表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺の周りは聖獣ばかり ~使役スキルで成り上がる異世界建国譚~【改訂版】  作者: 青雲あゆむ
第3章 ミカワ修行編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

46/182

45.鋼殻竜

 ウトウ迷宮2層攻略の2日目、俺たちはいよいよ深部へ踏みこんだ。

 少し進むと、最初の分岐ドームに差しかかる。

 内部をそっとのぞいてみると、そこには鈍色にびいろの巨獣が鎮座していた。

 深部の主、鋼殻竜こうかくりゅうだ。


 そいつは地球のトリケラトプスを、さらにゴツく凶悪にしたような外見だ。

 鼻先に1本、額に2本の角が生えたサイのような外見で、大きさはアフリカ象2匹分はあるだろう。

 全身がゴツゴツした鱗に覆われ、肩からも角のような突起が前方へ伸び、尻尾しっぽの先端付近にもゴテゴテとした突起が付いている。

 あの尻尾ではたかれでもしたら、余裕で死ねるだろう


「うわ~、でけえ~」

「あれに突っこまれたら、誰にも止められませんね」

「それに防御力の方も、侮れませんぞ」

「まあ、そうだろうね。とりあえず俺がティーガーで先制したら、みんなで突っこんで」

「「了解です」」


 俺はトモエに持たせていた鋼鉄塊を地面に下ろし、その横にティーガーを持って腹ばいになる。

 するとニカがとてとてと歩いてきて、俺の隣に座った。


「それじゃ、いくよ」

「うん、頼む」


 ニカによって、ティーガーの中に生成された弾の後端に、疑似火薬を生成する。

 ここで改めて狙いを定め、呼吸を整えてから弾を撃ち放った。

 目にも止まらぬ速さで飛びだした弾丸が、見事に鋼殻竜の左目を貫く。


「ヴモオォォォォーーッ!」


 苦鳴を上げて暴れる敵に向け、ヨシツネたちが駆けだした。

 同時に俺は少しでも敵を弱らせるため、次弾の発射準備を整える。


「ニカ、次くれ」

「うん、いくよ」


 すぐに装填された弾丸を、再び鋼殻竜に撃ちこんだ。

 今度は的が暴れているので、あまり動いていない胸の辺りを狙う。

 見事、鋼の弾は胸部に命中したものの、これによって俺は鋼殻竜に敵認定される。

 奴は憎しみのこもった片目を俺に向け、突進の構えを見せた。


「次、頼む」

「うん」


 命の危険を感じた俺は、次弾が装填されるや否や、敵の眉間に向けて放った。

 ばっちり眉間に弾が当たって鋼殻竜がよろけるが、それでも奴はまだ立っている。


「もう1発頼む」

「うん」


 さっきと全く同じ部分にもう1発撃ちこんでやったら、とうとう鋼殻竜はゆっくりと膝を折り、そして動かなくなった。

 幸いなことに、前衛が交戦する暇もないうちに仕留められたようだ。


 銃を担いで仲間に合流すると、彼らは呆れたように敵の遺骸を眺めていた。


「さすが鋼殻竜、噂どおりにタフだったね」

「いやいやいや、たった4回の攻撃で倒すなど、聞いたことがありませんぞ。タツマ様は恐ろしい力を手に入れましたな」


 ベンケイが呆れたように言う横で、ヨシツネはうつむいて何かをつぶやく。


「……まえに……ちゃった」

「え、なんだって?」


 よく聞こえなかったので聞き返すと、ヨシツネがひどく恨めしそうな顔を俺に向けてきた。


「……俺が戦う前に終わっちゃったじゃないですかぁ」


 どうやら自分が戦闘に参加できなかったのが、よほど不満らしい。

 まるで、おもちゃを取られた子供だ。


「ええ~? 俺はみんなを援護しようと、がんばっただけなのに。まあ、思ったよりあっさりと倒せちゃったのは事実だけど」

(わふ、敵が可哀想になったです)

(本当に容赦ないですね、主様)

「ええっ、俺が悪いの?」


 なぜか責められる俺を、スザクがフォローしてくれた。


「キャハハッ、とりあえず鋼殻竜にも、我々の攻撃が通じることが分かったではありませんか~。主様も連発するのは大変ですから、次は協力して倒せばいいのですよ~」

「あ~、そうそう、実は4発も連続して撃ったから、肩が痛いんだ」


 多少は工夫してあるものの、強力な弾を撃ち出す分だけティーガーの反動は大きい。

 実際問題、続けて4発も撃ったら肩がジンジンしていた。


「やはり何か対策をしないといけませんな。しかし、それ以上重くすると扱いにくいですし……」

「そうなんだよな~。何か他に反動を抑える方法はないもんかね」


 一応、反動を軽減するバネを付ける案なども考えたが、構造が複雑になって壊れやすそうなのでやめた。

 結局、肩に当たる部分にクッションを追加する、という話でその場は終わる。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 次に遭遇した鋼殻竜は、1発当てた後は仲間に任せた。

