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俺の周りは聖獣ばかり ~使役スキルで成り上がる異世界建国譚~【改訂版】  作者: 青雲あゆむ
第2章 アリガ迷宮探索編

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10.初めての迷宮探索

 仲間に前世話を語ってから、俺たちは1週間ほどゴブリンを狩り続けた。

 おかげでそこそこの防具を揃えることができて、いっぱしの冒険者らしくなっている。

 今は革の帽子、胸当て、籠手、腰当て、すね当てを装備しており、多少は敵の攻撃にも耐えられるだろう。


 武器は相変わらずメイス主体だが、短剣も買い足した。

 毎日、ゴブリン相手に戦っただけあって、メイスの振り方も少しは様になってきている。

 今なら熱弾ヒートなしでも倒せるんじゃないかな。

 まあしょせん、ゴブリン相手の話なのだが。


 それとゴブリンを狩り続けたおかげで、実績値が溜まって冒険者等級が上がった。

 実績値ってのは、ギルドの依頼をこなしたり、魔石や素材を売ることで加算されるものだ。

 これが溜まるにつれて、冒険者等級も上がっていく。


 今まで最下級の樹木級だったのが、下から2番目の青銅級になった。

 冒険者等級は下から順に樹木、青銅、鋼鉄、白銀、黄金、聖銀、金剛と上がっていく。


 周囲の評価は、鋼鉄級でようやく1人前で、白銀以上なら上級だ。

 金剛級ともなれば、1国に1人いるかどうかってぐらい希少な存在で、英雄と言っても差し支えない。

 俺もまずは鋼鉄級を目指し、できれば白銀級になりたいと考えている。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 青銅級になったのを機に、俺は迷宮へ挑むことにした。

 テッシンとシズクにはずいぶんと心配されたものの、強くなるためには避けられない。

 決して無謀な行動はしないことを条件に、納得してもらった。


 彼らに見送られて俺は、町の北側にある迷宮へとおもむく。

 ここはアリガ迷宮と呼ばれる場所で、数十年前に発見されたらしい。

 迷宮ってのは地下に広がる迷路のような空間で、魔物が大量に発生する危険な場所だ。

 地上では魔素に冒された獣が魔物になるが、迷宮の中では魔素そのものから魔物が作られるんだとか。


 そのため多種多様な魔物がおり、危険度も高い。

 しかしだからこそ迷宮は、素材の宝庫として重宝される。

 そこで採れる魔石は、魔道具の燃料とか魔法の触媒などで需要があるし、たまに入手できる魔物の体も武具の素材となる。

 運が良ければ貴重な鉱石や宝石、さらには魔道具だって見つかることから、迷宮に挑む冒険者は絶えないのだ。


 なぜ冒険者が挑むかといえば、特に迷宮において特典があるからだ。

 迷宮と冒険の神スサノオが残したと言われる冒険者システムだが、これに登録すると肉体強化の加護が得られる。

 そのうえで魔物を倒すと、”イノチ”と呼ばれる生命力が体に取りこまれ、肉体が強化されるのだ。


 つまり魔物を倒すほど体が強くなり、より強い魔物にも対抗できるようになっていく。

 特に迷宮のように周りを囲まれた空間では、イノチの吸収効率が何倍も高くなる。

 そのため冒険者は迷宮で効率的に体を鍛え、金儲けにも勤しむというわけだ。


 ちなみに強化の程度は1レベルにつき5%ほどと言われ、肉体の強度や筋力、持久力などが上昇する。

 これがタツマが迷宮に挑む最大の理由である。

 魔物に襲われ無残に死んでいった両親のようにならないため、そして大事な人を守れるようになるため、俺は強くなりたいのだ。



 迷宮前の広場に着くと、朝っぱらからけっこうな賑わいだった。

 そこには仲間を待つパーティがいれば、冒険者目当ての物売りもいるし、案内人や野良冒険者の姿も見える。

 案内人は迷宮内を案内する職業であり、野良冒険者は一緒に潜ってくれるパーティを探している奴らだ。

 第1層は地図が安いし難易度も低いから案内人はいらないし、野良冒険者は稼げそうなパーティを探してるので、なおさら関係ない。


 とりあえず窓口で1層の地図を銀貨2枚で買い、内容を確認する。

 地図がえらく安いのは、1層の難易度が低く、完全に探索しつくされているからだ。

 地図によれば、1層は序盤、中盤、深部と分かれているらしい。

 それぞれの通路は迷路のように入り組んでいて、行き止まりも多い。


 序盤よりも中盤、中盤よりも深部と、奥に進むほど強い魔物が出るのは当然だろう。

 そして深部の奥には守護者部屋ってのがあって、そのぬしを倒せば第2層に進める仕組みだ。

 ここで守護者討伐の証が冒険者カードに刻まれれば、次回は入り口から2層へ転移できるようになる。


 そんな風に地図に見入ってたら、すぐ近くで怒声が響いた。


「おらおら、チンタラしてんじゃねーよ、この愚図がっ!」


 その直後、俺の前に大荷物を抱えた男性が倒れこんできた。

 どうやらどこかの冒険者が、この男を蹴りとばしたらしい。

 彼は茶髪の大柄な男性で、頭には獣の耳が生え、腰からムチのような尻尾しっぽが伸びている。


 えり回りにタテガミのような毛が生えていることから、おそらく獅子人ししびと族だろう。

 それはこの世界に住む獣人種の中でも、最強と言われる種族だ。

 しかし彼の首には首輪が付けられ、奴隷身分であることを示している。


 つまり彼は主人には逆らえず、このような屈辱的な扱いにも耐えねばならない境遇だ。

 一応、無闇に奴隷に危害を加えることは禁じられているが、陰でひどい目に遭う者も多いだろう。

 実際にその男はひどく薄汚れ、死んだ魚のような目をしていた。

 彼はぎこちない動きで立ち上がると、冒険者の一団に従って迷宮へ入っていった。


(わふー、あの獣人さんは凄く強そうなのに、何か変だったです)

