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Fight for Survivor!  作者: 元海鷲
第2章 詮索無用
17/22

討伐隊

討伐隊歩兵戦隊所属、鎌田曹長視点です

時間を少しさかのぼる……



-4.12.AM8:30-

北門・北部方面討伐隊基地-

鎌田篤史・曹長-



「了解しました」


2日前、俺が率いる第6歩兵分隊と村上曹長の10式戦車1両でグループを組んで2日後の「掃討作戦」に参加するようにと小隊長伝いで中隊長より命令が下った。通常の掃討作戦なら大抵、装甲車が1両・歩兵30名ぐらいの編成で作戦を行うのだが、今回の作戦では虎の子の戦車5両を動員の上、歩兵の数が通常の10倍も多く参加することになっているのだ。


…明らかに異様な編成に不安を抱いていたが、小隊長からは「なぁに、気にすんな。いつも通り、俺たちは奴らを駆除していればいいだろよ」と、聞かされてはいるが、もしかして上の連中はどこかの市街地を制圧しにでも行かせるつもなのだろうか…。



 討伐隊の保有する10式戦車はあの異変時にセーフゾーンの防衛していた自衛隊から受け継いだものだ。戦車というものはとんでもない燃料を消費するわりに壊れやすい。最低でも44tの巨大な鉄の塊を無理やり走らせるのだ。おかげで環境保護家真っ青の340m/Lの最悪な燃費になってしまう。対する奴らはそこらの銃で片づけられるので本来なら戦車は無用の長物だ。しかし、たまに壁内外で装甲車に乗って襲ってくる重武装の敵勢力が現れるため、ここぞのときのために討伐隊は戦車を保有している。


 だが、今回は「奴ら」を狩るだけの作戦のはずなのだが……と俺はそのときは不思議に感じる程度にしか思っていなかった。このとき、従軍拒否でもすればよかったものを…。



-4.12.AM9:45-


 作戦出発直前、何やら急きょ即応隊の特務士官2名とその護衛の防衛隊兵士の団体が視察に来ることになり、作戦開始直前にあらかじめ決められていた進行ルートを変えることになってしまった。作戦直前に内容を急に変えられたせいで部隊は大急ぎで使用する燃料や食糧、弾薬の調整と積み直しをする面倒な目にあった。文句の1つでも言ってやりたいほどだが向こうの階級が大尉であるため逆らえず不満だった。


 …それにしても、この組織の士官に外国人士官などいたのだろうか。武骨な外見の坂巻大尉の横に立つ白人の少女を見て鎌田は思った。




-4.12.PM0:40-

某市街地中央-


連続する砲撃・機関銃音の中、戦車の後ろにトラックが止まり隊員たちが一気にトラック外に吐き出される。降りて周りを見渡して銃を構えたが歩いている奴らの姿はなく、奴らの残骸が転がっているだけだった。死体の1つを見てみたがあの戦車の砲撃をモロに浴びたのだろう、それは原型を保っていなかった。


「分隊!整列!」


 分隊長の俺は分隊を素早く整列させ、向こうから走り寄ってくる視察団と対面した。


「即応隊の坂巻だ。今日は貴君らの活躍を見せてもらう」


「はい、ぜひご覧ください」


 そして、車上の上から戦車長の村田が同じく坂巻大尉に挨拶をした。続いて、


「討伐隊第1戦車隊2号車長の村上曹長だ。よろしく頼む!」


「同じく討伐隊第6歩兵隊隊長の鎌田曹長です。我々の精練された活動をよくみていただきたい!」


「防衛隊第3連隊第7分隊隊長の勝山曹長だ。こちらこそよろしく頼む!」


 鎌田にはその勝山という曹長は若々しさあふれる活発な好青年に見えた。彼と握手していると彼の後ろに立つ女兵士からものすごい殺気のようなオーラを感じたが……きっと気のせいだろう。


 視察団の護衛隊の曹長と挨拶を交わした我々は早速、戦車を先頭に意気揚々と作戦を開始していった。




















-4.16.AM4:10-

某市街地・北地区住宅街公民館-

鎌田篤史・曹長-


「………………………物資はこれだけか…」




 目の前に並べられた物資の少なさに思わず溜め息が出そうになる。

 あれから生き残ったのは俺含めて4人。いや、たった今1人逝った。さらにあとに残ったやつのうち、1人は銃創を負ってマズい状態だ。

 …そこに横たわってるのは二等兵の…たしか、初谷だったか。18になって入隊したばっかだってのに俺より先に死ぬなんてな…初谷の母親が知ったらどうなるだろうか。












 2日前、俺たちの戦車を伴った部隊は突然何者かによる襲撃を受けた。

 初めに村田の乗った戦車が狙われた。対戦車ロケット弾の集中攻撃を浴びて戦車の砲塔が弾け飛ぶほどの爆発が起きた。戦車の左隣に随伴していた俺はその爆発に巻き込まれて5m近く吹き飛ばされたが奇跡的に傷一つついてなかった。


