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銃剣士英雄伝  作者: オオウミガラス
第一章 旅立ちの準備
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7話 裏切り者には死を

 まだ陽が昇る前、そんな早朝にヤヅキは、目を覚ました。激しい尿意が襲ってきたためトイレに行こうとしたからだ。布団から出ると凍るような寒さに震える。


「砂漠って、寒すぎるな。昼間の暑さが嘘みたいだ……セム、トイレ行ってくる」


「ん、ん〜。僕も行くよ。ちょっと待って」


 凍える廊下を二人歩くセムとヤヅキ。セムが違和感を感じ振り向く。


「マリーナとスフィラの部屋の扉が開いてる」


「あっ!とりあえず見に行くぞ」


 部屋に入ると一枚の手紙が目に入った。しかし、いるはずの二人の姿が見えない。


「あっ、あぁ……マリーナが、マリーナがいない」


「スフィラもいねぇぞ! 気になるのはそれだよな」


ヤヅキは、机の上に置いてある一枚の手紙を指さして言った。そしてそれを読んだヤヅキは怒りをあらわにし、セムは取り乱した。

何故なら手紙には『マリーナ姉さんの身柄は預かった。場所はキャマティクル砂漠の中心部【キャマティクル神殿跡】』と、書いていたからだ。


 ヤヅキとセムは、町から出る前に門番のいる南門に向かった。町に入るとき意味有り気な発言をしたからだ。


 ヤヅキとセムは、肺が裂けそうなくらい全速力で呼吸もなもならぬまま走った。川を飛び、民家の屋根をつたい走り続けた。


〚イア・ブラピオス・駈〛


セムが、得意な無色魔法をつかう。これは対象の移動速度を上げる魔法だ。セムはこれを自分とヤヅキにかける。二人は息を荒げながら門番の前についた。


「はぁ、はぁ、おい! 門番! いるか!」


「なんだ。朝から騒がしい。って、あんたは昨日の──」

───

──


「やっぱりな、スフィラが裏切ったんだろ」


「な、なんでスフィラの名前を! あなた何もんなんだよ! マリーナは、どこにいるんだ!」


 門番の言葉にセムが食いつく。普段は落ち着いているセムが今は取り乱している。セムにとってマリーナとは、それほど大きな物なのだ。


「詳しく話すと長くなる。あと、ここじゃ駄目だ、入れ」


「あぁ、セム来いよ」


「うん」


 門番に招かれ二人は衛兵小屋にはいった。今はこの門番しかいない。


「ここ、衛兵小屋だろ? あんたしかいないのか?」


「あぁ、衛兵小屋というより俺の家だしな……で、本題だ」


「はやく、どこにいるの? どこにマリーナは、マリーナは?」


「兄ちゃん心配すんな。殺されてはいない……はずだ。今度こそ本題だが、単刀直入に言おうスフィラは、"愛勇教団"だ」


「スフィラが、愛勇教団!? ありえねぇ、あんなに勇者の恨み言言っといてか?」


「あぁ、愛勇教団と言っても大きく分けて二種類あるからな。一つは普通に勇者好きな奴ら。もう一つは村や家族を人質にされ、勇者に従わざるを得ない奴らだ」


「そうなのかよ……けど、なんでお前がそこまで知っているんだ?」


 最後のヤヅキの疑問と同時に空気が凍りつく。ヤヅキとセムは臨時戦闘態勢に入るが……


「おいおい、俺はお前らに危害は加えないぜ」


 そう言って門番は、両手を上げた。二人も戦闘態勢を解く。


「そうか、お前が何者かさっぱりわからねぇけど、俺らに害は与えないんだな」


「だからそう言ってんだろ。早く行けよ、あと最後に……この街は愛勇教団の支配下にあるといっても過言じゃないぞ」


「まて、最後の言葉が聞きづてなれないどういうことだ?」


「そのまんまの意味だよ」


 門番は、深く息を吐いてから話し始めた。


「この街はなぁ、街の方針を五人の代表が取り決めてるんだよ。で、その代表のうち四人が愛勇教団の奴なんだよ、わかっただろ」


「まじかよ、この街まで愛勇教団の手に落ちてんのか……で、なんでそこまで知ってるのか? って聞きたいけど聞いたらだめだよな?」


「あぁ、飲み込みが早くて助かるわ。とりあえず早く行ってくれ。こんなことしてんのが愛勇教団の奴らにバレたら俺がやばい」


「ありがとよ、俺が戻るまでこの街を愛勇教団の奴らに取られるなよ!」


「……お前が戻ってこれたらな」


「? そりゃ戻ってくるぜ。行ってきまーす」


「早くいけっ」


 色々とありつつも、情報を収集したヤヅキとセムは急ぎ、【キャマティクル神殿跡】目指して駆け出した。地を蹴り、北門に向かって全力で走る。セムの呪文も駆使し、五分ほどで北門までついた。


「お前たち、こちらはキャマティクル砂漠のある北門だ。王都には南門から行くんだぞ」


 北門にいる門番に止められたが、


「俺達はキャマティクル砂漠に用がある冒険者なんだ。とうしてくれないか」


「そうか、砂漠は、危険だから死なないように気おつけろよ。もちろん疲れたときはこの街に戻ってくるだぞ」


「わかった、ありがとう」  


 門を越えたとたん、ヤヅキ達は言葉を失う。何故ならそこには、街の中では想像もできないような大きな砂漠が広がっていたからだ。乾いた砂が強風に煽られ、顔にペチペチと当たる中、二人は全力で砂漠を駆ける。足を砂に取られないように跳ねるようにして走る。だが、門番の言ったとおり魔物もよく出る。しかもそれなりの強さを持っている。


「セム、走り抜けるか?」


「そうだね、魔力は出来るだけ温存しときたいからね、出力上げるよ、〚メル・ブラピオス・駈〛」


 一気に速度が二倍ほど上がる、元々普段の三倍ほどで走っていたので、今の魔法の効果もかかり8倍まで上がる。この速度になると魔物の驚異は無いにも等しいが、巻き上げる砂が二人を傷つける。ただの砂でもそれなりの速度で当たると当たりどころによるが致命傷にもなりかねない。


「セム、物理攻撃をかき消す障壁を頼む」


「これ以上使うと魔力が持たないかも……戦闘はヤヅキに任せるよ」


「任せろ! それより、早くしてくれ。痛い」


「わかったよ、まってね〚イア・ブラピオス・物護〛」


 これは物理攻撃から、一定時間が経つか、一定ダメージを受けない限り物理攻撃から守ってくれる。砂自体に攻撃力はほぼ無いので、そう簡単には無くならない。

───

──

「はぁ、はぁ、はぁ、やっと、ついたか」 


「はぁ、そうだね、はぁはぁ」


 二人は砂と同じような色をした神殿の入り口と思われる場所に来ていた。とても大きな神殿で、見るものに威圧感を与える、そしてとても静かだ。人や魔物はおろか、虫さえ居ないと思わせる静けさが神殿を支配している。


「よし、いくぞ!」


「そうだね、早く取り返しに行くよ、マリーナを!」




―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

無属性

ブラピオス・駈  走る

ブラピオス・舞  跳ぶ

ブラピオス・刎  斬る(はねきる)

ブラピオス・断  斬る(断ち切る) 

ブラピオス・物護 守る(物理攻撃)

ブラピオス・術護  守る(魔法攻撃)


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