新たな存在
-前回のあらすじ-
索敵のため「大会議室」に踏み込んだ勝山曹長と福田一等兵だったが、得体の知れない怪物と遭遇。2人は応戦するものの上半身は人、下半身は蜘蛛で機関銃を装備している上に銃弾は弾く怪物だった。何とか2人は室内に付属していた小さな部屋にバリケードを築いて逃げ込むことに成功したが・・・?!
今回も勝山視点です。
-4.16.AM7:40-
廃ビル2階大会議室内及び器材準備室内-
バンっ!
ダダダダダダダダダダっ
タタタタタタっ
ウガァァッァァァァ
突然、バリケードの外から爆発音と銃声が鳴り響いた。複数の銃声が聞こえたが1つはさっきの化け物が持っていた機関銃の銃声で他のはおそらく小銃か短機関銃によるものだろう。奥田達か?いや、それにしては銃声の数が多い。討伐隊の連中が救助に来てくれたのか?
勝山と福田の2人に希望が芽生えた。しかし、相手は銃弾を躱したりあたっても銃弾を弾く上に機関銃を装備した化け物である。日々感染者を狩っている討伐隊といえども決して敵う相手ではないはずだ。
「・・・イチかバチか打って出るか」
「行けますでしょうか・・・?その前に味方じゃないかもしれません」
福田に言われて思い出す。数日前、俺たちの先頭を進んでいた戦車が対戦車ロケットで一瞬にして潰された上に、周りの歩兵が機関銃の弾を浴びせられていた。あれから徒歩でここに移動していたためさほど襲撃を受けた場所から離れていない。ここは最悪、敵勢力の支配範囲内だったかもしれない。いきなり戦車を潰してくる連中のことだ、仲良くはしてくれないだろう。
「・・・ですが、どうしましょうか・・・?」
「この戦闘の中で誰何をするどころか間違われて弾を受けるかもな・・・」
俺たちは判断に迷って行動に移せずにいたが、、、
ヒュンっバッシュっ
ウボォォォォォオォォォォ!
ズゥゥゥゥン!
俺たちが判断を決める間もなく銃声がパタリと鳴り止んだ。戦闘が始まってたったの数分しか経っていない・・・。化け物の雄叫びと思われる音と何かが倒れる音がしたということは化け物を倒したということだろうか。どうやって銃弾の効かない化け物を倒せたか解らない。
ひとまず俺たちは助かると思って少し喜んでいたが、、、
「・・・we completed the killing of A target. then we do to ensure the B target.(目標Aの殺害完了。次に目標Bの確保に移る。)」
「yes,sir!(了解!)」
「we will withdraw as soon as finishing the processing of this body. let's do this!(死体の処理が終わり次第、撤収する。やれ!)」
『?!英語だと?』
連中は英語で会話をしていた。世界同時パンデミックを引き金として開戦した第三次世界大戦によって衛星・光ファイバー・海底ケーブル・航空機・艦船などのあらゆる連絡手段が破壊された日本の各セーフゾーンでは海外との連絡手段を失ったため最も使われている言語として日本語のみ使われるようになり英語をほぼ使用しなくなった。無論、俺たちの住む秋雨市や防衛隊もである。一応、異変前まで教育を受けていた人々や港町の住民はまだ英語を話せるようだが。
つまり、連中は“味方ではない”可能性が高い・・・。
「anyway,,,a major we to come to command a tedious jobs.(それにしても・・・少佐は我々に面倒なことを押し付けてくれる。)」
「yeah,,,we want him to understand ours struggle!(ええ、我々の苦労を理解して欲しいもんです。)」
「that's right! even so,the new AP bullets are high power!(全くだ!それはそうとして、新型の徹甲弾は凄い威力だ!)」
勝山は連中が英語を使っていることと組織的な行動をしている様子から連中の素性を推測していた。
『やつら、もしかして米軍か?』
米軍。異変前まで世界に君臨していた超大国・アメリカ合衆国の軍隊。世界1位の軍事費支出からなる豊富な資金に支えられ質・数ともに世界最強の軍隊であった。第二次大戦後の日本にはかつて、米国陸軍第1軍団・海軍第七艦隊・第5空軍・第3海兵遠征軍が駐留し東アジアの脅威に目を光らせていた。第三次世界大戦時には全ての部隊が日本各域・大陸方面・太平洋上・米国本土防衛に展開したが、大半の部隊が感染者の数に耐え切れず基地ごと飲み込まれたり飛来したミサイルの雨を浴びて壊滅していった。運良く生き残った在日米軍部隊は本国に逃げたり自衛隊に合流したりした。中には軍の指揮下を離脱して日本国内で略奪をする部隊が出ていたらしい。おそらく、連中はその残党だろうか。なぜなら、正規の部隊はほとんど本国に逃げ帰っているからだ。元米軍の残存部隊・・・。
・・・それはかなりマズい。
「"Ray" lieutenant! what would you do this room?but not open.(“レイ”中尉!この部屋はいかがします?開かないようですが。)」
1人の兵士が俺たちの潜む部屋のドア前に駆け寄って来たようだ。とりあえず何とか聞き取れたが連中の指揮官の名前はレイで階級は中尉のようだ。一体どうするつもりだろうか。
「Uhh...you can use the "C4"!(あー・・・“C4”を使え!)」
「yes,sir!(了解しました!)」
『“C4”だと?!』
中学の頃に英語を必死に勉強していたので英語が解る勝山に関わらず英語教育をほとんど受けていない福田も“1つの単語”を聞いて反応した。
“C4”とは、いわゆるプラスティック爆弾のことである。小さいなりをしてとんでもない爆発を引き起こす。連中はここに入ってくるつもりだ。俺たちは慌てていた。
「何とかしてここから出るぞ!」
「でもどうやって出ます??」
密封された部屋。出入り口は前方に1つだけ。しかもドア前に敵であろう元米軍?が待ち構えており絶体絶命。降伏はまず選択肢にない。何されるかわかったもんじゃない。強行突破を試みようにも連中は足音や先ほどの銃声の数からして最低でも5人の上、おそらく元米軍兵でこちらの装備・練度じゃ心もたない。こんな世界の壁外でサバイバルしてる連中だ、俺たちは確実にやられるだろう。
『何か脱出できるところは・・・・・・?・・・・・・・・・そうだ!』
俺が昔、中学生の頃にはまっていた某人気ステレスゲームを思いだしひらめいた。
「福田!通気口だ!」
「通気口ですか・・・?・・・あっそれだ!行きましょう!」
俺たちは早速壊れかかった通気口のつっかえを外して装備一式を持ち脱出しにかかったのだった・・・。
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