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天衣無縫なお嬢様  作者: 眠熊猫
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アリアとシール(アリア視点)

「シール、忙しいのに来てくれてありがとう。」

「私もレティに会いたかったから。」

「領主の妻になってわかったことがあるの。レティは…」

「うん。いるだけで利権が発生する存在。」

「ワインビネガーと果物とハチミツで作るドリンク。野菜のビネガー漬け(ピクルス)。ラクル家にレシピを買い取ってもらうとしたら幾らになると思う?」

「独占権が発生しないから大体になるけど。多分…」

「だよね。『好きに使って良い。』って言ったレティは」

「間違いない。アリアと嫁ぎ先であるリデル家へのプレゼント。私ももらった。新しいソースのレシピ。ずっと以前に届いた手紙でナッハー領はスパイスとハーブを作っているけれど、ハーブはありふれているし、スパイスはコショウ以外あまり需要が無いと書いていたからと言ってこの間くれた。厨房で試作したけど館中が喜んでる。」

「何それ?私も食べたいんだけど!」

「ウースターソースとカレーソース。どちらがいい?」

「どっちも!だって二つとも知らないもの。…あまり辛いと困るけど…」

「ウースターソースは揚げ物などにつけて食べる。トマトソースに加えても美味しかった。カレーソースはシチューにしてもいいし、料理に添えてもいい。辛さを強く感じるのはカレーソースの方かな?」

「え…私が辛いの苦手なの知ってるよね。食べない方がいいかな?」

「どうだろう?りんごのすりおろしたのとか牛乳を加えるとまろやかになるけど。」

「そうしてくれる?」

「わかった。…じゃ今からナッハーの館に行こう。今からなら昼食に間に合うし。夕食も食べて泊まって。帰るのは明日にすればアリアの身体も楽だと思う。」


私の実家であるナッハーの館には私が独身だった頃の部屋がそのままになっている。

まぁ掃除はしてくれているし、たまに里帰りした時に注文して購入してるから私の服なんかも増えている。

妊娠した今ではベビーベッドや赤ちゃんの服も置いてある。しょっ中行き来しているからどちらの領で産まれても困らないように。

だから泊まっても特に荷物を持って行く必要はないけど、夫には断らないとね。

私はリデル領主(夫。サイフォ・ケイデー・リデル)の執務室へ向かう。

「サイフォ。私。アリアよ。いい?」

「もちろん!アリア、どうしたの?お友達のレティシアさんは帰ったでしょう?寂しくなった?」

「えーと。そのレティからもらったの。ワインビネガーと果物で作る飲み物のレシピ。ナッハー領とも共有するけど、

お隣のラクル家に売れそうでしょ?あとやっぱりワインビネガーを使った料理のレシピがこっち。…あら、結構あるわね…。はい。

そうしてね、リデル領で取れるスパイスで作った新しいソースがあるんですって。レティがシールに先日渡したんですって。今から行って食べて来るわ。一泊して明日帰るんだけど、いいわよね?」

「…これはすごいお土産をもらったね。リデル領へのプレゼントも羨ましいな。僕も夕食を君と食べたい。ウーラム義兄様とナリス義姉様にそう伝えてくれる?」

「わかったわ。じゃ後で。」

「気をつけて行っておいで。」


そう言ってシールとナッハーにある実家に戻った私。

シール夫妻の息子のアールはまだ生後一年に満たないから子ども部屋で食事は別に食べさせてる。

だから食堂では領主であるウーラム兄様とナリス義姉様夫妻と二人の息子(私の甥)のシーハムとネイザン、シールと兄様の補佐官でありシールの夫君イーブと一緒にお昼にいただいたコロッケと牛肉のカツレツ(これもレティがくれたレシピだって。でも彼女の実家では昔から食べているらしい。アキテーヌン領の郷土料理かな?)につけて食べたウースターソースは本当に美味しかった!

夫サイフォも加わった分より賑やかになった夕食のカレーソースはスパイスが沢山使われていて。確かに辛かったけれどまろやかで(ミルクとリンゴを入れてくれたから?)お肉のソテーによく合う、美味しいものだった。


シールもシールの夫のイーブもウーラム兄様もナリス義姉様もレティからのプレゼントであるこのレシピをすごく喜んでた。

今まで香りが強過ぎてあまり使うことがなかったスパイスや染料としてしか使わないものをカレーやウスターソースに使っているらしい。

ウスターソースはすぐに瓶に詰めた物を分けてもらえたのだけれど、カレーソースは断られた。

何でもカレーソースの素になるカレー粉、というスパイスの粉末を混ぜ合わせた物の混合比がまだ決まっていないらしい。

「なら何種類か作ってみてよ。香りの好みも人それぞれだから。」

と私が提案したらすぐに受け入れられた。でもその分完成は遅れるかもだって。何てこと!

他にもお湯に溶かすだけでカレーソースになるカレールーというものも試作してる最中なんですって。

「私が出産するまでには完成させてね。」

と皆に頼んだら

「頑張る!」

という返事しか返って来なかったのが頼りないなぁ。


リデルとナッハーの前領主夫妻(つまりシールの養父母と私の両親)は二年前に新しい領主の仕事ぶりを確認した後、王都に移って商会を共同経営している。

カレーソースとウスターソースが完成したら転送魔法陣を使って送ってみると兄様が言ってた。

レティが私にくれたレシピにあった、ビネガーを使って作るソース、トマトケチャップもリデル領に戻り次第試作して。美味しかったら送ってみようっと。


トマトケチャップはレティが前に作ってお兄さんのアキテーヌン領主に提供したんだけど、その時は門外不出になったんだって。ウースターソースも。

今回うちに来る際にお兄さんが

「結婚のお祝いも出来なかったから、出産祝いも兼ねて(私へは少し早いけどね)レシピを送ったら?」

と勧められたって言ってたなぁ。

うーん、仕事が増えそうなソースではあるわね、きっと。

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