勝山の過去
ー15年前の春ー
ー石川県某市第二中学校ー
・・・気持ちいい。窓から吹く春風が心地よくてとてもいい。まさに『春眠暁を覚えず』だ・・・。
「・・・・・・起きんか馬鹿もん!」バシッ
「はぅう?!」
俺は当時15歳の中坊で、授業中眠っていたら唐突に数学の教師に叩き起こされた。
「痛ってぇなー!この暴力教師が!」
「何だと勝山!もういっぺん言ってみろ!」
「うっせーな!これ体罰じゃねーの?!」
「黙れ!だいたいお前もう少しで受験だぞ!それなのに朝から居眠りとかバカやってんじゃねー!」
当時の俺は反抗期真っ盛りで荒れていたようだ。その日は無性にイラついていたので、教師に反抗していた。
「ちっ!知るかよ!もうやってらんねぇ!」ガラッ
「お、おい!ちょっと待てっ!」
むしゃくしゃしていたので、教室を飛び出し、屋上に1人寝転んだ。そんときの俺は周りの奴らが3年に上がってから急に受験だの言い出して全く面白くないと思っていた。親も親だし勉強しろとかうるさくてたまらない。俺は昼頃まで寝転んでぼけーっと空を眺めていた。
昼休みに入る合図のチャイムが鳴り、屋上から屋内に入ろうとしたとき、誰かが屋上に上がってきた。
「ちょっと拓哉!あんたまた授業サボったの?」
「?なんだ真由か…」
駆け寄ってきたこいつは幼なじみの篠崎真由だ。セーラー服のサイズが合わないのか身体の成長が大きいのか身体のラインが露わになっており、特に胸の成長が大きいみたいだ。最近直視出来ない・・・。
「そんなことかよ真由。授業なんてダルいだろ~!」
「そんなこと言ってるからいつまで経っても学年最下位なのよ」
「でも英語は学年トップだしーーー!」
「でも他が赤点以下じゃぁ意味ないのよね~」ニコっ
「チッうるせーババァだな…」
その瞬間、真由の顔が変わる、
「何か言ったぁ~?????」ゴゴゴゴゴ
直後、般若の顔をした真由が迫ってくる・・・
「い、い、いやぁ何でもないっす・・・・・・そ、そんなことより飯食いに行こうぜ・・・?」
ちょうど昼のチャイムが鳴った。真由はすぐに普通の状態に戻って答えた。
「うん、分かったわ!」
それから2人で屋上から階段を降りて3階の廊下を歩いていたとき、ふと窓の外を見てみると何か変な光景が俺の目に入ってきたのだった。
中学校の校門前がやけに騒がしかった。数人の教師連中が敷地に侵入した1人の男を囲むようにして集まっていた。不審者だろうか?
「止まれ!ここは関係者以外は立ち入り禁止だ!」
「そうだぞ・・・って聞いているのかそこの君!止まりなさい!」
教師の掛け声に男は全く反応していなかった。その男はやけに身体の動きがおかしかった。
声をかけられた男は1人の教師を前に立ち止まり…………いきなり教師の1人の腕に噛みついた。
「ぎゃああああああ?!何をする!痛い!は、離せ!」
「何やっているんだ離すんだ!」
男性教師がサスマタを持ち出し、何とか噛まれていた教師から男を離した。噛まれた教師の腕を見てみると血があふれ出して出血がひどいようだった。
「おい!大丈夫か?!…っぎゃ!」ザスっ
「井本先生!え…?」
井本と呼ばれた教師は男に一撃で首を裂かれ、倒れた。ショックで固まっていた女性教師はその後首を噛まれ、3人の教師は瞬く間に倒されてしまった…。
「…何だよ…あれ…何があったんだ?」
「嘘でしょ…?先生が…死んじゃったの?」
俺たちの目の前で教師3人が倒されてピクリとも動かなくなっていることに俺はすぐに何かおかしいことに薄々と気付いていた。
まず、男は明らかに変だった。前に観たゾンビ映画に出てくるようなそのまんまの身なりであり、倒れた教師を貪っていた・・・。
