囚われのマリーナ
暗く、砂ぐさいところだった。あちこちで、蜘蛛が這うような音が聞こえる。前は見えない、目隠しをされているようだ。
「あぅえぇー!えぅ!あぅうぃ!」
やはり、猿轡をつけらている。声の響きからして、それなりの大きさの建物だろう。どうしてこうなってしまったのか……
昨日? 意識がなくなってから何日立ったのかわからないが、多分昨日だろうか。普段道理、寝に行って、布団に入ったあとに──
「大丈夫でふか? マリーナ姉さんには、少し手伝ってもらいたいんでふ」
スフィラだ、スフィラに襲われて……あっ、変な意味じゃないで。
「聞いてまふ? あいつが来る前に早くしないと」
一人でノリツッコミしてる場合やなかったわ。それより、あいつって誰なん? スフィラ、セムたちのことあいつなんて呼ばんよな。それより、はよこの猿轡取ってもらわない喋れもしないやん──あっ、とてくれたわ。
「なぁ、スフィラ、あいつって誰なん?」
「それ、聞いちゃいまふか……驚かないでくださいね」
「うん。それは──」
──コツコツコツと、石床を歩く音がマリーナの耳に聞こえて来る。 足音と共に圧倒的な威圧感を放つ存在が近づいていることにも、気付いた。
「こいつが、餌ってわけかぁ」
低く、耳に残る声。見た目は、黒髪に黒目。年齢は、うちと同じくらい? けど、只者ではないはずや、気をつけなあかん。
「お前、名前なんてんだ?」
「なんで、あんたに言わなあかんの、それよりあんた誰なん? うちをさらったくらいやからええ人ではなさそうやけどな」
「へっ、いきなり喧嘩売ってくるたぁいい度胸じゃねえか。気に入った、俺はセイヤ。"勇者セイヤ・ハイリーグ"だ!」
「勇者!?」
まさか、ここで勇者に会うなんてな、正直、今のままや勝てる気がせえへん。セムとヤヅキも強いけど、こいつには勝てへんかもしれん……。
「名乗ってくれたんやったらうちもなのらなあかんな。うちはマリーナ・エインフラン、ただの冒険者や。こっから逃してくれるとたすかんねんけどな?」
はやく、こっから出て、セムたちに合流せな、あいつらのことやからこっち来るかもしれん。けど、今来たらまずい。
「ハッ、そりゃ、残念だな! こっからは出さねぇよ……と思ったが、もうすぐ出してやるよ。お目当てのもんが来たからなぁ!」