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俺の周りは聖獣ばかり ~使役スキルで成り上がる異世界建国譚~【改訂版】  作者: 青雲あゆむ
第3章 ミカワ修行編

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42.火力不足

 剛力竜ごうりきりゅうへのリベンジを果たした俺たちは、手頃な場所を見つけて昼食を取っていた。


「それにしても剛力竜はタフだったな~」

「まったくです。皮が固いので、なかなかダメージが入りませんでした」

「それでも後半は、けっこう通用してたんじゃない?」


 するとベンケイから解説が入る。


「いやいや、本来のミスリル武器の威力は、あんなものではありませんぞ。きちんと魔力を使えば、もっと深く切れるはずなのです」

「そうなの? だったらもっと修行してから挑んだ方がいいのかな」

「そうですなぁ……しかしいずれは実戦で使わねばなりませんし、肉体強化による恩恵もあります」

「まあ、そうだよね。それにしても竜種って、見た目以上に力が強かったり硬かったりするけど、あれってどうなってんの?」


 誰にともなく訊ねると、スザクが教えてくれた。


「もきゅもきゅ。真の竜種は魔力で肉体を強化できるから、この世の物理法則を大きく超えるのですよ~、もきゅもきゅ」

「うん、それは聞いたことがある。見た目は似てても、トモエのような亜竜とは大きく違うらしいね」


 するとそれを聞いたトモエが、申し訳なさそうに言う。


(お役に立てず申し訳ありません。私がもっと強ければ、あんなに苦労はしなかったでしょうに……)

「あ、いや、そういう意味じゃないよ。実際、トモエはよくやってくれてるし……でも、たしかにトモエにも魔力が使えたら、もっと楽になるのにね」

「使えるようになりますよ~、もきゅもきゅ」

「「え?」」


 スザクの発言に、皆が驚きの声を上げる。


「本当に、トモエも魔力が使えるようになるの?」

「もちろんですよ~。すでにホシカゲだって、魔力を使っているではありませんか~、もきゅもきゅ」

「「あっ!」」

「ワフ?」


 そういえば、俺たちはすでにホシカゲに魔力制御を教えていたのだ。

 おかげで彼はつたないながらも、ミスリル武器の切れ味を高めることに成功している。

 そういえば以前、聖獣クラスの魔物にならできると、スザクは言っていた。

 トモエには武器を持たせるつもりがなかったせいか、すっかり頭から抜けていた。


「そうか。トモエも聖獣だから、魔力の感触を覚えさせれば、使えるようになるかもしれないんだ。でもミスリル武器を使わないのに、意味あるのかな?」

「魔力の利用には、必ずしも刃物を使う必要はないんですよ~。頭部に魔力を込めて頭突きするだけでも、敵へのダメージは高まりますからね~」

「へ~、そうだったんだ。魔力が敵の防御を打ち砕くような感じ?」

「そんな感じですね~。さらに魔物であれば、筋肉や腱なども強化できますよ~」

「魔物であればってことは、俺たちにはできないの?」

「そうで~す。人族や妖精種は、あまり骨格が強くないので難しいんですよ~。ヨシツネのような獣人種であれば、多少は強化できるかもしれませんね~」


 この話にヨシツネとホシカゲ、トモエが食いついた。


「俺なら魔力による肉体強化が可能なんですね。ぜひやり方を教えてください」

(私も魔力制御を覚えます、主様)

(わふ、僕も強化できるです?)

「焦らない焦らない~。とりあえずトモエは後で、主様から魔力制御を習っておいてくださいね~。徐々に指導してあげますよ~」


 とりあえずスザクが面倒を見てくれるらしい。

 本当に3人の体力が強化されるなら、実に心強い話だ。


「よし、後でトモエにも魔力制御を覚えさせよう。だけどすぐに効果は得られないから、今ある戦力を有効に使う相談もしようか」


 それからしばらく、さっきの戦闘の問題点と改善方法を話し合った。

 やがて作戦が煮詰まってきたので、いよいよ実戦で試すことにする。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 再び探索を開始すると、すぐに新たな剛力竜が見つかる。