俺は直感的にマズい状況を察知した。そして、真由に
「…真由!逃げるぞ!」
「えっ?拓哉?逃げるってどこに?!」
「とりあえず何か武器になるものを持って学校裏の旧校舎へ逃げるぞ!嫌な予感しかしない!そこからなら正面の校門以外から外に出られる!」
「わかったわ!向かいましょう!」
俺たちは早速行動に移った。
屋上から3階へ降りる階段に差し掛かった時、校内放送が流れてきた。
『生徒の皆さん!急いで避難してください!不審者が校内に侵入してきまs…うわぁぁぁ?!三村先生・・・?っ?!三村先生やめてください!痛い!hjkhっgfっhjkっjぎゃああああああ』ブツッ
・・・そこで放送が途切れた。
1Fの職員室がやられたようだ。さっきの放送でみんな状況を理解しパニック状態になったようで階下では酷い有り様だった。通れなさそうだったので経路を変更するしかなかった。階段で将棋倒しになり押しつぶされた生徒や自分だけ助かろうと殴り合いをしたりと見てられなかった。
みんなが殺到しているのは通常の階段で、非常階段の方はなぜかがら空きだった。みんなパニックになりすぎて先生も誘導どころじゃなかったのだろうか?
俺たちは非常階段に向かう途中にあった備品室で金属バットとサスマタを手に入れて装備した。
今のところ、奴らには遭遇しなかったが、、、
…非常階段の前の通路で初めて奴らに遭遇した…。
奴ら化した奴をよく見ると同じクラスの仲の良かった斎藤だった。よりによって、、、
「…お前、斎藤か…?斎藤…なんてこった…」
「斎藤君…来ないで!」
斎藤は口をガバッと開け、虚ろな焦点の定まらない目をしながらうめき声を上げて近づいてきた。
もはや目の前の奴は斎藤ではないようだった。
「斎藤…!止まってくれ…!お前に手をかけたくない!」
「ウワェァァァイグワァァ!」
斎藤は全く止まる気配が無かった。そうしてる間にも時間が迫ってくる。時間の猶予は、無かった。俺は覚悟を決め…
「斎藤、ごめん!恨まないでくれ…よ!」
俺は奴らの弱点は頭だと予想し一気にバットで打撃を与え、斎藤を殺した。返り血が学ランにビチャッとこびり付いた。
目の前で仕方ないからとはいえ友達を殺めてしまったのはショックがでかかった。
「…くっそ…俺は何てことを…!何で?」
バットを強く握りしめ、どうしようもなく俺は佇んだ。すると、
「拓哉…!これは仕方なかったのよ!」
真由がそう言い俺の肩を持った。真由は泣いていた。
「でも…!」
「でもじゃない!とにかく今はここから脱出しましょう!くよくよするのはそれからよ!」
…真由に、女の子に慰められるとは…。そうだ…と立ち直り、亡者のうめき声のする学校からの脱出をすべく旧校舎へ逃れた。旧校舎では何人かの奴ら化した生徒や教師を撲殺して俺たちは無事に学校を脱出出来たのだった。
あれから街に出て奴らを避け、俺らは家族と合流し、政府の指定したセーフゾーンに逃れて時が流れた。セーフゾーン内の中学校に編入して高校に進学し、3年後の18歳になって俺ら2人は元はセーフゾーンが秋雨市として成立し防衛隊の隊員を募集していたのを見て秋雨都市防衛隊に志願、入隊した。
真由と2人で今まで何とか苦しい場面を何とか乗り越えてきたのだが、
24歳になった年の夏に壊れた壁の補修中に奴らの急襲を受けて真由は重傷を負い、俺らが退避する途中、そこではぐれてしまった。
真由は鎮圧後の捜索でも見つからず行方不明・死亡扱いになっていた。
俺は当時警備要員として立ち会って居たものの、目の前で銃を持ちつつもとっさに反応する事が出来なかったのだ。急にかけがえのない存在を失って…俺は壊れた。