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天衣無縫なお嬢様  作者: 眠熊猫
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新しい歌

アキテーヌン領主の館にもピアノが入りました。

しかも二台。

職人さんたちが私の為にと大工さんに頼んで私の部屋を広げて床の補強をしてくれて、ピアノを置いてくれたんです。

館のサロンのピアノは私を含めた領主の家族全員が楽しむもの(レッスンにも使います)ですが、私の部屋のピアノは私だけのものなのだそうです。

何だかとっても嬉しくて。

ジーク兄様にお礼を言うと

「職人たちがしたことだよ。」

と返事をされ、職人さんたちにお礼を言うと

「ギターとピアノという新しい楽器を考案して(ウクレレは小さいギターという認識です)、ピアノの設計図をくれたんだ。これくらいはお返ししないと。」

と言われてしまいました。でもこんなにしていただいて本当に良いのかしら?


ジーク兄様やサーラ義姉様、お父様お母様にも相談しました。

皆笑って

「レティの好きなようにすると良いよ。マイエルトはすっかり楽器と音楽で有名になった。新しい音楽を作ってもおかしくないから。」

そう仰いました。よし!


マイエルト領へ行きまして領主つきの音楽家リリオフさんに相談してみます。

「は?歌を複数の人で歌い分けるんですか?何の為に?合唱ではないのですね?」

「んーと。これを読んでいただけますか?」

「歌詞だけを読むのですね。…青い線で囲まれている部分と赤い線で囲まれている部分がありますが。」

「そうですね、とりあえず青い線のところをリリオフ様が読んでください。赤い線のところを私が読みます。」



今日は何て良い天気!気持ちも晴れ晴れする。

あらあちらから彼が来るわ。

今日も本当に素敵だこと。


鳥の声で目が覚めた。今日も良い日になりそうだ。

あ、いつも鶏の世話をしている娘さんだ。

笑顔が可愛いな。…



交代で歌詞を読み終えるとリリオフさんは目を輝かせました。

「レティシアさんこれは面白い!」

「二人で歌う方が良いでしょう?これは恋の歌ですけれど、例えば夫婦だったり親子だったり立場を変えても良いですし。コミカルな内容にしても楽しいと思います。」

「コミカル?」

「夫婦の他愛ない喧嘩とか友人同士の勘違いとか…」

「ああ、そういうことなら人数を増やしても良さそうですね。ソプラノとアルトとか、声を変えて掛け合わせるとわかりやすそうです。

…レティシア様、これは新しい音楽になります!領主様に進言しなくては。」


そうして。リリオフさんと私とキャシー姉様とでお芝居の台本とオペレッタ(短い歌劇)の楽譜をいくつか作りました。

そうして劇団と楽隊を幾つか立ち上げて稽古させて。

一年半くらい時間がかかりましたけれど、新しい試みにキャシー姉様もワーフェス義兄様もリリオフさんも熱心に取り組んでくださいました。

オペレッタはもちろんですが、お芝居には効果音とかバックミュージックが意外に大事なんです。

お芝居やオペレッタのレパートリーも必要ですしね。

そうこうするうちに劇団員の中に新しいお芝居の台本を書く人が一人二人出てきました。また楽隊の中には新しい曲や歌を作り始める人も。何だか将来が楽しみです!


やがてマイエルトの領都と領内の三つの宿場町にピアノを備えつけた劇場が建てられ、毎日お芝居かオペレッタか音楽会が開かれるようになりました。

もちろん、歌の殆どはリリオフさんの作詞作曲です。

お芝居の筋は私よりキャシー姉様の方が沢山考えてくださいました。

劇団や楽隊の人たちには初めのうちこそ領主の援助がありましたが、ほどなく入場料で生計が立てられるようになって独立。

旅に出て王都や他領の教会堂を借りて上演するようになりました。

それにつれて王都や他の領でも劇場が建ち、劇団や楽隊も増えました。

オペレッタやお芝居の演目もだんだん質が向上して数も増えて。

過去に私が書いた本が舞台化されることもあったり。

昼間の上演には子ども向けのお話を基にしたお芝居やオペレッタを演目に加えたりも。


また教会も神話や教訓話を独自に舞台化し始めました。神事が催される前の五日間、告知を兼ねての上演です。そちらもなかなかの評判になりました。

ここはテレビとか映画とかが無い世界ですもの。何かしら娯楽がなくてはね。


オペレッタやお芝居、音楽を学ぶ為の学校をワーフェス義兄様が王宮の許可を得てマイエルト領都であるマイエルトに作り「音楽領」の名をさらに高めることになったのは劇場が建ってから三年後のことになります。







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