特別じゃなくていい −初恋−
初恋を描いてみました。
小説よりも詩に近いかもしれません。
僕は恋をしている。
でも――――特別な恋なんかじゃない。
そう、誰もがする普通の恋を。
きみとの帰り道、いつもと同じ道を歩いているのに
なんだかわからいけど、やけに瞳に映る夕日が鮮やかにみえるんだ。
僕たちふたりは帰り道を横に並んで川沿いを歩いている。
そして、僕が自転車をおしながら、隣にいるきみの横顔をみつめたんだ。
すると、きみはこう言って、恥ずかしそう微笑む。
「きれいな――夕日だね」
「――そうだね」
ふたりとも緊張していたせいか、ぽつりぽつりでしか話ができなかった。
突然、夕立に追われて――僕たちふたりは走って逃げ込んだ鉄橋の下。
息が止まる程、きみに目を奪われた僕。
きみの肩まであるサラサラのかみのけが少し雨で濡れていたのと
ほんのちょっと透き通っていた制服のシャツ。
僕をすごくドキドキさせるきみの姿が瞳にやきつく。
自然とふたりの間に言葉がなくなって、僕は……
切ないこの気持ちを素直にきみに伝えるよ。
この想いをきみへなにも伝えられなかったら、僕は後悔しそうだから――――
「きみがスキだよ」
きみのまるくてクリクリした瞳が嬉しそうに細くなって、
「ありがとう」
と言って僕のシャツの袖を遠慮がちに細いしなやかな指を近づけて、照れたようにハニカミ、つかんだんだ――――――ふいに、友達が恋人に変わる瞬間。
僕は特別な恋なんて、望んでなんかいない。
ただ、きみの涙をぬぐえるそんな距離にいつもいたい……
そんな普通の恋。
今から、いちばんきみが僕の大切なひとになるんだ。
読んでいただきありごとうございました。