踵と謎の少女
あれから街に出て奴らを避け、俺らは家族と合流し、政府の指定したセーフゾーンに逃れて時が流れた。セーフゾーン内の中学校に編入して高校に進学し、3年後の18歳になって俺ら2人は秋雨都市防衛隊に志願、入隊した。
真由と2人で今まで何とか苦しい場面を何とか乗り越えてきたのだが、24歳になった年の夏に壊れた壁の補修中に奴らの急襲を受けて真由は重傷を負い、俺らが退避する途中、そこではぐれてしまった。真由は鎮圧後の捜索でも見つからず行方不明・死亡扱いになっていた。俺は当時警備要員として立ち会って居たものの、目の前で銃を持ちつつもとっさに反応する事が出来なかったのだ。急にかけがえのない存在を失って…俺は壊れた。
-2030年-
ー4.10.AM10:40ー
世界が変わってから15年、今や分隊長に昇進して壁の中を見る限り、この様子だと壁外への再進出が可能ではないかと思えてくる。ただ、俺の中では真由を失った日から結構な堅物の性格になってしまったようだ。人にあまり興味を持たなくなっていた。しかしながら、この堅物な性格のおかげで任務を確実にこなして来れたのだが…。
「・・・まぁでも大丈夫か…」
「・・・どうしたんです?隊長?隊長最近疲れてません?寝てないんですかぁ~?」
ふと横を見ると軍曹の奥田咲が立って首を傾げていた。俺より4つ下の年で、俺の部下だ。見た目は髪をポニーテールに束ねていて小顔で可愛いが・・・。
「何だ?奥田軍曹?」
「いえ、勝山隊長の目のクマが気になりまして(笑)」
「そうか。最近眠れなくてな…。」
「・・・もしかしてもしかすると?!彼女さんとやっぱり毎晩××××して〇〇やって寝させてもらえないんですかぁ」ウヒャゥ
・・・これだ。奥田軍曹はたまに何故か俺の前になるとトンデモ発言をマシンガンのように吐き出す癖があり、周りの同僚からは“残念美人”の評価を受けていた。
「なんでそうなるんだ!バカか?!彼女なんてもんいない!」
そう言って俺は溜め息をつく。
「そうじゃないんですか?!ガッカリです。だったら私にも夜○いをかければチャンスがぁぁぁ?!あっ…うふふふふふ・・・」
流石にウザくなってきた…。
「…何だって軍曹?また懲罰房行きにするか?」
「っ!異常ありません!」
奥田軍曹はよく変な妄想癖がおこる女性である。これを差し引いたらさぞもてるんだろうが…。奥田はかつて、内地の部隊に配属されていたときの演習中にこれが原因で部隊の位置がバレて全滅判定を喰らい、この最前線の壁勤務に異動されてきた経歴があった。
当の本人はさほど気にしてはいない。
「ん?何か言いました?」ニタァ
「…何も言ってねぇよ」
なんだこの分隊はバカが多いのかと呟きながら壁外の監視を続行する。
…そういえば今日は壁外の奴らの数がほぼいないな…。いつもだったらうじゃうじゃ居るというのに。もしかして討伐隊の奴らありったけの戦車を持ち出して奴らを狩りまくったのだろうか。変だと思いつつも、監視を再開すると、、、
「?!」
俺の視界にあるものが移った。
1人の少女が壁外を歩いていたのだ。壁外は言われなくてもわかるように奴らに襲われる危険が大であるために立ち入り禁止のはずだった。
発見した俺はすぐに分隊各員に召集を掛けた。