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天衣無縫なお嬢様  作者: 眠熊猫
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私は私

クワ村から帰宅したその夜から。私は熱を出して寝込みました。時間の感覚も今は無いのでどのくらい経ったか定かではありません。そうして。

「そんなに高い熱じゃない。水やジュース、スープやお粥を摂らせてもらっているから身体も大丈夫だよ。ごめんね。僕のせいで君を困らせて。」

夢の中にしては現実的で、でも何も無い空間(まるで雲の中にいるよう。寒くも暑くもありません。)で私は白い雲のようなフカフカした椅子に座っていました。

そして私の正面には白いテーブルがあって、そこにはお茶の入ったカップとソーサーが置かれています。このお茶を少しずつで良いから飲んで欲しい、とテーブルの向こう側にいる神さまという方に言われて飲んでいます。

「ええと、私を困らせてとおっしゃいましたが…」

「普通に話して。普通に。君は別の世界に住んでいた頃の記憶を持って生まれる筈だった。その世界はこちらより色々な面で進んでいるところでね。魔法は無いんだけど、その分沢山工夫をしたみたいなんだ。君にはその記憶や知識を活かしてこちらの世界に役立てて欲しかったんだよ。」

「はあ。」

「ところが君の記憶が覚醒するのが予定より早くて。どうやら君レティシアと前世の君…盛元礼香はすごく相性が良かったらしい。礼香さんの魂は完全に君レティシアの魂に溶けているんだ。だから君は覚醒した自覚も無く、前世の知識を使えるし、使おうとした。」

「あ、ではアルパカとかカシミアとかって!」

「そう。こちらの世界にはいなかったり、すごく希少だったりする動物だ。名前も違うしね。」

「そんな風で私はあなたの役に立てますか?」

「うん。大丈夫。今君が飲んでいるのは前世の知識とこちらの物とを擦り合わせる為のものだ。僕の特製だよ。そうして君の今ここにいる魂と君の身体を結びつけ、身体に力を与えているものでもある。」

「ではこれを飲み終えたら…」

「君はスッキリして目覚めることが出来る。考えることも楽になる筈だ。」

「ありがとうございます。」

「礼を言うのは僕の方。こちらの世界は魔法があるせいか、文明の発達が遅れがちで、ちょっといびつなんだ。君がこの前、ゼロの概念を伝えてくれただろう?すごく助かった。君がこの世界に生まれて良かったと僕が思うほどに。僕は人に頼むには過ぎる願いを君に託した。だからせめて君が自由に生きられるように能力を与えたし、これからも君を見守るから。」

「はい。どうぞよろしくお願いいたします。」

私は飲み物を飲み終え、神さまと握手をしました。


「お嬢様、お目が覚めましたか?」

「エイダおはよう。私、随分眠っていましたか?」

「エイダ。お嬢様は私が見ております。ご主人様に報告を。」

「お願いします!」

「ラーナ、私…」

「心配いたしました。お嬢様は丸二日眠っていらしたのです。今は三日目の朝。朝食の少し前です。お起きになられますか?お身体に清潔魔法をかけても?」

「はい。起きられます。魔法もお願いします。」

ラーナは私に寝具ごと清潔魔法をかけて、私を着替えさせ、髪を整えてくれました。


朝食はお父さまたちといただきたい、と言うとラーナに殊の外喜ばれて。食堂に入ると、お父さまが私に大股で近づいて抱き上げてくださいました。

「もう良くなったか。うん。顔色も良いな。レティ、気分はどうだ?」

「もう大丈夫だと思います。私、お腹が空きました。」

私がそう答えるとお父さまとお母さまが笑い声を…あれ?声の数が多いような…私が周りを見てみるとそこには。

「ジーク兄さま!キャシー姉さま!バート兄さま!」

兄さまたちが皆いらっしゃるなんて!

「どうなさったのです?私が寝ている間に何か起こりましたか?」

「すごいことがあったんだよ。僕たちの可愛い妹がね、それは素敵なお手紙をくれたんだ。」

「それで私たち、大急ぎで帰って来たのよ。」

「大事な妹が大変なんだって言ってね。昨日の夕方に帰ったら、本当にお前が寝込んでいたから驚いた。」

皆で楽しく朝食をいただいた後。兄さまたちに抱っこされて、ご本を読んでもらって。姉さまに歌っていただいて、竪琴を教えてもらって。夢のように楽しい一日はあっという間に過ぎ、その日の夕方、お兄さまたちは学校に戻られました。

そうして私の中のレティと礼香も。やっとこの世界に落ち着いたようです。




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― 新着の感想 ―
[一言] お兄さん、お姉さんたちと久しぶりに楽しい時を過ごせて、良かったね。
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