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天衣無縫なお嬢様  作者: 眠熊猫
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入学して一年

気がつくと来月で入学して丸一年になります。

アリアとシールは先月からドール先生ではなく、攻撃魔法が専門のキール先生について学んでいます。

ハザムとリズは三ヶ月前から魔法陣専門のローハル先生に師事していますし。

いずれも生徒本人が希望したとかではありません。ドール先生とキアン先生の判断によるものです。生徒たちの習熟度や適性などを判断して

「あなたはあの先生について学んだ方が良いと思う」

と声をかけるのです。


そうして私は先月筆記テストを受けました。

何かの適性テストかしら?と思ったら卒業試験でした。

テストを受けた翌日にドール先生とキアン先生から卒業認定証をいただき、びっくりしました。

けれど、私の魔力量は本当に少ないようで(授業で習った攻撃魔法とかを殆ど使えなかったので)仕方ないのかもしれません。

小さい魔法をちまちま使えるだけ、魔法陣もあまり大掛かりな魔法のものは発動しませんでした。

以前キアン先生にお渡ししましたミツバチの巣箱を守る為の魔法陣は、範囲を広げて威力を高めれば軍隊の防衛に使えそうだとキアン先生は仰ってくださいました。

けれど、防御魔法(というのかしら?)を研究なさっているノマ先生は

「結界魔法にしては…」

と難色を示されたらしいです。まぁ子どもの私が作った魔法陣ですから、専門家が見たら穴だらけなのでしょう。


結局、私の得意な魔法で他の人にも役立ちそうなのはポーションを作る為のエキスを作る魔法だけなのかも。

今では王宮魔法師の中に二人、この魔法を使う方がいると聞きました。そしてヤルツァ教頭先生とドール先生とキアン先生も出来ますから、この学校から売り出されるポーションも一年前と比べると随分多くなったそうです。


卒業試験の問題を七割以上正解して、オリジナルの魔法を一つ以上作るか、魔力の制御が安定していれば卒業が認められるそうです。

私はそれをクリアしたと太鼓判を押されました。まあ確かに当てはまります。

いつ卒業してもいいと言われて、私が要望したのは卒業時期を半年後にしてもらうことでした。


この学校の図書館…三階建ての別館です…で読めるだけの本を読みたかったのです。

入学して以来、お休みの日は出来るだけ図書館に通って興味ある本を読んだり書き留めたりしてきましたがまだ読めていない本があるものですから。

魔法に関する本は出来るだけ読んでおきたいです。そして重要な箇所は書き留めておかないと忘れてしまいます。

この世界で本は貴重です。活字も紙もあるのですが、雑誌や新聞の類いが無く、本といえば学術書。そんなに需要がありません。大体初版だけで売り切っておしまいです。出版会社、というか印刷会社も片手で数えられるくらい。一番需要があって再販もされるのは楽譜なのだそうです。


どの学校でも教科書は学校の所有物。学校の備品を生徒に貸与するかたちです。卒業時には返却します。だから在学生は皆出来るだけ筆写して手元に残す努力をします。

魔法や技術に関する本は王宮や領主の館の図書室には基本的に一冊か二冊ずつ収められていますけれど、破損したり買いそびれたりして無いものもあります。勿論高価で買えない本もあります。

その上、図書室に入って読む人(読める人)が少ないのが現状です。王宮や領主の館に入れる人自体限られますから。

村では村長か村長の奥さんが村の集会所を使って文字や簡単な計算を子どもたちに教えますが、その際は黒板を使用するだけで教科書は無いのだそうです。

…娯楽として読める絵本や児童書があるといいのに。大人も楽しめる小説とか歴史物語とか…。

値段もそんなに高くないように工夫して。村の集会所(これはどんなに小さい村にも必ずあります)に置いてもらえたら役に立ちそう。

領地に帰ったらお父様たちと相談してみましょうか?

在学中にいくつかお話を書いて、領地に帰ったら見ていただくことにします。印刷に値するかどうかを判断してもらわないと。

私が前世で読んだ物語を参考にして…こちらの世界とすり合わせるのに必要な資料は図書館で探せば何とかなるでしょうし。


絵本や物語、小説って作るのに魔法は不要です。私がそれを作る意味は?とか思い始めたらきりがありませんでした。でも。多分。私が読みたかったのだと思います。

とりあえず半年あります。

この学校にしかない魔法書と薬草の本を筆写しながら

お話や絵本について構想を練ることにいたしましょう!






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