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天衣無縫なお嬢様  作者: 眠熊猫
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初めての授業

昨日、寮の入り口まで送ってくださったドール先生が別れぎわに

「この学校の生徒には平民の子どもも貴族の子どももいます。校内では平民と貴族を区別しません。ですから、あなたを紹介する時は『レティシアさん』とだけ呼びます。家名をあなたが言ってもかまいませんけれどね。よろしいですか?」

とおっしゃったので私は

「もちろんです!」

と答えました。


そして今。私は昨日教えられた教室に向かっているところです。どんな人たちと知り合えるのか楽しみで仕方ありません。


「今日から授業に加わります。レティシアさんです。皆さんよろしくお願いします。」

「レティシアです。どうぞよろしくお願いいたします。」

「ではレティシアさん、空いているお好きな席へ。」

「はい。」


私は一番後ろの通路そばの席へ座りました。

といっても前から六番目。出席している生徒は全部で二十名くらいでした。

私の隣には誰もいませんでしたが、すぐ前に座っていた女性(多分私より年上です)二人がこちらを振り向いて小声で

「「よろしくね!」」

と言ってくれました。


今日使用する薬草と、それを使って作る薬についての説明や取り扱い上の注意事項などを先生がおっしゃいました。

生徒からの質問が少しあってそれに先生が答えます。

その後、実技に移ります。


「実技に入る前に。レティシアさん。前に出てください。」

突然ドール先生に指名されてびっくり。でも言われるまま前に行きました。

「レティシアさんはユニーク魔法の持ち主です。それを僕も出来れば使えるようになりたい。薬草のエキスを抽出する魔法なのですが、抽出する際に魔力とエキスが混ざる為にポーションが簡単に出来るんです。」

先生がそうおっしゃると、生徒全員が身を乗り出してきました。ちょっと恐い!

「昨日彼女が作ったユル草のエキスがこれです。五十倍に普通の水で薄めるとこちらの解熱剤になりました。」

生徒全員が立ち上がり、エキスと解熱剤を間近で見比べます。


「レティシアさん、このエキスの作り方を僕たちに教えてくれませんか?」

ドール先生が重ねておっしゃると生徒も皆頷きます。

「頑張ります。」

以外の返答など出来る雰囲気ではありませんでした。


各々一つずつガラス瓶を持って校舎の外へ。

魔法が失敗すると薬草園が台無しになるかもしれないので、学校の敷地内ではあるけれど手入れなどがされていない裏手にある丘へ皆で行くことにしました。

多少の隆起はあるものの殆ど野原。

週に一度か二度、体力作りの為に持久走の時間があり、この野原で一時間くらい走る授業があるそうです。その授業の時はゆっくりで良いから長時間走るように言われました。

その丘の向こうの端にオレンジの木が五、六本あります。実もそこそこついていますからちょうど良いかも。

「あのオレンジを使ってみましょう!」


皆にオレンジの木の下に集まってもらいました。

そうして魔法の説明を始めたのですが…

私の話に色々質問が来たり、それに答えたりしているうちに思いのほか時間がかかりました。

魔法を使う気持ちの準備のこと、魔法を使っている間の注意点を話しましたら、ドール先生が

「これは初めての試みでもあるので、僕が見ていないところでの練習は禁止します。レティシアさん、皆にこの魔法を少し見せてください。」

とおっしゃったので、今回は無詠唱でほんの少しだけエキスを作りました。

「ごく僅かの魔力でチョウ…トンボでもハチでも構いませんが…を作らないと、植物を枯らせてしまいます。それが一番の注意点だと思います。」

「レティシアさんありがとうございました。今日の薬草学の授業を終わります。」

「ありがとうございました。」


これで私の学校での初めての授業が終わりました。

…えーと。私が初めて受けた授業でしょうか?それとも私が初めて行なった授業でしょうか??

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