02スライム娘(高知能コミュニケーション型)2
風呂はいい。
特に少し熱めの風呂は、体中の筋肉が解れるような快感がある。
服を脱いで籠に入れておき、裸になった僕は入浴剤の小袋を取りだした。
湯船に入れると炭酸ガスをシュワシュワと出すアレだ。
ギザギザの切れ目を両手でつまみ、互い違いの方向に力を入れて小袋を破くと薄い青色のでっかい錠剤が出てくる。
僕は浴室のドアを開けて湯船に向け錠剤を投げ入れた。
湯船に溜まっている水の上に錠剤が乗った。
「ッ!?」
そして錠剤はゆっくりと水だと思っていた透明な何かに沈み込む。
「ひぁっ!」
僕のものじゃない悲鳴が聞こえた。
錠剤の周りには小さな泡が発生し、錠剤を覆う。
「にゃっ! なっ!」
水面が震える。浴槽に溜まっていた液体は粘性が高いのか、錠剤から発生した泡が浮かばない。
その場に留まるような泡が泡とくっつき、大きな泡になっていく。
「えっ、なにこれっ!」
錠剤から離れた浴槽の隅の方から液体が盛り上がる。
盛り上がっていく液体の中には見覚えのある謎の球体が複数。
液面から盛り上がった液体はやがて人の上半身の形になった。彼女だ。
「なにしてんの?」
「ひぁああぁぁあああ」
彼女は僕の質問に答えず、ビクビクと震えながら浴槽の縁に突っ伏した。
どうでもいいけど頭の後から透けて見える目の部分に配置した二つの球体が激しく明滅している。
「しゅ、しゅわっ!」
錠剤から発生した炭酸ガスで出来た泡が大きくなり、ついにボコリと液面から顔を出して破裂する。
錠剤の付近では第二第三の浮かんできそうな大泡が出来はじめていた。
「ひぁっ、やっ! あっ、あっ、あんっ!」
喘いでいるけど苦しいのか気持ちいいのか。
「なにっ、やだっ、なにこれ!!」
入浴剤だ。
「ひぅぅううううう!」
悲鳴だか喘ぎ声だかを発声する彼女。
発声器官を露出してきちんと音を出しているあたり余裕があるのかも知れない。
ところでお風呂に溜まっていたお湯はどこにいったのだろう。
それと彼女の体積って浴槽に溜まるほどあったっけ。
あ、吸ったのか。
水を。
「た、たすけぇてぇぇぇ」
どうすれば良いのだろう。
とりあえず僕は彼女の体だと思われる粘性の凄い液体の中に手を突っ込んだ。
あ、ぬっくい。
「ひっ!」
人の上半身に形態を変えた部分が弓なりに仰け反った。
瞼と思われる部分を見開き、ぷるぷると震えている。
「は、早く!」
彼女の要求に応えようと、僕は錠剤を掴み彼女から引き抜いた。
「あんっ」
取りだした錠剤はひとまず洗面器に入れる。
彼女は浴槽の縁に再び突っ伏し、背を上下させて荒い呼吸をしているアピール。
やっぱり色々余裕があるのかもしれない。
「で、何してるの?」
「そのっ、あなたを、……はっ、ん、驚かそうと」
呼吸整える必要ないでしょ、君。
「スライム風呂、しようとして、隠れてた、のにっ」
隠れてたというよりお湯に擬態していたようだ。
しかし何故スライム風呂をやろうと思ったのだろうか。
自分の体で。
その事を僕は聞いてみる。
すると彼女は僕に顔(に形を整えた部分)を向け、爛漫な笑顔を真似て僕に形作った二本の腕をにょんと伸ばし、僕の体をかき抱くように絡めた。
「体全部であなた全部を愛そうと想ったの」
あ、はい。
ありがとうございます。