14-1 代駆さん家のシロナちゃん
弓をきりりと引き絞る。
既に狙いは目で付けていた。
放たれた矢は的に当たる。
ゆっくりと、弓を下ろして残心。
「何か悩み?」
私の表情を読み取ったのか、クラスメイトが声を掛けてきた。
この弓道部の副部長だ。
部長は私。
「わかる?」
「いつも通りの顔してるからね。
はやくその悩み、解消しなよ」
この悩みと私は長い付き合いだ。
だから、狙いも外さない。
なのに、顔には出てしまう。
私は射場を離れ、更衣室に入る。
着替えるのに場所を取るケンタウロスにも優しい設計の更衣室は築七年。
アオねーさんを勧誘するために作られたここは、アオねーさんが元気だった頃の栄光に塗れすぎている。
だからだろうか。
歯を食いしばりすぎたのか、歯ぎしりの音が漏れた。
「そんなに家に帰るのが苦痛?」
「そんなんじゃない」
家に帰りたくないわけじゃない。
「じゃあ何?」
あの人に会うのが辛い。
「何でも無いわ」
私は嘘を吐いた。
嘆いても相談しても、アオねーさんが変わるわけじゃない。
アオねーさんが元気なら、あの人を争って恋のから騒ぎでもなんでもできて、楽だったのに。
「……誰かに話した方が、楽になるかもねぇ」
「天使が懺悔のお誘い?」
彼女は天使だ。
弓が上手いのも上でよく練習したからだろう。
「主を信じてない女を誰が誘うのさ。
恋のお悩みはこの私キューピッドへって、常識でしょ?」
「だれがキューピッドよ下級天使」
彼女はふわりと浮かび私の裸の馬体に横乗りした。
小柄な体は軽いから良いけど、私の背を撫でる手が気分悪い。
気を使わせたみたいじゃない。
「ウチの教義を知らないな?
愛だよ愛。
愛は人を救う。
人を救わない愛は正しく導くべしってね」
初耳。
でも。
「相談は、しないわ」
「話した方が楽になるのに?」
「いいのよ。
ただのわがままな拘りだもの」
そう。
あの人を勝ち取っても、アオねーさんへの負い目から楽しくないに決まっている。
もっとライトに熱く燃える、そして楽しいほうがいいに決まってるじゃない。
「そうけ?
辛いのに?」
「辛くても、よ。
恋の勝負に勝つなら憂いのないように。
そうでしょ?」
「憂いながら、後悔しながらの愛もオツなもんよ?」
本当に天使なのだろうか、この子は。
新作「モン娘ハーレムライフ」もよろしくお願いします。




