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天衣無縫なお嬢様  作者: 眠熊猫
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レティからの手紙(アリア視点)

レティから手紙が届いた。

以前私が出したものへの返事。往復でひと月半くらいは最低でもかかるから、まどろっこしい。でも離れた人との伝達手段はこれしかないのだから仕方ない。

封筒を開けて便箋を取り出すと、便箋に挟まっていた何かが二つ、机の上に落ちた。

思わず拾うと、それはスミレの花。でもペッタンコになっていて、薄い半透明の紙に挟まれている。そして紙の上の方には穴が開いて淡いスミレ色のリボンが結ばれていた。

「綺麗で可愛いけど、これは何?」

思わず声を上げたけれど、レティのことだから手紙の中で説明してくれてるはず。


便箋を開いて読んでみる。

私の婚約とシールの結婚への祝いの言葉、リズとハザムの婚約にびっくりしたこと、レティ自身は独身で婚約者もいないこと、もし私たちが王都に来るようなことがあれば会いたいから知らせて欲しいこと…

レティらしい、少し間延びした、丁寧な文字を読んでいると初めて学校で出会った時のことを思い出す。

不思議な子だったけどレティは本当に優しい、素敵な人だった。きっと今も。

おっとりしているのにどこか鋭くて。抜けているところがあると思えば考察力と観察力がすごくて。

ちょっとした雑談の中でレティが言ったことが、悩み解決の糸口になることも度々あった。これは私だけでなくシールもリズも同意見。


半月ほど前に四巻目が出版された本「魔女の助言シリーズ」も。

一巻は妊産婦の食事に関する注意点

二巻は赤ちゃんの健康面の注意と離乳食

三巻は子どもの食事と睡眠、生活習慣

四巻は大人の食事と生活で気をつけること

が物語になっているのでわかりやすい。巻末には色々な料理のレシピが載っていて庶民にも人気がある。私もコックに頼んでいくつか作ってもらったもの。


そして返事の最後に、あの紙で作られたもののことが説明されてた。

「同封したスミレは押し花といって、花を潰して乾燥させています。水気を吸うと傷むので注意してね。読書を中断する際、そのページに挟んでおくもので、しおりといいます。リボンが外から見えるように挟むとどこまで読んだか目印になるでしょう?一つはアリアの、もう一つはシールのです。お揃いにしました。でも、もしリボンの色が気に入らなかったら好きな色のリボンを結んでくださいね。ただあまり濃い色だとページの紙に色が移るかもしれないからご注意ください。」

だって。注意事項がレティらしくて少し笑った。

…レティは本当に変わらないなぁ。

でも、このしおり?は役に立ちそう。これまでに何度も読書を中断したことがあるけど、読み直す度にどこまで読んだかわからなくなったもの。目印が出来ると嬉しい。

…布でも代用出来そうだわ。これを布で作って、刺繍を入れてシールと交換しても楽しそう!

うん。レティにも送ってあげようかな。


コンコンコンコン


「どうぞ!」

「アリア、お兄さ…領主と補佐官があなたを呼んでる。もし手が空いていたら執務室へって…何か読んでた?」

「シール!レティからの手紙よ。あなたも読んで。」

「いいの?」

「うん。大丈夫。」

「…ありがとう。楽しい手紙だった。レティらしい。で、これがしおり?」

「そうなの!綺麗でしょ?…これ、布でも作れないかなって今思ってたところなの。あなたと交換してもいいし、レティに送ってもいいかなって。」

「それは楽しそう!…レティのしおりは上等の亜麻で作った紙、だね。この中に挟んである押し花ってどうやって作るんだろう?」

「レティの領地の特産品かしら?」

「私たちが作ったしおりを送る時の手紙で、作り方を尋ねてくれる?出来れば教えて欲しいって。」

「うん。わかった。じゃ、執務室へ行こう?」

「そうだった。忘れてた。」


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