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天衣無縫なお嬢様  作者: 眠熊猫
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もの思う春

春が来ました。

冬の間は蜂が冬眠する為に中断していた養蜂が再開され、やはり冬の間は温室で細々としか出来なかった薬草のエキスの採取も野外で出来るようになりました。

サクランボが実る実桜の花が咲いて、リンゴやナシの花が咲くと日本の花見が恋しくなります。


というわけで?館の庭や近くの村外れなどで花見を兼ねたピクニックを侍女たちや甥のクルートとお付きの人たちと(たまにサーラ義姉様も)一緒にいたします。

お弁当がちらし寿司やおにぎりではなく、サンドイッチと唐揚げとサラダになってしまうのは仕方ないことです。お米、見つからないんですもの。

オヤツはナッツとドライフルーツを沢山入れたパウンドケーキやクッキー、レモンエキスと塩が入った水飴を用意しています。クルートはこの水飴が気に入っていて、ひとしきりはしゃぐと私の側に来ておねだりします。可愛い!

干しカボチャで作った冷たいスープはサーラ義姉様が美味しいと褒めてくださったのでレシピを渡すことにしました。夏には新鮮なカボチャで作れますし、もう少しするとグリーンピースや新ジャガでも作れそうです。お義姉様のお口に合うと嬉しいです。


お花を眺めてお義姉様や侍女とおしゃべりしたり、クルートのことをお付きの人たちから聞いたりしながら薬草や花のエキス(香料として使います)を抽出して。

午前から午後にかけての三時間ほどを過ごすお花見を三回か四回しました。

そうしたら、私の家の裏手にいつの間にか実桜の木とリンゴの木が二本ずつ植えられていて驚きました。

「ナシとモモの苗木は来年植えますね。」

と庭師に言われました。ありがとう!

同じくいつの間にか作られた物置には屋外用の大中小のテーブルと椅子が八脚、入っていました。

おかげで天気が良い日にお話や歌を考えたい時は小さなテーブルと椅子を一つ、裏庭に置いてもらって花や木を見ながら構想を練ることが多くなりました。


そしてふと気がつくと、懐かしい歌を口ずさんでいたりします。

恋の歌が多いのは、春のせいでしょうか?

それから前世の卒業式で歌ったお別れの歌。私はエスカレーター式のキリスト教主義の私立校に小中高と通いましたから、その頃は毎年春になると

神があなたと共にいらして あなたの行く道を守ってくださいますように

という賛美歌を歌ったものです。

友人や先生のことは何も思い出せませんが、やっぱり懐かしい。

そういえば魔法学校でお友達だったアリアやシール、リズに手紙を書かなければ。


一昨日アリアから近況を知らせる手紙が届いたのです。

アリアとシールは半年ほど前の秋に卒業しました。

そしてアリアはシールを引き取ったリデル子爵の嫡子のコルト様と婚約。今は実家ナッハー家の魔法師ですが、来月結婚した後はリデル家の魔法師になるそうです。

シールはアリアのご実家ナッハー子爵の補佐官と卒業と同時に結婚されてナッハー家の魔法師になりました。アリアと今は同僚なんですって。

ナッハー子爵は二年前にアリアのお兄様が領主になられたので、補佐官はそのお兄様の元侍従だったとか。シールの六歳上なのだそうです。

「補佐官のライルは兄様のお付きが長いし結構苦労してるし老け顔だからシールと並ぶと十は年上に見えるのよ!でも優しいから幸せだってシールは言ってるわ。」

と手紙にありました。


そしてリズは何とハザムと先月婚約したそうです!夏には結婚してハザムのご実家、マナム侯爵家の魔法師に二人してなるのだとか。お幸せに!

「だから、この手紙の返事はリデル家かナッハー家宛に頂戴ね!あと、魔女から助言される話、面白いし、ためになって嬉しい。続きが楽しみです!出るよね?出してね!」

アリアの元気な笑顔と声を思い出す、楽しい手紙でした。

返事を書いているうちに何だかもどかしくなってきて。直接アリアに会って話したくなりました。

でも、アリアとシールの領地は片道で二十日以上…ひと月近くはかかります。会いたいのはやまやまですが、手紙の方が早く着きます。

それはわかっていますけれど。

やはりアリアの明るい声をまた聞きたいです。

シールのまっすぐで真面目な声も。リズの華やかな声と笑顔にも会いたくなってきました。


「懐かしいアリア。お手紙をありがとう!

読んでいるうちにあなたとシールに会いたくなりました。リズのことを教えてくださって感謝します。

私、ハザムとは王都で会えると思っていましたの。リズとご自分の領地で仕事をされるのですね。

こうして返事を書いていると、あなたと直接会って話したくなります。

王都に行く予定とかありませんか?よろしければ王都で落ち合って一緒におしゃべりとか買い物とかしてみたいです。

私はまだ独身で、婚約者もいないの。そのかわり?準男爵の位をいただきました。特に領地などは無いんですけれど。」

というような内容の返事を書いて送りました。







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