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天衣無縫なお嬢様  作者: 眠熊猫
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他愛ないおしゃべりと約束

夕食の時間が近づいたので私とアリアとシールとで食堂に入りました。少し早い時間だったので人は疎ら。

今日の夕食(パン、チーズ、干しリンゴ、ベーコンと野菜のミルクスープ)をいただきながらアリアとシールに先ほど読んでもらった話のことでおしゃべりしました。


「あんなものがあるんだね!というか、レティが考えたってすごい!あのね、途中のお話の方なんだけど。終わったらまた読ませてくれる?」

「私も。読みたい。」

「ありがとう。領地に帰ったらあれを本にして売れないかを相談するつもりなの。」

「それいいね!あの本が売り出されたら絶対評判になるよ!私も買いたいもん。」

「うん。あれ、続きが気になる。読みたい。」

「ありがとう。頑張って書くわ。」


それ以来、毎日のように私とアリアとシールは夕食を食べ終わると食堂の端の方のテーブルに座って。ハーブティーを飲みながら私の書く物語についておしゃべりするようになりました。

そうしてアリアの話してくれた貴族の慣習やしきたりなどは話を作る上で本当に貴重なものとなりました。

私はそういうことに疎かったのです。暗黙の了解、暗黙のマナーというものを初めてアリアから教わりました。

アリアいわく、

「下級貴族だから余計にうるさいのよ。」

だそうですけれど。

そのおかげで貴族の跡継ぎがいくら裕福でも平民の娘とは結婚しないこと(次男三男なら平民の家へ婿養子に行く可能性あり)を教えてもらえました。シンデレラはあり得ないと。でもシンデレラの家が一代限りの準男爵だったことがあるとか、特別な功績がある家柄で領主から家名をもらっているとかなら可能性はあるらしいです。本当にややこしい。


ずっとアリアとシールに支えられて。

私は絵本を四冊分と転移物語のシリーズを二冊分、そうしてアリアとシールの体験談(主に魔力の制御について)をもとにしたお話を一つ、書き上げることが出来ました。

アリアとシールは私が話を書くための時間を取れるようにと、私が筆写したい本を何冊か、私に代わって筆写することもしてくださいました。

「もちろん本にするまでに書き直しとかあるだろうけどさ。出来るだけ読んでおきたいし、一応は終わってないとスッキリしないじゃない?だから協力したんだよ。ね、なるべく早く本にしてね。約束だよ!」

「私も。本を買ったらいつでも読める。嬉しい。だからお願い。」

そう言ってもらった時に。

私が二人を抱きしめてお礼を言っても仕方ないと思います。多少(貴族としての)礼儀には欠けていますけれど。女同士ですもの。見逃してもらいました。

二人とも私を抱き返してくれましたし。

「ありがとう!約束するわ。絶対本にしてもらいます。待っていてね。…入学以来、ずっと私に良くしてくださって本当にありがとう!」

私がそう言うと二人は泣きそうな顔になって

「何言ってるの?レティのおかげで魔力傷が消えて、どんなに嬉しかったか!ノースリーブのドレスを着ることが出来るようになったんだよ?レティに会えたことを感謝してるのはこっちだってば!」

「うん。レティ、ありがとう。」

私たちはお互いの領地の名称と家名を交換して、学校を離れても連絡出来るようにしました。

卒業しても友達でいてね。

私、この学校に入学して本当に良かった!


卒業の挨拶をする為、朝の授業前にドール先生の部屋を訪ねました。するとそこにはアリアたちの攻撃魔法の先生、キール先生もいらっしゃいました。

ドール先生とキール先生に挨拶しますと、キール先生が

「レティシアさん、もう少し学校に残りませんか?あなたの発想する力は素晴らしい。あなたが学校にいてくださると魔法の使い方や魔法陣の工夫など、私たち研究者のヒントになります。」

と仰っいました。私はしばらく考えてお応えしました。

「先生。どうお役に立てるのかわからないのに徒らに在学するわけにはまいりません。卒業いたしとうございます。ただ、卒業して領地に戻っても学びは続けます。ですから、学びの中で疑問に思ったことや思いついたことがありましたら教頭先生かドール先生に手紙を送るつもりでおります。その際にキール先生にもお力添えをお願いしてもよろしいでしょうか?」

そう言うと、ドール先生は頷いてくだり、キール先生も微笑んでくださり

「ああ、それで充分です。いつでも手紙を送ってください。」

と返されました。

改めてお二人にお辞儀をして部屋を退出します。

教頭先生にも挨拶をして(校長はまたも外出中です)、門の前に行くと。うちの馬車が停まっていて。衛士のエセルと侍女のエイダが私を待っていました。

「「お嬢様。お乗りください。」」

「はい!」

すると馬車がもう一台停まっていました。

「やあレティシア!久しぶりだね。」

「ラミアス司教様。お久しぶりです!」

「こちらの教会に用があったんだ。そうしたら来る途中のチャン領でちょっとした事故と…領主が急死してね。」

「あら…お気の毒に…」

「何だか物騒だろう?だから帰りを君と一緒にと思ってさ。いいかな?」

「勿論です!心強いです。ありがとうございます。」


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