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俺の周りは聖獣ばかり ~使役スキルで成り上がる異世界建国譚~【改訂版】  作者: 青雲あゆむ
第2章 アリガ迷宮探索編

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21.ストーカー精霊

 ドワーフのベンケイと知り合った俺たちは、彼に寄り添う土精霊ノーミーの存在を知った。

 しかもそれを暴いたスザクは、そのノーミーこそがベンケイの疫病神であり、精霊契約を邪魔した存在だと言う。


「ななな、なんですと? 儂はノーミーに恨みを買っているのですかな?」


 ベンケイが大声を上げると、ノーミーは驚いて姿を隠した。

 しかしそれでも彼女はベンケイが気になるのか、少し離れた木陰から顔を出し、こちらの様子をうかがっている。


「たぶん逆ですね~。そのノーミーはあなたのことが、好きで好きでたまらないのだと思いますよ~」

「なんで好きなのに、疫病神になるんだよ?」


 俺のつっこみに、スザクも首をかしげる。


「さあ? それは私にも分かりませんよ~。とりあえず彼女の話を聞いてみますね~」


 スザクはパタパタとノーミーの所まで飛んでいくと、何やら彼女と話しはじめた。

 俺たちは動揺するベンケイをなだめて待っていると、ようやくスザクが戻ってくる。


「やはり私の思ったとおりでしたよ~。あのノーミーちゃんは、ベンケイが生まれた時に恋をして、陰から見守っていたそうで~す。しかしあいにくと、精霊召喚の儀式でベンケイのパートナーには選ばれなかったため、それを邪魔したそうで~す」


 なんとあのノーミー、ベンケイを生まれた時から見守ってきたのに、契約相手に選ばれなかったことに逆上したんだとか。

 そしてブチ切れた彼女は精霊召喚の儀式に乱入し、ベンケイの契約候補を追い払ってしまう。

 さらにその後もベンケイに悪い虫が付かないよう、こうしてつきまとっているそうな。


 しかもスザクの推測では、そんなノーミーの執念に魔物が引き寄せられ、ベンケイの周りに不幸を引き起こしてる可能性が高いとも。

 うはっ、ベンケイの夢をぶち壊したうえに、不幸まで呼び寄せるってなんだよ。

 それじゃまるで、ストーカーだ。


 スザクの話を聞いたベンケイは途方に暮れ、とうとう泣きはじめた。


「そんな……我々の友人のはずの精霊が、儂を不幸にしていただなんて……こんな、こんなことがあっていいのか……ウオーーッ!」


 彼はボロボロと涙を流しながら、慟哭どうこくする。

 するとノーミーの方は、心配そうな顔でベンケイをじっと見守っている。

 自身がやらかしたことは棚に上げて、”彼には私が付いてなきゃ駄目なの。いつまでも私は味方よ”、とでも考えていそうだ。


 ベンケイがあまりにも可哀想になった俺は、スザクに相談を持ちかける。


「なあ、スザク。あのノーミーとベンケイを、契約させればいいんじゃないのか?」

「あいにくとそれができないのですよ~。あのノーミーちゃんはとてもシャイで、”ベンケイと直接契約なんてしたら死んじゃ~う”、と言ってるんで~す」

「は? なんだ、それ。ベンケイの契約を邪魔しておきながら、責任も取れねえのか……」

「愛とはかくも不条理なものなので~す」


 呆れて言葉も出ねえ。

 ベンケイに救いは無いのか?


 しかしここで、スザクがおかしなことを言いだした。


「しか~し、そんな彼に朗報がありま~す! どうですか、ベンケイ! あなたが主様の家来になれば、鍛冶魔法が使えるかもしれませんよ~」

「「ハアーッ?」」


 ノーミーとは全く関係ない話に、みんなが変な声を上げる。

 しかし当のベンケイだけは、なぜかそれに食いついた。


「そ、それはどういうことですかな? なぜタツマ殿の家来になれば、鍛冶魔法を使えると?」

「キャハハハハッ。もしも主様があなたと、そしてそこのノーミーとも使役契約を結べば、あなたは土魔法が使えるようになりま~す。それはつまり、鍛冶魔法も使えるという理屈ですよ~」


