ブリーフィングと緊急
あの壁外を歩く少女をどうすべきかまず作戦を立てることにした。会議には分隊の下士官を集めて、壁上のテント内で行った。
ー4.10.AM11:00ー
北東防壁壁上-
「あの少女をどうすべきか作戦会議を始める。時間の猶予はあまりないがみんな意見を出してもらいたい」
「「「「はい!」」」」
基本、俺たち第7監視分隊では皆で協議の上、作戦を取る形をとっていた。
「勝山曹長!具申したいことがあります」
すぐに手が挙がり眼鏡をかけ黒髪短髪の男性が声をあげた。
「田中伍長か。何かあるか?」
「はい。ここはやはり上に報告して指示を待つのが正しいかと自分は考えます。先ず、少女の様子がただ事では有り得りえないように見えます。護身用の武器を持たずに壁外を歩くなんて…。少女の服装も見るからに怪しいです。我々単独で動くのはマズいのではないのでしょうか?」
事なかれ主義者の発言にも聞こえるが田中伍長は決して臆病ではないが冷静さで評判のいい男だ。防衛隊では一応軍隊の体をなしているが、感染者ばかり相手にしている傾向が続いているため、新規採用の隊員に対して行われる教育は対人戦闘作戦の隊員教育が後回しにされて対感染者作戦の教育を優先している。その結果、考えが浅く敵地正面突破を好む防衛隊隊員の中では田中伍長のように客観視出来る人材は数少ない。
「そうだな。それが一番無難だろう。他には?」
「はい!」
「奥田軍曹。何か?」
「はい。私は田中伍長の意見に反対します。少女はよく見ると傷だらけです。早急に保護すべきです!上の指示を待つのは時間が掛かりますし、その間に事態が悪化するやもしれません」
少女は見るからに傷を負い何かから逃げている様子にも見えた。奥田の言うことも一理ある。
「・・・分かったありがとう。作戦は…」
「隊長!報告します!
そこに福田一等兵が急に報告しに入ってきた。
「どうした。」
「少女の後方500mより‘奴ら’が接近しています!」
「数は?!」
「通常型が数十体、変異型が複数確認しました」
変異型は動きが鈍い通常型に比べて肉体組織が変異を起こし、動きが素早く殺傷能力が高く小銃を携帯して対峙した兵士でも侮ると首を狩られるため、脅威である。ましてや武器を持たない少女はより無防備だ。
時間は待ってくれないようだ。
「わかった!分隊長より発令する!作戦は少女の保護を最優先の目的とする!総員戦闘準備」
「「「了解!」」」
「責任は俺がとる。少女を救出するぞ!行くぞ!」
そうして俺の命令により第7監視分隊は救出戦闘態勢に移ったのだった。
次話でやっと戦闘シーンに入ります。