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出会いは突然に。裸の老戦士と家無き勇者との邂逅

登場キャラクター説明

 

 回想を始める。


 3月1日。

 高校の帰り道。


 その日俺は、というか今日俺は、親友である倉田インフィニティ(仮名)ととある噂の調査に乗り出した。


 その噂とは何でも人がいきなり目の前で音もなく消え去るいう、さながら神隠しのような胡散臭い内容であった。

 いまどき小学生でもそんなコミカルな話信じないであろう。


 では何故、高校生にもなろう若者達がそんな眉唾ものに乗り気かというと至極単純。

 それは俺達が自他共に認める真性のアホだったからだ。

 冗談抜きに。


 遡る事さらに二ヶ月前。

 神隠しの噂が囁かれるようになる少し前の事、この付近では別の噂が流れていた。



「ホームレス勇者がいる」



 何とも情けないフレーズで始まったが、それが全てを表していた。

 禿げかかった頭皮に細く鋭い眼光。

 色褪せた革製の鎧にボロボロのマント。


 それだけ聞けばただの頭のおかしいオッサンだったのだが、その腰に携えたものがいけなかった。

 簡潔に述べるとオッサンは勇者の剣を持っていたのだ。

 それこそ某RPGに出てきそうな荘厳な雰囲気を醸し出す伝説の剣をだ。


 勿論、アホな俺達は毎日のように勇者が出没するという噂のサイクリングロードに赴いた。

 隣を走る自転車を悠々と牛蒡抜きするくらいには俺達は死ぬ気でハゲ勇者を探し求めた。

 だが、結局ハゲは俺達の前にその姿を表す事はなかった。


 それから数ヶ月たった今、その某サイクリングロードで新たな噂が囁かれ初めている。

 そして、俺と倉田インフィニティはそのサイクリングロードへと足を踏み入れたのだった。




 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆




「で、何処に俺達が死ぬ要素があった訳?」

「全てじゃ」



 白いーーただただ白い真っ白な空間の中、俺は目の前に立つガリレオガリレイみたいな白髪まみれのジジイに話し掛ける。

 その容貌は何故だか全裸だ。

 友、倉田インフィニティに近いものを感じる。



「チャリに二人乗りしてサイクリングロード滑走してたら、気が付いたら目の前に全裸のジジイがスタンバイとかどんな地獄絵図だよ」

「口を謹め小童。ここは生と死の狭間を行き交う神々の世界。それにワシはジジイではない。お前らの言葉で表す所の神と呼ばれる存在じゃ」

「丸出しボーイで何語ってんだジジイ……。いいから早くそのブツをしまえって」



 そういって視線を自称神とやらの下半身に持っていくと、一瞬ピクッと羞恥を思わせる仕草を見せるガリレオガリレイ。


 ジジイの赤面とかマジで勘弁なんですが。



「貴様無礼じゃぞ……。仮にもワシは神だと言ったじゃろ。屍人の身分でなるたる不届き者」

「だからさー、それなんだけど俺達死ぬ要素なくね? 車に轢かれた訳でもないし、川に落ちたって訳でもないし」

「……」


 俺がその事を追求する度に自称神は今のように沈黙を貫くか、話を逸らすかのどっちかだったのだ。

 お陰様で無意味な回想を始めるに至った程である全く。


 神のそんな不審な態度に何か感じるものがあったのだろうか倉田インフィニティが突如無言で服を脱ぎ出した。



「え? 何してんのお前」

「いま裸で自己主張を強めるあの老人に対し、敬意を表さなきゃいつ敬意を払う」

「マジで意味分かんないから……」



 想像以上に理解に苦しむ相方の行動理念は置いといて、俺は未だ無言を貫くガリレオガリレイへとその目線を向けた。

 すると冷や汗というレベルを遥かに超えたセルフ間歇泉のようなジジイがそこにはいた。

 怪しい……。

 寧ろ怪し過ぎて怪しくないまでである。



「ーー答えろ」



 いつの間にか全裸になった倉田インフィニティがジジイとの距離を肉薄するまでに潰していた。

 何とも見るに堪え兼ねる酷い光景である。



「……何の話じゃ」



 一向に口を割ろうとしないジジイに倉田インフィニティが「ならば仕方ない」とだけ呟き何か危険な匂いを俺が自慢の嗅覚で感じとったその時、鈴を鳴らしたような声音が響き渡る。



「あっ、神様発見! ありゃ!? そこの二人が大人の事情で異世界送りにされるって例の人間ですか!?」



 俺は振り向く。

 そこには背中から羽のようなものを生やした白を基調とした衣服に身を包む金髪の女性が突っ立っていた。

 な、何とも美しい……。


 ん? 待てよ、いま何かヤバい事言ってなかったかこの人?



「馬鹿者ッ!!! 異界との数合わせの為に神々の都合で、下界から無作為に人を転生させるって事が小童共に知れたらどうするッ!!! 弱みを握られるだけじゃぞ全くーーあっ」



 ジジイはそこまで言って顔面蒼白ピクリとも動かなくなった。

 俺はわざとらしくニヒルな笑みを浮かべ、



「へーその話詳しく聞かせて貰おうか」

「……」



 金髪の天使ちゃん(見た目)が後ろで「あれ!? え!? 説明してなかったんですか神様!?」という驚きの声を吐露してる中、自称神を名乗るジジイへの尋問が始まった。

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