「ホシカゲもそう思うか? なんか動きが、ぎこちなかったよな?」

「おそらく彼は、奴隷紋に衰弱の呪いが付けられているのでしょうね~」

「へ~、奴隷紋にはそんな効果もあるんだ」


 スザクが言う奴隷紋とは、奴隷になった時に体のどこかに刻まれる魔法的な紋様のことだ。

 主人への服従を強制するのは知っていたが、呪いを付ける機能まであるとは知らなかった。


「でもなんで、そんなことするんだ? わざわざ衰弱させたら、価値を損なうだけなのに」

「奴隷に対する罰として付加されるようですよ~。誰かにひどく、恨まれてるのかもしれませんね~」

「ふ~ん、そういうこともあるのか……」


 かわいそうな話だが俺には関係ないので、それ以上考えるのをやめ、迷宮の入り口へ向かう。

 入り口には下へ続く階段があって、その周りが簡単な建物で囲まれていた。


 その前では衛兵が、入場料として1人銀貨1枚を徴収していた。

 ここを管理する国が徴収しているのだが、それはちょっとどうかと思う。

 冒険者なんてその日暮らしの、鉱山労働者みたいなもんだ。

 迷宮から出た魔石は、国が強制買取りしているので、タダにしてもいいだろうに。

 まあ、力のない一般人が入りこんで、死ぬのを避ける意味合いもあるだろうか。


 俺は銀貨1枚を払うと、いよいよ迷宮へ踏みこんだ。

 石造りの階段をしばらく降りると、まず広い部屋に出る。

 部屋の中央には腰の高さほどの台座があり、水晶が埋まっている。

 これが転移水晶ってやつで、守護者を倒せばここに戻ってこれるし、次からは2層以降へ直接行けるという話だ。


 ちなみに迷宮内は、むき出しの岩肌の所々が光っていて、行動に困らない程度には明るい。

 おかげで松明たいまつや照明の魔道具を持ち歩く必要がないのは、冒険者に優しいと言えるだろう。


 部屋の奥の通路を進むと、左右に分かれていたので左へ進む。

 右側は守護者部屋へ続く道なのだが、今日は軽く様子を見るつもりなので、逆にした。

 ちょっと通路を進むと、ホシカゲから警告が入る。


(わふ、少し先に気配がするのです。たぶん4匹ぐらい)

「お、いよいよか。この序盤に出るのは洞窟鼠どうくつねずみだ。4匹なら余裕だろうから、ホシカゲはいつもみたいに突っこんでくれるか?」

(分かったです)


 20メートルほど進むと、チューチューという声が聞こえてきた。

 少し広くなった部屋をのぞき込むと、馬鹿でかいネズミがいる。

 どれくらいでかいかというと、体長が30センチくらい。

 地球でいうとカピバラに似たような魔物で、そんな奴らが4匹、地面を嗅ぎ回っている。


(行け、ホシカゲ)

(はいです)


 俺の指示でホシカゲが突っこむと、ネズミたちが逃げ散る。

 ちょうど俺の方に1匹向かってきたので、メイスで仕留めた。

 生き物を殺す感触は相変わらず不快ではあるが、ゴブリン狩りでだいぶ慣れている。

 さらに逃げ回る洞窟鼠を俺とホシカゲで仕留めていくと、あっさりと迷宮での初戦闘は終わった。


「フウッ、さすがにこれぐらいじゃあ、汗もかかないな。あ、魔石を取ってくれるか、ホシカゲ」

(了解なのです)


 俺は洞窟鼠の心臓近くにナイフを突き刺し、魔石を取りだした。

 残った体はしばらくすると迷宮に取りこまれるらしいので、そのまま放置だ。


 その後も淡々とネズミを狩り続け、正午までには30匹以上を狩っていた。

 さすがに疲れたので、適当な場所を見つけ、昼飯にする。

 またホシカゲやスザクにオニギリを分けてやりながら、俺も別のをほおばった。


「半日で魔物30匹って、やっぱ凄いな、迷宮って」

「もきゅもきゅ……ホシカゲが見つけてくれる分、遭遇頻度は高いですね~。主要な道じゃないから、魔物が多いのもありますが~、もきゅもきゅ」


 守護者部屋へ続く道は人通りも多いから、魔物はすぐに狩られる。

 逆にメインストリートを外れれば、魔物との遭遇頻度は高まるというわけだ。


「そうだな。でも弱い俺にとっては、これぐらいを相手に鍛錬するのがいいと思うんだよね。おかげでメイスの扱いにも慣れてきたし」

「さすがは主様。とってもヘタレですね~。でもそれぐらい慎重でよいと思いますよ~」

「とってもヘタレって、相変わらずひどいよね……」


 スザクが普通に褒めてくれるような日は、来るのだろうか?

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