 スザクが翼を振り回しながら、怪しい仮説を熱弁する。

 しかしそれはあくまで仮説であって、なんの保証もないはずだ。


「スザク、本当にそんなことできるのか? 適当なことを言うんじゃないぞ」

「たしかに確証はありませんよ~。しかし主様の使役術の特性を考えれば、成功の可能性は高いのですよ~」


 それを聞いたベンケイが、真剣に悩みはじめる。

 しかしさすがに判断がつきかねたのか、彼は保留を提案する。


「さすがにこの場では決断できぬので、しばらく考えさせてもらえませんかな? そしてしばらくの間、儂をお仲間に加えていただけると助かります」


 ベンケイの真剣な表情を見ると、その頼みを断るのは忍びなかった。

 それにベンケイの話を聞く限り、彼は実直な苦労人のようだ。

 迷宮攻略のためには仲間が必要なのだから、彼の提案は渡りに舟である。


「いいですよ。契約するかどうかは別として、しばらく一緒に行動しましょう。ぜひ、俺たちの迷宮探索を手伝ってください」

「こちらこそ、願ってもない申し出です。誠心誠意、お手伝いさせてもらいますぞ」

「それじゃあ、とりあえず町に戻って装備を整えましょう。ついでに服も買いましょうか」

「いや、儂はこのままでけっこうです……その、元手がありませんので……」

「それぐらい貸しますよ。最近はけっこう稼げるようになってるから、すぐに元は取れますって」

「そ、それではお言葉に甘えて……」


 それからすぐに町へ戻り、ベンケイの装備を整えた。

 ボロボロの衣服を着替え、革鎧に鉄の盾、両刃の戦斧を買い揃える。

 ベンケイは盾と斧は今までのを使うと言っていたが、どちらもボロボロだったので強引に買い換えた。

 これだけで金貨2枚近くを使ったが、後悔はしていない。


 まだ時間があったので、ベンケイに2層侵入資格を取らせるべく迷宮の1層に潜った。

 彼の加入効果は抜群で、魔物を物ともせずに突き進む。

 あれよあれよという間に守護者部屋に到着し、あっさりと1層を突破してしまった。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 1層を攻略して上機嫌で家へ戻ると、テッシン夫妻にベンケイを紹介した。

 最初、夫妻は驚いていたが、またもや快く迎えてくれた。

 本当にいい人たちだ。


 当然、夕食ではベンケイの話になる。


「ベンケイさんはやはり、オウミ国の出身ですか? あの辺は鍛冶業が盛んで、ドワーフも多いと聞きます」

「はい、オウミで鍛冶師に成り損ねたため、ここまで流れてきました……しかし本当にこのような見ず知らずの者を、泊めていただけるのですかな?」

「タツマが連れてきたんだから、大丈夫でしょう。あいにくと部屋の空きは無いので、ヨシツネ君の部屋で寝てもらいますが」

「すみません、テッシンさん。もちろんベンケイさんの家賃も払いますから」

「まあ、そうすればいい。そういうわけだからベンケイさん、遠慮なんてしなくていいんですよ」

「ご親切、まことにかたじけなく、クウウッ」


 感激したベンケイが、また泣きだした。

 けっこう涙もろいな、この人。

 というよりも、今までひどい目にばかり遭ってきたので、親切が身に沁みるのかな。


 その晩、ベンケイはヨシツネの部屋で床の上に寝てもらった。

 さすがにベッドは無いので、しばらくはマットを敷いて寝てもらう。

 さんざん野宿をしてきた彼にとっては、これだけでも極楽だと言っていたが。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 翌日は早速、朝から迷宮2層に潜った。

 ここでもベンケイの加入効果は抜群で、序盤の幻影狐を蹴散らしながら中盤へ進んだ。

 するといきなり3匹の風牙狼が現れ、俺たちに緊張が走る。


 しかし今日は前衛が2人もいるので、心強さが違う。

 まずヨシツネとベンケイが前に出ると、それぞれオオカミを1匹ずつ拘束する。

 そして残りの1匹をホシカゲが相手する間に、俺は攻撃に回った。

 まずヨシツネの背後でアトラトルを構えながら、攻撃のチャンスをうかがう。

 やがての誘導で、オオカミが横腹を見せた。


「ギャインッ!」


 すかさず槍をぶち込んで後をヨシツネに任せると、今度はホシカゲの応援に回る。

 かろうじてホシカゲが押さえていたオオカミの隙を突き、またもや槍を叩きこんだ。

 弱ったところを俺が熱弾ヒートで援護してやると、ホシカゲが敵の息の根を止めた。


 その頃にはとっくに敵を仕留めていたヨシツネが、ベンケイの支援に回っている。

 1対1なら手強い風牙狼も、2人がかりなら楽勝だ。

 さほどしないうちにベンケイの戦斧が頭部にヒットし、最後の1匹も息絶えた。


「むう、実に見事な連携でした。それにタツマ殿は、面白い道具を使っておりますな。実に強力な攻撃でした」

「ああ、これ? 自作の投槍器なんだけど、迷宮では便利ですよ。それにしても、ベンケイさんも強かったですね」

「いやいや、儂は足が遅くて、機敏に動けないのが難です。しかしこのパーティの中でなら、少しはお役に立てそうですな」

「そうそう。弱点があっても、仲間が補えばいいんですよ。この調子で、バリバリいきましょう」

「ええ、よろしくお願いしますぞ」


 その後も危なげなく探索が進んだ。

 風牙狼が3匹までなら、さっきのパターンで楽に対処できる。

 さすがに4匹の時には少し苦戦したが、ヨシツネとベンケイががんばってしのいでくれた。


 なんと言っても、俺への攻撃が減ったので、安心して槍を投げることができる。

 おかげでその威力と精度が高まって、有効にダメージを与えられるようになってきた。

 やはり頼れる前衛の存在は大きい。


 その日のうちに中盤の半分以上を探索し終え、風牙狼を20匹も倒すことができた。

 おかげで魔石だけで金貨1枚もの稼ぎになり、その中から4分の1をベンケイに渡す。

 いきなりの高収入にベンケイも大喜びで、彼の装備代金も徐々に返してもらえそうだ。


 このまま彼が俺との契約を受け入れて、一緒に戦えればいいのだが。

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