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隣の不良魔法使い  作者: 空枝るん
第一章
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第3話 眼

 レザに言われ、アイネはグレア、カイゼ、ハレイと共に保健室に向かっていた。


「……みんなごめんね。ついてきてもらっちゃって。」


 不安を押し殺し無理に笑うアイネに真っ先に口を開いたのはカイゼだった。


「気にしないで、一人でなんて不安で行けないでしょ。それに謝られるよりお礼言われた方がついてきた側としては嬉しいよ。」

「そう……だね。うん、みんなありがとう。」


(そう……そうそう。俺もそう言おうと思ってたのよ)


「グレア、何うなずいてんだ?気持ちわりいぞ?」

「ん?や、カイゼって俺もっと寡黙なヤツだと思ってたからよぉ……。」

「さっきは寝起きだっただけだから……」

「あはは、でもまだ眠そうだね。」


 カイゼの励ましもあり、アイネはいつもの調子を戻し始めた。気がつくと保健室はもう目の前だった。


「んじゃ、行くか」

「う、うん」


 アイネが返事するや否やグレアは勢いよく戸を開けた。


「うーっす姉貴」

「ノックくらいしなよ……ん?」


 当然の指摘をするカイゼ。戸を開ける音に気付き、奥にいた女性が長い金髪とともに振り返った。


「そうよ、そこのイケメン君の言う通りよ。ここは家じゃないのよ。」

「はいはい。」

「ぶー。グレア冷たーい。」

「それよりよ、ちょっと診てほしい人がいるんだ。」

「無視……ええ、レザから聞いてるわ。」

「ちょ、待って、ストップ。」


 サクサクと話を進める二人の間にハレイが割って入る。


「え、お姉さん?」

「ん?ああ、義理だけどな。」

「こんにちは、ヴィヴィア=ビブリーチェです。みんな、グレアと仲良くしてあげてね。」


 優しく微笑んだあと、コホンと咳払いをして話を戻した。


「それでアイネちゃん、はどっちかしら。」

「あ、私です。」

「それじゃあここに座って。」

「はいっ」


 ヴィヴィアが行ったのはアイネの顔を見たり首に手を当てたりと普通の診察と変わらなかった。


「んー、そうねぇ。次は聴診でもしようかしら。服脱いで」

「えっ……ここで、ですか?」

「もちろん。ホラ、早くぅ。」


 ヴィヴィアは楽しそうにアイネのシャツのボタン外していく。カイゼはそっと後ろを向いた。


「ちょっとグレア、いつまで見てるのよ。裸が見たいならお姉ちゃんがいつでも見せてあげるわよ。」

「いや!いい!!」


 グレアはすぐさまクルッと後ろを向いた。それを見たカイゼはぼそっと呟く。


「……難儀だね」

「うっせ」


 上半身を下着だけの姿にされたアイネを見て思わずハレイが驚愕の声を上げる。


「はぁ!?おっぱいでかっ!!」

「ハレイちゃん!声大きいよぉ〜」

「あぁ、悪い。つい…」


 おっぱいという単語にグレアとカイゼの2人はビクッと反応した。


「クソぉ……振り返れば天国なのによぉ……!」

「嫌われたくなかったらやめなよ」


 そんな2人のことはつゆ知らず、ヴィヴィアは診察を続けていく。


「じゃあ診ていくわね。ちょっとヒヤッとするかもしれないから我慢してね。」

「はい……ひゃ……んぅ……」


 聞きようによっては喘ぎ声とも取れるそれはグレアとカイゼには刺激が強かったようで二人は咄嗟にしゃがみ込んだ。


「おめえもちゃっかり反応してんじゃねえか。」

「……本能には逆らえないよ。」

「とりあえずなんか気を紛らわせるような話してくれよ。」

「そう……だなぁ、女の子って聴診のときブラは外さないんだね。」

「あ、それ俺も思った……って話逸らせてねえよ!離れようぜおっぱいからよぉ!」

「ごめん。俺も言ってから気づいた……」


 二人が本能と闘っている間に診察が終わったヴィヴィアは結果を話し始める。


「アイネちゃん、魔装出てるわよ。恐らく非武装型の上、身体変異型のね。」


 4人は聞き慣れない単語に首を傾げた。4人の何を言っているか分からないといった表情を見てヴィヴィアが説明を加える。


「そのうち授業でやると思うけど、大半の人が顕現させるのが武装型、稀に顕現させるのがさっき言った2つね。で、非武装型っていうのは武器の形をしてないの。私の魔装も包帯だから非武装型ね。特徴としては『初めから特殊な能力を持ってる』ってところかしら。例えば私の魔装、傷を治すことができるの。今は怪我人がいないから見せることは出来ないけどね。……ここまでは大丈夫かしら?」


 グレア以外の三人が頷く。


「続けるわね。身体変異型は文字通りの意味よ。身体の一部が変化して魔装になるの。爪だったり目だったりね。こっちの方は特徴は特にないわね。さて、アイネちゃん。その目は生まれつき?」


 アイネは質問の意味がわからなかった。目がどうしたというのだろうか。ふと近くにあった鏡を見ると、右目の色が碧色から金色に変わっていた。


「え、ウソ……!」

「その反応を見る限り違うみたいね。決まりね、あなたの魔装はその目よ」

「この、目が……」


 アイネは安堵からかその場にへたり込んだ。すかさずハレイが肩を支える。


「ハレイちゃん、ありがと……自分にもちゃんと魔装があるんだって分かったら安心しちゃって……」

「ああ、良かったな。立てるか?」

「うん。」


 グレアは今度こそアイネに手助けをと思ったが、次はハレイに先を越され肩をがくっと落とした。ふと時計を見ると入学式開始5分前だった。


「そろそろ行かないと時間的にヤバくねえか?」

「うわ、ほんとだ。走るぞみんな!先生、また!」

「ありがとうございました、先生。」

「ええ、今度は遊びに来てね。基本いつでも暇してるから。」


 ハレイを先頭に保健室から出て行く。一番最後尾にいたカイゼが立ち止まった。


「あら?どうしたの?」

「1ついいですか。非武装型の説明をしてたときに先生言ってました。『初めから特殊な能力を持ってる』って。これ、裏を返せば武装型は後から特殊な能力を持つ、ってことですよね?」

「……その通りよ。あなた、鋭いのね。」

「それじゃ魔装って、魔装顕現アウェイクン状態より先の段階ってあるんですか。」


 カイゼは真剣な眼差しで問いかける。それに応じるようにヴィヴィアも真剣な口調で答えた。


「ええ、あるわよ。……でもね、学生のうちにそこまで辿り着ける人は多くないわ」

「……ありがとうございます。すいません、時間取らせちゃって。」


 カイゼは頭を下げ、グレアたちの後を追おうとする。

 ヴィヴィアはカイゼの強さに対する執着心に危うさを感じ、声をかける。


「イケメン君、なんでそんなに焦ってるのか分からないけど、無茶だけはしちゃダメよ。」

「善処します。あとカイゼです、俺の名前。」


 そう言って少し笑い、カイゼは今度こそグレアたちの後を追って保健室を後にした。

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