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二つの選択


「で、話す事はそれだけ何だな」

「……は、はい」



 あれからどれくらいの時が流れたのだろう。

 この場所に掛時計の一つでもあれば容易に時間を知る事が出来たのであろうが生憎この空間には何も存在しない。

 ただただ真っ白な時を刻むだけだ。


 自称神を名乗るガリレオガリレイは当初の高圧的な態度は何処へやら、すっかり覇気を無くしたただの変態へと成り下がっていた。


 因みに未だ全裸のままだ。



「話を纏めると、その異界とやらで原因不明の大特異点(ゲート)やらが生じて本来存在する筈のない人間が俺達の世界へと紛れ込んでしまった。ここまでは合ってるな?」

「……はい」



 ガリレオガリレイに似た変態は土下座上等の姿勢でそう答える。

 その直ぐ前方では同じく全裸の倉田インフィニティが無言で仁王立ちしていた。


 距離が近い……。

 それは相変わらず酷い絵面であった。



「そして理由もなく二つの世界の中に矛盾が生じてしまうと、その異界とやらを管理するジイさんに責任が向いてしまう。そこで、罪もない俺達を勝手に死なせて数合わせの為に転生させようとしたと云う事で間違いないな?」

「……は、はい」



 思ってたよりもスゲぇ自分勝手な理由で草まみれ何だが。

 お前本当にそれでも神様なのかよ……。


 つか、話がいよいよファンタジー過ぎてついていけないんだがマジで。



「大方の話は理解したがそんな面倒な事しないでも、そのゲートに乗ってやって来たっていう人間を見付けて連れ戻せば良いじゃん」



 俺の当然のように湧いた疑問を眼前の老人へとぶつける。

 だがそれへと応じたのは地べたに這い蹲る変態ではなく、今まで静観を貫いて来た金髪天使ちゃんであった。



「一度境界線を越えてしまったら二度と元の世界には戻れないのですよ。例え神々の権限を行使したとしても。これは古くからの協神法の決まりですので侵す事は決して許されません」

「……」



 ジジイが土下座のままうんうんと頷く。

 その頭を上下にシェイクする度、倉田インフィニティの下半身に触れてた気もするのだがこれは見なかった事にしよう。



「……何かもう良く分からなくなってきたな。もうどうでもいいから早く俺達を元の世界に戻してくれ」

「うーん、それは無理な相談ですね。お兄さん達境界線を越えてしまいましたし」

「ふぇ?」



 俺は余りにも理不尽な事を言われた気がして自分でも驚くくらい素っ頓狂な声を漏らしてしまった。



「ですからお兄さん達は一度死んでしまったので、この空白の世界で魂から再生されるのをひたすら待つか、異界へと肉体ごと転生されるかの二択しかないのですよ」



 金髪天使ちゃんは左手を腰に当てて、物分かりの悪い子供を諭すように右手の人差し指をピシッと立ててそう答えた。

 その容赦のない説明に流石の倉田も危機感を覚えたのだろうか、上半身をグラインドさせて意識を此方側へと傾ける。



「……すまん事をしたとは思っとる。じゃが、これが“グラゼウシア”の奴に知れたらさらに多くの犠牲を生む事となる。それこそ人類滅亡レベルでの」



 するとそれに便乗するかのように下方から弱々しい老人の声がそう聞こえてきた。



「グラゼウシア?」

「神様……いえ、我々の倒すべき最大にして最強の大敵です」



 全く話の全容が見えて来ないんですが。



「そこでじゃ」

「そこでじゃじゃねーよ!?」

「まあまあ話を最後まで聞かんか。悪い話ではない」

「なら話せ」

「……相変わらず偉そうな奴じゃのぅ」



 兎にも角にも仕方なく俺はジイさんの話へと耳を傾ける事にした。

 そしてジイさんは語り出す。



「お前さん達には異界での特異点発生の原因究明及び、魔王討伐の任へと着いて欲しい。無論ただでとはいわん。お前さんに不思議な力を一つだけ授けよう」



 ジイさんはそうとだけ伝えると静かに立ち上がり両手を前方へと翳す。

 すると淡い光が収束し、そして弾け飛ぶ。

 次に気が付いた時には目の前に煌びやかな装飾の成された宝箱のようなものが三つ浮かび上がっていた。

 ジイさんは間髪入れずに俺達に「選べ」と告げる。



「一つは神々の力が宿りし伝説の武具、一つは極限まで鍛えられし武の肉体、一つは大いなる魔道への邂逅。どれか一つ好きなものを選ぶと良い」

「断る」



 次の瞬間、自称神様を名乗るジイさんがそれはそれは盛大にズッ転けた。

 連られて金髪天使ちゃんもズッ転ける。

 萌えた。



「……信じられない。神様の力を受け入れない人間がいるなんて……」

「いやだって何かテンプレ過ぎてつまんないし」



 俺のそんな返答に金髪天使ちゃんは唖然としている。

 唯一友である、倉田インフィニティだけは何故か爆笑していた。

 つか、アイツも笑うんだな。


 俺がそんな感想を心中抱いていると、今まで放心状態だったジイさんが徐に話し始める。



「気に入った。気に入ったぞ小童。お前さんは大物じゃわい」

「人を初物みたいな呼び方するのは止めろ」



 ジイさんは一頻りケラケラと笑い続けると涙目のままこう口にした。



「お前さんにはワシの力を授けよう。これはチートなんてもんじゃない程のチートぷりじゃぞ」

「神様!? それは流石に他の神々に怒られますよ!?」

「構わん。これはワシが決めた事じゃ」



 金髪天使ちゃんがえらく焦燥を露わにしてるが、俺には何のことだが全く分からない。

 そんな置いてけぼりな空気の中、ジイさんは覚悟を決めたかのように俺の前へと踊り出す。



「近寄んな」

「お前さんもブレないのぅ……」



 俺がガルルとテンプレの如く威圧するも、ジイさんは知らぬが如しと両手を俺の頭へと近付ける。

 いつの間にか倉田インフィニティも横に並んでいた。



「世界を頼んだぞ小童」



 曇りの一切ない笑顔を向けながらジイさんはそう俺へと告げる。


 そして世界は再び光の中へと包まれた。

登場キャラクター説明その1


【名前】: 一之瀬(いちのせ) (さくら)

【性別】: ♂

【年齢】:17

【容姿】:名の通り中性的な顔立ちをしており中学生まではよく女の子と間違われた。生まれてから黒髪一筋。

【備考】: 某高校の長い歴史の中で過去一番の問題児と呼ばれた片割れ。敬語は苦手。


【名前】: 倉田インフィニティ

【性別】: ♂

【年齢】:17

【容姿】:切れ長の目、そして大きな涙袋が印象的なイケメン男子。茶髪。

【備考】: ありのままを生きる変態。躊躇の欠片もなく何処でも構わず全裸になる。補導歴あり。会話は苦手。

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