おしゃべりって楽しい
お昼を一緒にいただいている間もアリアが色々話しかけてくれて。シールも私もそれに返事をしたり相槌を打ったり。
こんな賑やかな食事は久しぶりです。
数ヶ月前、長兄のジークフェルド兄さまの奥さまであるサーラリア義姉さまがご懐妊されて。それはおめでたいのですが体調を崩されたので、義姉さまに付き添う兄さまとも義姉さまとも一緒に食事を取れなくなることが多くなりました。
お父さまもお母さまも兄さまの代わりに村の巡視とか事務とかをこなしてお忙しいから食事を私一人で取ることが多かったんです。
次兄のランバート兄さまは館の騎士になって、兄さまの幼馴染のホルトさんの妹のマリエさんと結婚なさって。館のすぐ近くに家を建てて新しい家庭を作られましたから。
今日のお昼は魚ではなくこちらの肉料理にしてよかったね。嫌いな野菜ってある?私はピーマンがちょっと苦手なんだよね、シールは豆が苦手なんだって。レティは?香りが強いハーブ?ドクダミとかパクチーとかなら私も苦手だよ!シールはそういうの平気なんだ?シール偉い!好きなものは果物が好き。リンゴやオレンジも好きだけど、一番好きなのはアンズなんだ。シールは?イチゴかぁ。イチゴも美味しいよね〜。え、レティもイチゴが一番好きなの?
こんな風にアリアが賑やかに話を振ってくれるのでお昼はご飯を食べた後も楽しく過ぎました。
「ね?レティはどうやってあの魔力を流すことを思いついたの?」
アリアが質問を投げかけました。私は少し考えて
「あのね、近くの村の子でウィードって男の子がいてね。魔力が溢れることが一回あって小さいケガをしたんですって。私と初めて会った時、その子水浴びをしていてね。頭から身体から水が滴っていて。『傍に来るな!魔力が溢れそうなんだ!』って周りに怒鳴ってたの。だから私『その水滴に魔力を移せば楽になるんじゃない?』って。」
「彼、やってみたんだ?」
「うん。そうしたら楽になったの。」
「制御出来る量くらいまで魔力を出してしまえば楽になるものね。」
「でも魔力量を少なくしたまま制御してるといつまでもそのまま。ウィードは魔力が溢れてケガをするのが恐いからあまり魔力を体内に残さなかったの。そうしたら魔力量が半年くらいですごく減ってしまったわ。そのかわり魔力が溢れることもなくなったけれど。人によるけど制御する魔力量を少しずつ増やしていかないと…」
「魔法使いにはなれない、ってことね?」
「うん。多分。だからやっぱり楽な方に流されるのも
よくないんだわ。」
「でも未熟な時…まだ小さいうちはレティのこの方法は役に立つ…と思うの。私がもっと早く教えてもらっていたら…ケガしなくて済んだ気が…する。」
「シール、あなた…」
「うん。左肘の内側に小さいけどヤケドした痕が残ってる…右のくるぶしにも…」
「まぁ…」
「私にもあるよ?右肩のところ。ここの生徒の殆どが魔力を溢れさせたことのある人だからね。」
「そうなのね…」
「レティみたいに魔力の制御が初めから上手い人の方が珍しいのよ?」
「…あの…あのね?」
「レティ、何?」
「シール、肘の傷、見せてくれる?」
「?いいよ。ほらここ。小さいけど深いヤケドなんだって。」
「治って。お願い。」
「え?」
「うわ、すごい!治ってるよ、シール!」
「くるぶしのも、きっと治っているわ。」
「本当?」
「ねえ、レティ、私の肩のも…」
「服の上から触ってもいい?」
「もちろん!ここよ!」
「治って。…後で自分で見てみてね?」
「うん!…えーと、ちょっとお手洗い行こう?」
「何で急に…あー。わかったわ。シールも、ね?」
「うん!」
無事にアリアとシールの傷は綺麗に治っていました。
彼女たちの笑顔が眩しいくらい明るくて。私も幸せな気分になりました。