「また俺が攻撃したら、みんなで突っこんで」

「「了解です」」


 俺は再びドーム外の通路に伏せ、魔導銃で敵に狙いを付けた。

 ここでスザクがパタパタとドームの上部へ舞い上がると、使役レーダーに情報が流れてくる。

 今回は魔物が1匹だけなので、レーダーの意味は薄いが、位置情報が補完されて、銃の狙撃精度が高まった。

 それを受けて俺は、剛力竜に向けて魔導銃をぶっ放した。


「グギャーーッ!」


 弾丸は狙いどおりに剛力竜の目を貫き、血しぶきと苦鳴がまき散らされる。

 不意打ちで片目を奪われた剛力竜が、殺意をみなぎらせて立ち上がった。

 そんな敵に対して、仲間たちが向かっていく。

 今回はトモエを真ん中に据えて、他の者は横に回りこんだ。


 囲まれた剛力竜が、トモエに向けて右前足を振り上げる。

 そこで俺が援護で胸元に1発当ててやると、敵の攻撃が鈍る。

 その隙にトモエが身をひるがえし、敵を尻尾で殴りつけた。

 敵へのダメージは少ないが、鮮やかな連携が取れた。


 その後も俺は剛力竜の動きを牽制することに集中し、仲間たちがその隙に攻撃を加えていった。

 トモエの頭突きは敵の体を痛打し、ホシカゲは後ろ足に斬りつけている。

 その横でヨシツネは剣で剛力竜の鱗を裂き、ベンケイの戦斧が肉に食いこむ。


 そんな攻撃をくらい続けた剛力竜が、不用意に右前足を大きく振りかぶった。

 すかさずトモエが左前足に頭突きをかますと、敵が大きくバランスを崩す。

 その隙を逃さず、ヨシツネが首筋を切り裂くと、ベンケイも戦斧を頭部に叩きこんだ。

 それらが致命傷となって、剛力竜はとうとう息絶える。


「フウッ、ようやく終わったな」

「アハ、さっきより、はやいよ」

「そうだな。さっきよりはだいぶ速くなった」


 ニカの言うとおり、さっきよりは短時間で決着がついた。

 おそらく半分ぐらいにはなってるだろう。

 俺は立ち上がると魔導銃を肩に掛け、仲間たちに合流する。


「お疲れさん。だいぶ早く倒せるようになったね」

「ハアッ、ハアッ……そう、ですね。さっきよりは、早く、倒せました」

「フウッ……まだまだ、苦労しますが、多少は、慣れましたかな」


 とはいえ、ヨシツネもベンケイも肩で息をしており、激戦だったのは間違いない。

 するとスザクが俺の肩に下りてくる。


「上から見ていても、皆さんの連携が上達していましたよ~。反省会は無駄ではありませんでしたね~」

「ああ、スザクもよくやってくれたよ」

「キャハハッ、どうせ私は戦っていませんけどね~」

「いやいや、スザクのおかげで射撃精度は上がってるから」

「キャハハハハ、主様は私がいないとダメですからね~」

「何いってんだ、お前」

「あいたっ」


 偉そうなことを言ってるので、またデコピンをかましておいた。



 その後、もう1匹だけ剛力竜を狩ってから地上へ戻る。

 魔石を精算すると、3匹分で銀貨60枚にもなった。

 またもや最高値更新だが、あの強さからすれば安すぎだ。

 しかし今回は3回とも形見が残ったので、売ればそれなりの収入になるだろう。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 その晩はまた広場にテントを張って野営した。

 夕飯を食いながら、また反省会をする。


「今日はそれなりに戦えたけど、魔導銃の火力不足もはっきりしたんだよな~」

「そうですか? 剛力竜に傷を与える飛び道具なんて、そうそうありませんよ」

「そうですぞ。よほど強力な魔法か、魔法を付与した武器でもなければ、遠くから竜種にダメージを与えるなどできませんからな」

「う~ん、そうかもしれないけど……このままじゃすぐに行き詰まると思うんだよな。次の鋼殻竜こうかくりゅうは、さらに硬いって話だし」

「ふ~む、それはたしかにそうですが……何か腹案があるのですかな?」

「うん、もっと強力な魔導銃を作りたいんだ。ベンケイには手間を掛けるけど、また頼みたい」

「ハハハッ、儂のことはお気にせず。むしろ未知の武器を作ることに、ワクワクしますわい」


 ベンケイはほがらかに、俺の遠慮を笑いとばした。


「そっか。それじゃあ、もう1日ぐらい潜ってから、カザキに帰ろう。それで新しい武器を作るんだ」

「それなら俺たちも、魔闘術をもっと磨きますよ。以前、スザクが言っていた、武器への属性付与も試してみたいですね」


 ヨシツネもやる気になっている。


「うん、そうそう。それくらいしないと、もっと先には進めないだろうからね」

「そうですな」


 少々探索が上手くいったからって、うぬぼれてる余裕なんかないのだ。

 また明日から、がんばろう。

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