PSI━サイ━
私は、平凡が好きだ。でも、
「結局、私には見て見ぬ振りなんて出来やしないよね…」
少女は立ち上がり、男と対峙した。
***
「この子は?」
1人の少女の写真を見せられた男は問うた。
「良くも悪くも不幸少女で有名な子だ。しかし、何かがある」
「なにか?」
「不自然なんだよ、どれも」
そう言うともう一人の男は、資料をドサリとおく。
「……これは、もしかして!」
「そう、PSIの一人かもしれないな」
この世界には、特殊能力いわゆる、超能力をもつ人間がいる。確認されているのは、たったの7人。一生で会えるのは奇跡というほど少ない。
その人間を、PSIと呼ぶ。
***
サイアク。その一言につきる。なんで、こうも不幸が続くのか。朝からジュースを頭に零される、携帯を柔らかい所へ落としてほっとしたのも束の間蹴られて遠くへ行くなどなど、そして今はコレだ。バスジャックというか、無差別殺傷というか。サイアクだ。
相手は男、発狂している。サイアク。
今日はお気に入りの服を来ているのに。
数人はすでに殺傷され、かなり衰弱している。これは、もう……無理。バスが止まった。というか、突っ込んで止まった。衝撃が強いな。
昇降口に近い人たちは次々におりて逃げ出す。驚き固まった周りの人たちは状況がわからず立ち止まる。
男は、赤子を抱いた女性に走り出した。
「やめて!」
「結局、私には見て見ぬ振りなんて出来やしないよね…」
男のまえに堂々と立つ。私は、簡単に傷ついたりしないから。
「……ヒヒッ」
「…はぁ~、本当に平凡なんてありゃしないのね」
少女は、こちらに走ってくる男の目を見据えた。
ただ念じる、『止まれ』。
男は、不自然に立ち止まる。
「早く、逃げて!!」
走り出す、人々を後目に少女は僅かにほほえんだ。
これで、だいじょーぶ。
バチっ、街灯がきれた。
ドサリと、男が倒れた。
***
「君、ちょっといい?」
少女は、そう声をかけてきた人を見上げた。
事件に巻き込まれた人たちは、警察署内で簡単に話を聞かれ怪我をした人たちは病院へと送られた。きっと、トラウマになる人もいるだろう。
「…?」
「小鳥遊、雀ちゃんでいいよね?」
極上の顔の男に、名前を呼ばれ少女は頷く。
「私は、確かに小鳥遊雀です」
「うん、ちょっとお茶しよっか?」
少女、雀はいやな顔をしながらも僅かに頷いた。
***
「君、これまでにもいろんな事件に巻き込まれてるよね?」
「はい、よく。不幸体質みたいです」
「君、トラウマとかになんないの?」
「まあ、最初は。でももう、慣れっこですよ」
ふーん、という男は笑った。
「君の関わった事件ね、ぜーんぶ不自然な終わり方してるんだよね」
雀は、怪しげな顔で男をみた。
「そうですか、で…あなた名前は?」
「あー、ごめんね。俺の名前か!鷹野夜」
「鷹野さん、それで私になんの用事が?」
「ふふん、単刀直入に言うと…君PSIでしょ?」
「……」
何この人という目で見やる。
「あはは、いいねその目!実を言うと、ここだけの話…俺もPSIでーす!」
***
なんでこうなる?面倒だなと、あの後立ち上がり帰ろうとしたらついて来た。そして、今現在…
「やっぱ、君ツいてないね」
そう笑う鷹野。
たしかに、不幸だ。
立ち寄った銀行が銀行強盗にあうとは。
「よし、俺がいくか!」
彼は目を閉じると、ぶつぶつと呟きだした。
「……よーし、逃げ道みっけた」
いや、逃げ道見つけても…そう思ったのが彼にも分かったのか。
「だいじょーぶ。俺の仲間が来るから~」
本当に来た。きっと、彼らはPSIだ。
仲間って言ってたから。
「やば、危機?」
隣で鷹野が呟く。「攻撃系がいない…や」
それ、致命的。
「結局、私には平凡が似合わないということか」
雀は呟くと、意識を集中させる。
バタバタ倒れる強盗犯達。
「…やっぱ、君もPSIだった。しかも、強いね!」
そうですか。
***
その後、私は平凡には程遠いPSIとして人々を守るようになる。
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