私の部屋でくつろいで。
冬は暖炉の前に敷いてある毛皮のマットの上。夏は窓に近い籐椅子の上がエイの定位置になりました。
「でもね、いちばんすきなのはレティのひざのうえ。」
そう言ってくれるエイが大好きです!
宿を取る時も同室を許してくれるところを選びます。
外に出る時だけ首にリボンを結んで(色はその時の気分で赤だったり青だったり黄色だったり)。エイ専用のショルダーバッグにエイを入れて出かけます。
そして安全だと思うところで地面に下ろして遊ばせます。大抵は館の庭になりますけど。
エイは怖がりで、私が見えなくなると不安になりますし、ネズミも上手く取れませんが、可愛いからお釣りが来ます。
食べるものは私が用意しますからね!
茹でた鶏肉とレバーに山羊のミルクを少しかけたものと、茹でた小魚が大好きなエイ。マルブルフにいると魚を食べさせやすいので(勿論お肉もありますから)またマルブルフ領にいる時間が増えました。
特にマルブルフ領内のドルク男爵領(農場)ではエイは大歓迎でした。猫はいるだけでネズミ除けになるのだそうです。
既に農場に住んでいる猫の家族がいたので私が
「この子、エイっていいます。恐がりだからあなたたちにはあまり近付かないと思うけれどよろしくね。」
と言いますと
「この子、弱そうね…あ、去勢してるの?ならば末っ子扱いになるけど、それでもいいかしら?」
と言われました。エイも
「んー。あのね、ぼくもこわいの。あなたたちがかまわないでくれるとたすかる。」
ですって。無理強いは出来ないので見かけたら互いに距離を置くことになりました。
私がエイを猫可愛がりしているのを見て、やや呆れたマルブルフ元領主ルーリック様と現領主ソーサ様に
「エイが魚好きならウチで預かってもいいよ。」
と言われましたけれど、エイも私も一緒にいたいからと断りました。魚ばかりでも栄養が偏りそうですし(ソーサ様たちに任せたらそうなりそうな予感がするのです)。
たまにエイは薬草をかじったりします。毛玉吐きの為の猫草とは違い(ブラッシングは毎日していますが毛づくろいは猫の習性?ですから毛玉はそれなりに溜まります)薬草は平たい葉なので薬効を求めて食べるみたい。エイに訊いたら
「なんとなくたべたいなぁとおもうときがあるの」
だそうです。だから散歩も欠かせません。
清潔魔法は日に一、二回かけてます。
エイ、シッポが二つに分かれてももっと沢山に分かれてもいいから長生きしてね。
そう願いながらエイを撫でます。
短い毛並みのせいで寒さに弱い?大体の猫は寒いの嫌いだよね。寒くなったら暖かい部屋を用意するから大丈夫だよ。私の布団の中に入っても良いし。
大切にするから。一緒にいてね。