 銃弾で脚にケガを負った敵に、ヨシツネが嬉々として斬りかかっていく。

 さすがに剛力竜よりはだいぶ硬かったが、それでもヨシツネの攻撃は通用した。


 さらにベンケイ、ホシカゲ、トモエも加わり、鋼殻竜は防戦一方になる。

 いらだった敵が振るうトゲ付きの尻尾が脅威だったが、スザクの的確な指示で回避して事なきを得た。

 俺は要所要所で弾を撃ちこむだけで、あくまで援護役に徹していた。

 やがてヨシツネの剣によって、ボロボロになった鋼殻竜にとどめが刺される。


「お疲れさん。初めての鋼殻竜はどうだった?」

「ハアッ、ハアッ、ハアッ……噂どおりの、強敵、でした。しかし、勝てない、敵では、ないですね」

「フウーッ、たしかにそうですな。しかしタツマ様の援護がないと、やはり苦しそうですな」

「そうだね。最初に足を止めたから、有利に戦えたってのはあるでしょ」

「しかしいずれは、援護なしでも倒せるようになりたいですね」


 ヨシツネは剣を目の前に掲げながら、ニヤリと笑う。

 おそらく鋼殻竜を単独で倒す光景を思い描いているのだろうが、それはもう変態の領域だと思う。

 そんな話をしているうちに、鋼殻竜の遺骸が霞のように消え、魔石とつのが残された。


「おお~、でっかい魔石。それと角も残ってるね」

「ふむ、これはなかなか良い素材のようですぞ。売ればけっこうな値段になるでしょうな」

「さすがに俺たちの武器には、できないかな?」

「う~ん、微妙なところですな。すでにミスリルの武器があるので、それ以上のものにはならんでしょう」

「そんなもんか。じゃあ売っていいね。少し休憩してから、次に行こうか」


 その後も探索を続け、合計で6匹の鋼殻竜を倒すことができた。

 しかも敵の動きに慣れてきたため、最初に比べると半分くらいの時間で倒せるようになっている。

 さらに探索の途中で、またまた銀鉱石を見つけた。

 ベンケイに抽出してもらい、5kgほどの銀塊を手に入れる。


 思わぬ臨時ボーナスに上機嫌で地上へ戻ると、また迷宮前で夜を明かした。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 翌朝の馬車でカザキの町に帰還し、その足で冒険者ギルドを訪れる。


「コユキさん、こんにちは。だいぶ探索が進んだので、実績値を精算してもらえますか?」

「あら、久しぶりね、タツマ君。どれどれ…………ちょっと、何よこれ?」

「何か変ですか?」

「もうすでに鋼殻竜を6匹って、馬鹿じゃないの?……あなたたち、まだ白銀級になったばかりでしょ? もうほんと、呆れるしかないわね」


 なんかいきなり馬鹿とか言われてしまった。

 今日はやけに攻撃的である。

 そんなんだから冒険者に恐れられるんじゃないのかと思いながら、別の言葉を返す。


「ま、まあ、ミスリルの武器を手に入れたりとか、努力してますから」

「武器だけで強くなれば苦労しないわよ……ハァ、でもやっぱり、あなたたち才能あるのね。まあ、黄金級を目指してがんばりなさい」

「ありがとうございます」


 それから鋼殻竜の素材を売ったら、金貨10枚を超えた。

 さらに銀のインゴットで金貨5枚。

 毎度あり~。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 それから2日間は、武器の調整と休養に充てた。

 やはり鋼殻竜との戦闘は激しく、肉体にも武器にも疲労が蓄積していたのだ。


 ベンケイが武器を整備している間に、俺とヨシツネは探索に使えそうな道具を探して歩いた。

 ある店ではもふもふな毛皮を見つけたので、野営時の下敷きとして購入した。

 これがあれば、迷宮でもいくらか楽に寝られるだろう。


 そんな買い物の後、またギルドに寄ったら、コユキに声を掛けられる。


「ちょっとタツマ君。話があるんだけど」

「いや、俺は迷宮攻略でいそが――」

「いいからいいから、ちょっと来て」


 逃げる暇もなく、俺はギルドの1室に連れこまれてしまう。

 クールなコユキにしては、強引なやり方だ。

 これは何か、嫌な予感がするぞ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