 俺は吹き飛ばされて数秒ぐらい意識が朦朧したがその間に2人の兵士が目の前で銃撃を受け血を噴き出して倒れたのを目撃した。



「?!おおおおおおおおっ?!」


 俺はその光景を目撃して瞬時に意識が戻り、迎撃を始めた。目の前で部下を失ったからだろう。その時の俺は酷く錯乱していたようだった。



ダダダダダダダダッ

「どこだ?!出てきやがれっ!!!」


 俺はそう言ってトリガーを引き続けた。敵の位置を把握せずに…。銃弾がいくら飛んで来ようが恐怖は感じなかった。



「曹長っ?!そのままでは敵の的です!下がってください!」


 部下の藤崎軍曹が俺に声をかけてきたようだ。その一言で俺は我に返り、身を隠した。ウェストポーチを確認して弾を大量に浪費してしまっていたことに気づき愕然した。

 冷静になった俺は敵からの銃撃のやまない中、軍曹の隠れる壁に転がり込んだ。



ダダダダっン

「軍曹、敵の位置は判るか?」


「いえ、全くです。連中は撃つたび場所を変えているようで位置が判らんのです」


「くそっ、とりあえず応援は?!」


「駄目です。無線がおそらく電波障害を受けているようで繋がりません」



 応援が呼べないと分かった以上、俺たちがやれることは敵を俺たちだけで倒すかここから退却するかのうち1つだが…。




「我々はここから去る。健闘を祈る」





 そう言って即応隊の尉官が防衛隊隊員と白人の少女を連れて素早く去ってしまった。



「おいっ!仲間じゃないのかっ?!見捨てるなんてっ!」


 俺は叫んだが彼らは帰ってこなかった。






ポスッコロコロ・・・

「っ!手りゅう弾だ??!!」

バゥンっ!


 別のところで反撃をしていた兵士が敵の手りゅう弾で爆破されたようだ。近くにいた俺たちに爆風が伝わる。




「くっ!衛生兵!衛生兵は?!」


「彼は最初の爆発でもうやられています!」


「?!」


 軍曹が指差した場所を見ると俺たちの分隊の衛生兵は運悪く戦車から飛んできた破片でビルの壁に串刺しになって死んでいた。






「・・・軍曹、付いてこいこい!他の動ける奴は動けない奴を背負って退却だ!」


「了解!総員退却!退却しろ!」


「みんな!生き延びるんだ!」


 戦車を失い指揮系統が乱れた部隊は散り散りとなって退却していった・・・。 


 















 それから敵の追撃を受けて1人1人と失いながらも何とか元は公民館であったでだろう頑丈な造りの建物を確保して潜んでいた。


 そして、今に至る。重症の部下がうなり声を上げるが医薬品が底をついたので傷の手当てもできずにいた。残ったのは3人か…、、、



『ちくしょう…』



 今回の襲撃で親友の村田を始め信頼のある部下たちを一気に失ってしまった。村田には1人娘がいる。ちょうど俺のせがれと同い年の可愛い娘だった。だが、そいつの父親の乗った戦車丸ごと一瞬にして爆発しちまった。軍曹の藤崎には新婚ほやほやの妻さんがいたそうでとても幸せそうだった。藤崎ももういない。逃げる途中に頭に弾を受けて死んじまった。あいつも確か最近年下の彼女ができたとか・・・。




 俺は死んだ仲間から剥ぎ取った認識票を見て仲間たちとの思い出を思い出し、とてもやるせなかった。


 俺が生還した暁には・・・生還できるか保証されないが、そいつらの家族に殉職報告をしなければならないと思うと胸が痛むばかりだった………が。







(「…鎌田、前に進めよ、後ろばっか見てると転んじまうぞ?」)

「…!」


 俺の頭の中で村田がかつて俺がとある不祥事を起こして隊を辞めようかと悩んでいたときに言っていたことを思い出してはっとする。





『…そうだな。悲しんでいるばかりではいけないよな…なぁ?村田?今を生きないとな』



 そして、俺は仲間との思い出を胸にしまって今を生きるため現実に向き合うこと決心がついたのだった。



 俺は認識票の束をウエストポーチに閉まい、ひとまず部下たちの様子を見ようと立ち上がった瞬間、














ドッギャァァッァン!!!!!




「?!なっ何だ?!今の爆発は?!」

「あっちの方です!」


 突然の爆発に驚いた俺と部下2人は窓辺に駆け寄って外を見た。見ると周囲の家屋より目立って高いビルが燃えていた。



「…おい、ちょっと俺は偵察してくる。お前はここにいろ。お前は屋上で万が一の時のために援護射撃の準備を頼む!」


 俺は射撃の腕が良い部下の1人に援護を頼んだ。すると、もう一方の部下が、



「でっですが曹長、外には奴らがいるかもしれません!」


「構わん。あのビルはここから近い。1人のほうが動きやすいから大丈夫だ。万が一のときのためにそいつを連れて屋上から狙撃支援を頼む。」






 部下を言いくるめ命令した俺はすぐさま装備の支度を整えて、ビルの偵察をしに明るくなりつつある街の中を銃を持ち、駆けていったのだった…。



 


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