09ドラゴン娘
正しく西洋のドラゴンにしてみました。
目を開ける前に、膝に重みを感じた。
意識が覚醒しだし虚ろに目を開ける。
寝ていたはずなのに何かに座っているようで、寄りかかるものもなく傾いでいた首をまっすぐ戻した。
自分がはっきりするにつれ、見たことのない場所だということに気づいて、僕は慌てて周囲を見渡す。
「ど、どこだ……?」
体が動かない。
無理に腕を動かそうとして、両手首の痛みを感じる。
腕は椅子の、背もたれの裏側に回され、縛られているようだ。
両腕を離そうとして手首に何かが食い込む。
縄か紐で縛られているのか。
そこでようやく膝に重みを感じていることに気付いた。
「女、の子?」
凝り固まって痛む首を下に向け、僕は思わず呟く。
膝にもたれ掛かるようにうつぶせになっているのは赤く長い髪を背に流した女の子だ。
体の丸みや髪の長さからそう思っただけで、実際は分からない。
体の柔らかさも痺れるほどに同じ姿勢をしていたからか、膝は伝えてはくれなかった。
「むぅ……」
女の子が体を少し震わせてからうめき声を漏らす。
僕は半ばパニックに成りながら周囲を見渡すが、僕が縛られて知らない部屋で女の子と一緒にいる、以上の事は分からない。
上等な壁紙や毛足の長い朱絨毯も僕には不相応だし、正面に見えるドアは木製観音開きでいかにも高そうな装飾。天井にはシャンデリアと、どうにもどこかのお屋敷を連想させる。
後を振り向こうとしても膝にうつぶせになった女の子の所為で背後を振り返ることが出来ない。
女の子が着ている薄い服も高級な光沢感がある。
「んぅ?」
女の子が顔を起こし、瞼を擦るようにしてこちらを見上げる。
「あ、起きたんだぁ」
僕の顔を見ながら僕の名を呼ぶ彼女の顔は可愛らしく整っていた。
額の目尻の上あたりに硬質な突起があったり顎のラインを守るように鱗状の何かが生えている事を無視すれば、かなり美少女の部類に入るだろう。
「かわいい……」
何を言っているのか、僕は声を漏らす。
大きなアーモンドの様な、翡翠色の瞳や朱が差す頬、人と共通する顔の造形だけで、僕は彼女を可愛いと思ったのだ。
僕の呟きを聞いた彼女が俄に笑顔になる。
「うれしい!」
彼女は僕に抱きついた。
声の高さや体温の高さは間違いなく少女のよう。
だが、僕の目を覗き込んでいた瞳は、瞳孔が縦に割れていなかったか?
それに気付く前に、頭を僕の頭の横に来るように少女は僕に抱きついた。
胸に彼女の小ぶりな胸が当たる。
が、猛烈に感じる硬質の違和感。
僕と彼女の胸板に乳房が押しつぶされ熱を伝える柔らかさとは別に、形を崩さず熱を奪うように僕の体を押し返すもの。
硬い何かで支えているかのように、強く抱きつかれているのに、弾力と棘のような堅さを押しつけてくる。
少女の背にある翼が目に入る。
コウモリのような、爪の生えた膜の翼だ。
それが薄く彼女の体が透けて見えるような服の切れ目から出ている。
いや、翼よりも彼女の背にびっしりと光沢を放つ何か。
てらりと光を返す硬質の、鱗、か?
「ねぇ」
彼女が僕の名を呼んだ。
小ぶりなお尻から、太い尾が生えている。
蛇の尾のように先細りで、鱗に覆われ、脊椎にそって棘のような突起が生えた尾が、彼女の嬉しいという感情を表現するように左右に波打って揺れている。
「ぼくの宝物になってよ」
僕を抱きしめるのをやめた彼女が、僕の目を覗き込むように顔を寄せてきた。
縦に割れた瞳孔から光が漏れているようだ。
緩く笑みの形に開いた口からは八重歯というには大げさな犬歯が覗いていた。
そういえば肩に置かれた手からは、載せられているだけなのに重さと、手の甲の巌のようなごつごつした鱗とは裏腹に柔らかさを伝える。
「好きになっちゃった。
だから、宝物になってよぉ……守ってあげるよ……」
目を閉じ、僕の唇に少しだけキスをした。
「なんでもしてあげる。
ドラゴンはそういう生き物だもの。
財宝を自分のものにしたくてたまらないんだぁ……」
彼女はそう言って、答えはもう決まっているよねと言わんばかりに僕の頬に自身の頬をすり寄せた。
どう、返事をすればいいのだろうか。
デミヒューマン娘のほうで何度もリクエストされてましたが、こちらで投稿。




