14-4 代駆さん家のアオイちゃん
お腹に変な痛みを感じて目がさめた。
馬の方のお腹だ。
横になっていたからだとまだ回転の遅い頭で考える。
馬の部分は重いから、横になって寝ると肉が偏って内蔵がヘンになるのだ。
だから私達の寝床はクッションを積み重ねてその上に馬のお腹を載っけて座るタイプ。
「おきた?」
ああ、もう来てたんだ。
私は上体を起こし、手探りでシーツか毛布を探した。
私は黙ったまま馬の部分を毛布で隠す。
「アオイ?」
彼が私の名を呼んだ。
私を気遣う声。
胸が痛い。
私はクッションを拾って抱きかかえ、もう一枚毛布を拾い上げて頭から被る。
「なあアオイ」
「嫌」
彼が言う前に、私は拒絶した。
見せられる訳がない。
お腹の下にあるクッションの形が変わった。
馬の体に重みを感じる。
毛布越しだから重さしか分からないのがもどかしい。
多分、彼の背中。
私のベッドに座って、私に背を預けているのだ。
私は背を曲げ、人の体を丸めて小さくなる。
彼の視界に入りたくない。
けど、今更だから私はこうやって小さくなって少しでも彼の目に映らないようにする。
もう青いのを隠せているけど、それでも見られたくない。
「俺、アオイの色、好きだよ?」
知ってる。
昔も言ってくれたよね。
小さいころ。
あなたを背に乗せて、公園を走り回ったときに。
自慢の毛並みに綺麗な青色が私の誇り、だった。
けど、もう無理。
「だから嫌いになんかならないよ」
知ってる。
あなた、私のことが好きだもんね。
私も大好き。
一度、疑ってしまったの。
あのとき、放課後の教室で、私が私への陰口を聞いたとき。
『青いのが死体みたいで気持ち悪い』
って言っていたとき。
その時に疑っちゃったの。あなたも気持ち悪いって思った?
って。
ショックはそのまま誇りを反転させた。
私は私が、私の色が嫌いになったの。
ごめんね。
私は自分を見たくないし、大好きなあなたに見せたくない。
重みの形が変わる。
彼が私の背に腕を置いたのだろう。
多分、馬の体を抱えるように腕を載せ、私の背をもう片方の手で撫でているのだ。
毛布越しに優しい手つきが伝わる。
心地良いリズムで、後から前に撫でられている。
彼の背に接していた箇所がじんわりと温かくなってきた。
熱がようやく伝わってきたらしい。
「や、やさ、しい……ね」
私は喉を掠らせた。
随分、彼に声を掛けていなかったことを思い出す。
喉が痛い。
言い終わってから咳をした。
「アオイ?」
優しいから、きっと気付いているよね、クロエやアカネ、シロナの気持ち。
でも私だけを構ってくれる。
嬉しいな。
このまま体を曲げて、彼に抱きつきたい。
でも、病んでいればずっと彼は私に心を向けてくれている。
私が元気になって、好きって彼に言って、それから変わるのが怖い。
私の嫌いな色を世間様に見せるより、怖い怖いお外に出るより、私達が変わるのが怖い。
あなたが優しさをみんなに向けていたあの頃に戻るのは、もう嫌。
あなたは優しいから。私達姉妹はあなたを好きになる。
どうしようもなく好きにさせる。
シロナはあなたを勝ち取るために何でもするだろう。
アカネは姉妹で争うことを躊躇わない。
クロエは私達の諍いを利用してあなたに迫る。
ごめんね。
私、本当はもう平気なの。
あなたのお陰。
「アオイ、泣いているの?」
でも、私はあなたを独占したい。
姉妹であなたを奪い合いたくない。
だから、私は心を殺し、自ら病む。
青い子です。
代駆さん家の四人姉妹は要望があれば続くかも知れません
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