友達ってありがたい
「レティ、やっと捕まえた!久しぶりなんだけど。あなた一体何してるのよ?私たちのこと、忘れちゃったとかはなしにしてよね!」
「アリア、シール。久しぶり?…ってこの前会ったのは」
「二週間前。レティ、お昼も食べに来ないし、夕食の時間にも会わないから心配してた。…もしかして病気、だった?」
「心配させてごめんなさい。今日から夕食は食堂で食べることにするわ。…このところずっと図書館にこもっていたの。あそこは一階に飲食出来るスペースがあるでしょう?だから昼食も夕食もそこで済ませてたのよ。侍女にサンドイッチとハーブティーとジュースを持って来てもらって。でもさすがに飽きちゃったから今日は夕食を食堂で食べようかなと思ったの。」
アリアとシールは半ば呆れたような顔をしながらも一緒のテーブルについてくれました。
パンとヨーグルトと、野菜が沢山入ったトマトシチューとチキンサラダの夕食はとても美味しいものでした。
そうね、やはり夕食は食堂で食べることにしましょう。
食後のお茶を飲みながらお互いの近況報告(という名のおしゃべり)。
「攻撃魔法っていうんだけど。火はまあともかくさ。水は火災の消火に使ったり、風は麦の収穫や脱穀にも使えるみたいなんだ。結構面白そうなの。」
「私たちの先生…キール先生がレティの結界魔法を興味深いって言ってた。今度会いたいって…いい?」
「では午後の授業が終わる頃、教室を訪ねるわ。明日でも大丈夫?」
「明日の午後は座学だからちょうどいいよ!授業が終わる鐘がなったら来てね!先生に言っておくから。」
「ありがとう。」
「レティ、訊いてもいい?図書館で何してる?」
「興味のある本を写してるの。私、あと半年くらいしたら卒業って言われて。あとは調べもの。…そうだわ。明日の夕食後、二人に読んで欲しいものがあるの。お願いしても構わない?魔法とは全然関係ないんだけど。」
「もちろんいいに決まってるよ!何だろう、楽しみ!」
「うん。私で力になれるなら嬉しい。」
「ありがとう!」
翌日。キール先生の教室を訪ねるとアリアとシールも教室にいてくれてました。
「はじめまして。レティシアです。キール先生。」
と挨拶をしますと、キール先生は早速本題に入ってくださいました。
要約すると。触れると火花と音が出る結界は改造すると攻撃魔法としても使用できるので研究しても構わないかということでした。
もちろん承諾いたしましたが、防御魔法?結界魔法?を研究しているノマ先生から見ると欠陥があるらしいことを話し、その辺りの補完はノマ先生と相談してくださるようお願いしました。欠陥のせいで誰かが怪我でもしたら悲し過ぎます。
その上で、私が渡した魔法陣はたたき台に過ぎないものですから、完成した魔法陣を発表する時はキール先生とノマ先生の名前でするよう頼みました。
キール先生はしばらく考えていらっしゃいましたが、頷いてくれたのでわかってくださったのだと思います。
話が終わって。
夕食までには二時間ほどあったし、まだ日も高かったしだったので。いつもの学校の裏山の木かげでアリアとシールに私が持ってきた絵本の原稿と書きかけの物語の原稿を読んでもらいました。
絵本は大きな木があったら…と夢想する子の話と、森にうっかり入り込んで恐い思いをする子の話です。絵本ですので簡単にではありますが挿絵を描きました。
物語の方は「ドアを開けたら異世界」という設定で、魔法のあるこちらのような世界から魔法の無い前世の日本(の田舎)へ転移する話を作ってみました。
まだ全然途中ですがおかしな箇所があれば指摘してもらいたいので読むことをお願いしました。
ドキドキしながら二人の感想を待っています。
やがてシールが顔を上げて
「この、短い話。楽しくて可愛い。そしてちょっとだけ恐い方は、何ていうか、ためになる?私、この子たちに会ってみたい。で。途中までしか書いてない話の続きは?この子、それからどうなったの?」
と矢継ぎ早に質問してきました。私が
「えーと、これはね、作り話なの。私が(一応)考えて書いた話で、本当のことではないのよ。だから、変なところやおかしなところがあったら直したいの。それであなたやアリアに読んで欲しかったのよ。」
とシールに説明していると、アリアがびっくりした顔になりました。
「えー?本当にあったわけじゃないの?なら、この話の続きってどうなるのよ?」
だから、それを含めてあなたたちの感想を聞きたかったの。
相談に乗ってくれそうでよかった!




