表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天衣無縫なお嬢様  作者: 眠熊猫
71/79

マイエルトの皆で相談

ディスク式オルゴールはディスクを取り替えれば様々な曲をかけることが出来ます。

ディスクはプレスで量産が可能ですし、仕組み自体は簡単な構造です。ディスクを回転させる部分以外は。

前世ではゼンマイでした。でもこちらには魔法がありますから魔法を利用しても良いのでは?と思います。

また一回で使い切りになりますが「自動演奏」の魔法陣の上に楽器(大きさ的にウクレレか小さな竪琴)を乗せて演奏することも出来そうです。


そんなことをマイエルト領主であるワーフェス義兄様と妻であるキャシー姉様、音楽師のリリオフさん、魔法師のサリエさんに相談しました。

「魔石に回転する魔法を込めて、魔力を注ぐとそのように動かせるようにするのは可能です。

ディスクを回転させて絃を弾くようにするオルゴール?は試作しやすそうですね。」

「また魔法陣を使う自動演奏も基本の魔法陣は難しくありません。魔法陣の上に楽譜と竪琴を乗せて発動するようにしたらもっと簡単です。その場合消失するのは魔法陣だけで、楽譜と楽器は繰り返し使えます。ウクレレより竪琴の方が向いています。ただ、演奏時間は十四、五分くらいが限度かと。」

「竪琴は寝かせると音があまり響きません。立て掛けられるような専用の台があると良いですね。」

「あの、短いフレーズだけならばシリンダー型のオルゴールでも…」

「曲も固定されてほんのワンフレーズ、一分あるかないかだけの間を繰り返す?オルゴール?うーん、はたして需要があるかな?」

「でもそれなら値段を抑えられるので平民でも買えます。また外箱に凝れば貴族の贈答品になるかもしれません。」

「あの、シリンダー型オルゴールとか魔法陣とかならば劇場で販売してもよろしいかと。その日上演されている演目に使われた曲のものを楽譜と一緒に売れば良い土産になりますよ。」

「とりあえず試作して反応を見ることにしよう。ディスクオルゴールならうちの館に置いても良いし。アキテーヌン領や王宮に贈っても良いしね。ディスクは一応数種類作って様子を見よう。」

「シリンダー型のオルゴールは子ども部屋に置いても良いかもしれません。」

「子守歌や祈りの歌にすれば気持ちが落ち着くかもしれませんね。寝かしつけるのには演奏時間があまり長くない方が良いかも。」


そんなわけで職人さん(家具職人さんや金具職人さん、鍛冶屋さんなど)に依頼して試作した品々はどれも好評でした。

ディスクオルゴールの本体は貴族向けはオーダーメイド。そこそこ高価ですが高級感があります(貴族は金や宝石を嵌め込んだ飾りをつけたがりました)。

また大きな商店や飲食店は量産型の(受注製作ではありますけれど)ごくシンプルなディスクオルゴールを置いてリクエストを募ったりしています。

それが好評で、オルゴールのあるお店の売り上げは他のお店の数倍だそうです。


ディスクは今のところ月に一、二枚新曲が発売されていて、まだ本体を購入していない人も本体をいつか買えた時のためにディスクだけ買って行くことがあるそうです。

また自動演奏の魔法陣を使って歌ったり踊ったりする辻芸人も現れて、村や町の祭りが華やかになったと村長や町長に喜ばれました。


やはりこの世界には盆踊りやフォークダンスに当たるものはありませんでした。

貴族のダンスは二人一組で踊るものですし…

輪になって踊るのも楽しいんですけどね…


貴族の子弟はピアノや竪琴、ギターの練習の補助としてディスクオルゴールや自動演奏の魔法陣を使い始めました。無論ダンスのレッスンにも。


また小さなシリンダー型オルゴールは部屋の飾りとしても人気です。

子守歌のオルゴールは家族に人気があり、恋歌のオルゴールはプロポーズの贈り物の定番になりました。

また、お芝居やオペレッタの観劇の土産品として楽譜と並ぶ定番になり、劇団にとって新しい収入源となったそうです。


それからしばらくして。

「音楽学校を設立する許可が王から下りたよ。開校は三年後を予定してる。作曲科と演奏科と声楽科を作るつもりなんだ。」

とワーフェス義兄様が仰いました。それにリリオフさんが

「演劇科があってもよろしいかと。講師は領主が後見なさっている劇団の方に依頼なされば…」

と提案しました。私はそれを聞いて

「科として独立しなくても短い期間の特別講座として参加者を募ってみても良いですね!」

と思わず言ってしまいました。ワーフェス義兄様は

「ああ、五日から十日間くらいなら興行の邪魔にならないかもしれない。うちが補助している劇団は四つあるから、年に四回、順繰りに芝居についての講議や実演の指導をしてもらうように話してみるか。」

とお応えなさいました。 まだ三年ありますから準備出来ると思います。


住むのなら音楽が聞こえる町にしなさい。音楽を愛する者に悪人はいない。

という格言は前世のドイツのものでしたかしら?

でも、本当にマイエルトがそんな領地になったら嬉しいです。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