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天衣無縫なお嬢様  作者: 眠熊猫
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神様の謝罪

「ごめん。」

多分、これは夢の中です。

いきなり現れた神様が私に頭を下げているんですけど。一体何事?

「君の前世が僕の世界よりずっと進んでるってわかってた。でも君が出産をためらうほどだったなんて…」

「謝らないで。衛生観念が違うのは仕方ないことです。私のいたところは細菌やウイルスに関する知識が広く知られている世界でしたから。魔法で一瞬に病気が治るなんてことが無いし、ポーションも無いし。でもそれだけに一つ一つの病気や症状に対応する薬が何百種類もあり、外科的処置もある世界でした。だから」

「うん。でも、そんなつもりじゃなかったんだ。だからごめん。…もちろん独身だって幸せであって欲しいし、君なら」

「前世の日本には生涯独身という人もいましたよ。それぞれそれなりに幸せそうでした。私は大丈夫です。沢山の人に大事にされていますし。神様、あなたにも。見守ってくださり感謝申し上げます。」

「…ありがとう。幸せでいて。僕があなたに望むのはそれだけ。」

「はい。」

「あ、あのね。はちみつと梅で作ったシロップを飲んでみたいんだ。梅酒も少し。いい?」

「えーと。どうすれば?」

「君の机に『神へ』と書いた紙を置いて。その上に梅酒とシロップ…飲みやすいように水で薄めてね…を小さいグラスに注いで乗せてくれる?それで届く。

たまに君が作った飲み物や食べ物をほんの少しでいいから、そうやって届けてくれると本当に嬉しいんだけど。」

「おままごとみたいで楽しそうです!」

「ありがとう。これをお礼に君にあげるね。君を守るものだ。起きたら手首に載せてみて。」

「え?あの、ありがとうございます。」

「ふふ。じゃあまた。」


そう言われて目が覚めたらまだ日の出頃です。

カーテンの隙間から差し込む日差しはまだほのかで。

身体を起こそうとしたら、枕の脇に細い金色の鎖のブレスレットがありました。直径二ミリくらいの赤い小さな石?が一つだけついています。

これが神様のプレゼントなのね。

私は神様に言われた通り、石の部分を左手首の内側中央に乗せて留めようとしました。

すると、ブレスレットは身体の中に溶けるように入ってしまったのです。身体の中に光が入って来たような感覚がありました。

そして左手首の内側に、あの小さな石くらいの大きさのアザ?ホクロ?が。

「何かしら?これ?」

触ってもただのホクロのようで、盛り上がっていたりはありませんが、色が薄い赤。ローズピンク色の口紅を塗ったような感じです。直径二ミリくらいの円形。

元の石の色は濃い目の赤でしたけど…

ベッドに腰掛けたまましばらくホクロ?を見ていると、頭に情報が浮かびました。


創造神の加護

悪意を持って近寄る者を排除する。

半径二十メートル以内には近寄れない。

またいきなり害意を持った者は瞬時に排除する。

(二十メートル以上先に転移。またその経緯分の記憶を失う。)

健康を維持する。

常時回復魔法が発動中。

既に体内に吸収されているので加護はなくならない。


「は?何これ?過保護過ぎではありませんか?」

私が呆れた声を上げると隣室に控えていた侍女が入って来ました。

「レティシア様、悪い夢でもご覧になりましたか?こんなに早くお目覚めになって声を上げられるとは!」

彼女はマルブルフの元領主ルーリック様からつけられた侍女です。名前はエリーナ。

「エリーナ、何でもないわ。夢を見ただけ。もう少し休みます。いい?」

「もちろんです。いつもの時間に起こしに参ります。…冷たいお水をお持ちいたしますか?」

「ベッドサイドに水差しとグラスがありますから大丈夫よ。」

「では今しばらくおやすみなさいませ。」


もう一度眠りにつくとまた夢を見ました。

「心ばかりの贈り物だから」

「ほんの気持ちだから」

「お守りだよ。」

神様が言い訳を並べてこの「謝罪の気持ち」を受け取って欲しいと懇願していたような気がします。

夢です。きっと。

二度目の眠りから覚めた時。ベッドサイドに

「神様へ 感謝を込めて」

と書いた紙の上に小さなグラス二つに梅酒と水で割った梅シロップを入れて置きました。

私が身支度をしている間にいつのまにか紙が消えてグラスの中味が空になってましたから召し上がったのでしょうね。


私は金のバングルを作るか購入して、この手首のホクロ?を隠そうと思いました。

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