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開き直って満喫中

作者: キリシヲ

 これはどうなっているのだろうか。

 とある王都の下町、そこにあるパン屋に併設されたカフェの常連はやや変わっている。


「ミカミー!遊びにきたよー!」


 晴れやかな笑顔の青年はこの国の第一王子だ。いつもは無愛想でこんな明るくはない、むしろ暗い男。女子は顔と地位しか見てないのは本当なんだと呆れたが、なるほどこの笑顔は男の俺でもドキリとしてしまう程だ。

 下町にはこっそり来たのだろうか。護衛も連れず、一人でここにやってきた。まぁこのチート王子は護衛なんていらないだろうがな。


「ミカミなら今、わたくしの給仕中です。お待ちなさい」


 王子に声をかけたのはこの国一番の貴族の令嬢だ。地位も高ければ、プライドも高い。スタイルは抜群。おまけに顔もいい。冷たい中に気品のある顔立ちで、貴族令嬢より女騎士と言われる方がしっくりくる。だが、この女は性格が悪いことで有名だった。

 しかし、それも今は過去の事。ここにいる女は貴族令嬢でも性格の悪い女でもない。カフェでお茶を楽しむ一人の客に過ぎない。


「はーい、オフェリア。お待たせ。今日はカツドンでいいんだっけ?」


 女、オフェリアに料理を運んできた女性はミカミ。オフェリアと同い年で同じ学校に通っている。ここのカフェの実質のオーナーであり、この乙女ゲームの世界の主人公でもある。


「ええ、もちろんよ」

「僕にも同じのをくれ。食べてみたい」

「ええ、任せて」


 ミカミが厨房に消えたのをいいことに、二人はにらみ合った。


「どういうつもりだい?オフェリア」

「それはこちらの台詞よ。王子様、気軽に出歩いていいのかしら?」

「そのことについてはとっくに許可を得ている。君の方は勝手に抜け出したのか?」

「ギクッ。ちゃんと置手紙は残したわ」


 オフェリアは気まずそうにカツドンを頬張る。どうやらオフェリアは内緒でここに来ているらしい。王子はさらに追撃した。


「君、ミカミが嫌いなんじゃないのかい?」


 そう、彼女、オフェリアはいわゆる悪役令嬢という立ち位置の人物なのだ。もとよりミカミの家は没落した貴族。オフェリアの一族に嫌われたらやっていけない。だからってパン屋を始めたのはビビったけどな。しかも主導はミカミだ。

 閑話休題しよう。彼女はミカミをイジメていた。流行おくれのドレスをワザと贈ったり、陰口、無視、取り巻きがミカミに絡むのもいつもだ。しかし、ミカミは意にも返さなかった。

 ドレスはサイズが合わないと、仕立て直した。ついでに形状も多少変化させた。陰口は言った相手を見て微笑み、無視はより大きな声と耳元のコンボ。取り巻き達の絡みもお悩み相談室になっていた。


 『ねぇ、オフェリア。貴女、私に意地悪しようと頑張っているみたいだけど、やめた方がいいわ。貴女、人をイジメる才能がないの。

そして、その才能は開花させてはいけない。どうして私に意地悪しようとしたのか教えて?』


 するとオフェリアは泣きながら、自身は悪役令嬢として生まれた。両親はいずれいなくなる長女より家を継ぐ長男の弟に愛を注いでいる。花嫁修業、家柄ゆえの期待やおべっか。などなど、分かっていたはずなのに体験すると辟易したらしい。気持ちはまぁ分かる。


『それは辛かったわね』


 ミカミは泣くオフェリアを優しく包んだ。それが効いたのか、それともその時に出したニクジャガが気に入ったのかここの常連になった。


「昔はね。今は、違うわ」


 王子はふうんと興味がないようだ。自分から聞いといて。


「それで、あの話は」

「無理ね。あのくそ爺、失礼。お父様は大反対よ。まぁ無理もないでしょうけど」

「僕もだよ。別の案を提示された」

「まぁ、急に婚約を解消してくれなんて無茶だったことね」


 そうだ。この二人はいわば許嫁というやつだ。元のゲームだと王子ルートに入ると、彼女は婚約破棄の上に修道院に行く。もっと酷いルートもあった気がするが思い出せない。この悪役令嬢はどちらにしろ悲惨な末路を辿るのだ。


「セバスからは君を正妻にして、ミカミを側室にするといいって言われた」

「聖騎士様の言うこと?でも、それしか策がないのかしら」

「それより、問題がある。もっと別だ」

「何よ」

「ミカミが僕のプロポーズを受けるかだ」


 ミカミは何故か、恋愛フラグを総スルーする癖があった。おかげで今王子ルートにしか入っていないんだが、王子的には時間の問題らしい。


「おまたせー、カツドンだよ~。あっ、オフェリア、これ味見して!新メニューなの!女の子の意見を聞きたいからよろしくね!それじゃあどうぞ!召し上がれ!!」


「「い、いただきます!!」」


 王子にはカツドンが、オフェリアには白玉あんみつのようなデザートが出される。二人とも美味しそうにご飯を頬張っていた。

 少し羨ましい。王子は知らないが、オフェリアの気持ちは分かる。そりゃ前世で親しんだ料理が出されればなぁ。


 胃袋は掴んだもの勝ちって奴か。


「ニャー」

「んっ、ミケもお腹すいた?なら魚切ったのあるから食べなよ」

「ニャー!!」


 今日も俺は猫ライフを満喫中だ。


ここまで読んでくれてありがとうございます。

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ミカミ→大往生したおばあちゃん。旦那の仕事を手伝っていたゆえか経理や運営お手の物!!包容力と料理上手な人で、資金があるうちに手に職つけなきゃ!!と家族を説得し、パン屋運営している没落貴族。

中身おばあちゃん故に恋愛フラグは見落としがち。一応、乙女ゲームの主人公であるのだが、この世界に生れ落ちてからは自身のやりたいこと(カフェ経営)に夢中。


オフェリア→悪役令嬢に転生した元OL。前世でも今世でも家族に恵まれなかった。ミカミを母親のように慕う。今は同い年なので普通に仲良くなれるように奮闘している。この世界が乙女ゲームだと知っている。現在は勉強に精を出し、家を乗っ取る気満々である。


王子→名前は未定、マークとかそんな感じ。生まれついてのチート。なので叱られたことがなかったが、ミカミから食前の挨拶をしろと叱られ興味を抱く。それが恋心に移動した。オフェリアを嫌っていたが、現在は仲の良い女友達。


ミケ→オスの三毛猫。元人間。この世界が乙女ゲームだと知っているが、王子ルートのみ。自身も精霊という隠れ攻略対象だと知らない。その内力に目覚めて擬人化する。前世の記憶が段々薄れている。


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