表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天衣無縫なお嬢様  作者: 眠熊猫
51/79

アキテーヌン領内タリーズ

王都には結局十日ほど滞在してアキテーヌン領に戻りました。その間毎日王宮に通って王様や王妃様の質問にお応えしたり、お茶をいただいたり…

本当に粗相をしないか気が気ではありませんでした。

お二人ともそれは優しくしてくださいましたけれど。


私一人の(侍女や衛士がいるとはいえ)帰りの旅は最短の道、最速の旅程でした。女の一人旅ですから。

そうして館でお兄様に挨拶するとすぐに執務室に通されて

「タリーズ領をどこにするか」

という議題に。しばらくは今私が住んでいる家とその周囲の畑と果樹園をタリーズ領と称することにいたしました。警備上のこともあり、どこかの村外れとかどこかの森の中とかは勘弁して欲しいとお兄様に言われましたので。


私の仕事は変わりありません。今まで通り薬草のエキス作りと魔法陣作りと本の執筆です。

家の側に薬草畑を作っているのはエキスを作るにはある程度まとまって生えている方が早く作れるからで、それ以上の意味はありません。

実際はどこででもエキス作りは出来ますので(薬草はよほど特別なものでなければ一年中野原や道端に生えています)、畑といってもそんなに広い土地を必要としません。樹木も少し欲しいから家庭菜園より少し広いかな?くらいです。

それなのに警備って…という顔をしていたのでしょう、お兄様に

「君が拐われる危険がある。でもそんなことを企んだり実行しようとしたら天罰があるのだろう?どんな罰かはわからないけど、大怪我を負ったりしたら後味も悪いよね。君は神様に守られて無事かもしれない。でも人が悪事を諦めさせるように仕向けることも大切だと思うんだよ。」

そんな風に言われましたら反論など出来ませんでした。

…今までと何も変わりませんから嬉しいですけれど。


王都に行く前と帰って来た後とで変わったことは、お父様とお母様が王都へ引っ越しされたこと。

もう一つはサーラお姉様の具合が良くなったことです。


私が館に戻ってサーラお姉様をあらためて拝見しましたら、お姉様のお顔の色が青白く見えて。

ヤルツァ領で領主の奥様のミューナ様に話したことを思い出した私はサーラお姉様が出産した時のことを侍女やお医者様に尋ねました。

すると通常よりずっと出血が多かった、一時は母体が保つか心配したほどだったと聞かされました。

それで貧血症になったのでは?他のミネラルやビタミンも不足しているのかも。

そういえばサーラ義姉様は乳製品があまりお好きではありません。

それでお姉様の食事にレバーのパテをパイにしたものやラビオリにしたものを週に二、三回出すように厨房にお願いして。またほうれん草や小松菜をスープに入れたりソースにしたものを加えることに。

それから、マルブルフから煮干しを取り寄せて粉にして肉団子に混ぜたり、大豆から豆腐を作ってスープの浮き身にしたりもしました。

そのように食事を変えて数ヶ月。お姉様のお顔に赤みが差し始めました。またその頃から散歩の時間を少しずつ増やして。半年を過ぎた頃には妊娠する前の、私が知っている活発なサーラお姉様に戻りました。


このことがあって。

私は妊産婦の栄養に関する本を書くことにしました。

幸い干し柿の成功で果物や野菜を干して保存することも多くなりました。

特に干したイチヂクとアンズとプルーンは前世のものよりも粒が大きく、そのままでもお茶菓子になるので人気商品です。


でも。実はそういう実用書より物語や絵本をお兄様もお義姉様も書いて欲しいと言われるのでなかなか調整が難しいです。どうしましょう?

と頭を抱えて唸っていた私が

「妊娠した女性の体調が悪くなって森に住む魔法使いに薬を買いに行くと『薬より食べ物を工夫しなさい』と言われて…」

という話を思いついたのは結果オーライだったかもです。

そうして、この物語はシリーズになりました。

魔女の助言シリーズとでもいいましょうか?

「妊娠中気をつけること」

「赤ちゃんの離乳食と気をつけること」

「幼児の食事とおやつ」

「子どもの健康に必要なこと」

「大人の食事 飲酒と食べ過ぎに注意」

「高齢者の食事」「けがの応急処置」などなど。

料理のレシピなどは巻末にまとめて入れて。

構想だけですが全十巻くらいになりそうです。…売れるかしらん?

でも最初の三冊だけでも出したいと思っています。頑張ろう!


曲も相変わらずです。月に一曲か二曲を目にしていますが、一曲も作れない月もたまにあります。

歌詞を変えるって意外に難しいです。編曲も。つい似たようなメロディや歌詞になってしまいます。

子守歌とか遊び歌とかの方が気楽に作れますが、やはりそればかりでは…。


あと、王都から帰ってからというもの。

王都に行く途中で通ったサザーズ領の領主補佐官とヤルツァ領の前領主様がふた月に一度くらいの割合で私の家を訪問されるようになりました。

うち(伯爵)より位が高いのでお断りするわけにもいきません。

まして私は準男爵です。一代限りで、貴族としては下位ですから…(後はやはり一代限りの騎士爵と士爵しかありません。騎士爵は文字通り騎士の方、士爵は文官又は魔法師として領主や王族に仕える為に平民に与えられる爵位です。給与制で職を辞す際に返上します。)

はっきり言うと粗相をするのではないかと、お会いしている間は緊張してしまうので正直苦手なんですけれど。

我がタリーズ領はなかなか忙しいです。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