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天衣無縫なお嬢様  作者: 眠熊猫
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十歳になりました

私は十歳になりました。

読み書きも計算も(私の考えた…というより、前世で覚えたアラビア数字による計算に二年前から変わったおかげで楽勝ですのよ)歴史学も礼儀作法も二人の先生から去年及第点をいただきました。竪琴や歌も随分上達しました…多分。

刺繍も編み物も今では得意と言えるくらいになりました。パッチワークも順調です。

去年の春に私がベッドカバーを二枚完成させたあたりでお母さまや侍女や村の女性たちもパッチワークを作り始めましたし。クッションカバーや袋ものなどの小物は商品としても人気が出始めています。


ジークフェルド兄さまは三年前に学校を卒業されました。そして領地に戻られて、今はお父さまお母さまの元で次期領主としての学びをされています。お兄さまの奥さまになったサーラリアお義姉さまもご一緒に。

キャサリンお姉さまは卒業より少し早い去年、飛び級をして卒業した後すぐ、婚約をしていたマイエルト伯爵のご長男ワーフェス・イデム・ツァルアルト様と結婚なさいました。

前当主であるツァルアルト様のお祖父さまの体調が悪くなって、まだご存命のうちに結婚式をということになったからだそうです。

幸いその後ご病気が癒えて、今ではお元気になられたとのこと。ほっといたしました。


ジークフェルド兄さまの奥方になったサーラリアお義姉さまは美しく波うつ濃い栗色の髪と深い黒い瞳がエキゾチックな美人です。

うちの領地のお隣の、大きな港町を抱えるマルブルフ子爵家からお越しになりました。

去年の秋には私もマルブルフ領に伺って、港に水揚げされたお魚の見学もしました。

その折りにお義姉さまのお父さまのマルブルフ様からそれは大きなマグロのような魚を指指して

「これをそなたに。このような見事な魚は稀にしか獲れんぞ!」

と言われたのに

「恐れながら。あのように大きなお魚では我が領に帰るまでに傷んでしまいます。願わくは小さなお魚を大きな壺に入るだけと、それよりもう少し大きな、中くらいのお魚をザルに一杯いただけますか?」

と申し上げたら大笑いされてしまいました。

でもいただいた魚を使って私が魚醤と煮干しを作り、味見をしていただくとマルブルフ様は急に真剣になられて。

レシピを欲しいと仰っいましたから差し上げましたけれど。対価は何かと重ねて質問されて少し困りました。


それでこちらで比較的よく水揚げされる、鮭くらいの大きさの白身魚(サータという名前だそうです)をカラカラに干したもの(殆ど棒ダラです)を二匹と魚醤を一壺、そして煮干しを二壺分を半年ごとに私に届けてくださることになりました。

うちの領地には海がありませんから、これはかなり嬉しい贈り物です。

なのにお義姉さまったら。

「あれがどれだけの利益になるか…もっと欲しがっても良かったのよレティ。本当に欲が無いんだから。」

と仰って。マルブルフ様にかけ合って年に一度、真冬に早馬で生のお魚を届けるように交渉なさいました。

それでも丸二日はかかりますので、〆て血とワタを抜き、ワタの中と周りに氷を詰めた箱に入れて運んでいただくことにしました。そうすれば傷みにくいですから。

実際そうすれば(冬の間だけですけれど)生の魚を運べるとわかり、マルブルク領では近隣の内陸の領地へ魚の輸出?が盛んになったそうです。

今度の秋にはサータの燻製を作ってもらえたら嬉しいです。


私は十歳になったから、次の春から学校に行くものだと思っていました。でも、お父さまもお母さまも何も仰らないのです。

あれ??

私、神学校に行くのでしょうか?それとも王都の女子校?

あとはエラリナという都市にある魔法学校か、バールンという都市にある技術学校くらいしか選択肢は無いと思いますけれど。

私、才能が無いと諦められているのかしら??


まあ、どれにも秀でていない場合は家でずっと学ぶということになるかもしれません。

そういう方も少数ながらいらっしゃるとは聞いたことがあります。

身体が弱くて学校に行けない場合もあるそうですし。






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